陰時計

創作怪談や、好きな作品の感想を書いています。

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最近の記事

豊穣[怪談]

故郷に秋が訪れると、木々は紅葉に、畑には果実や野菜、田には稲が並びたち、村全体が色鮮やかに彩られる。 その期間、毎日お祭りがおこなわれる。 収穫祭と銘打って、屋台や出店が約三ヶ月間、一日も途絶えることなく賑わう。 いや、正確にいうと、 無理矢理騒ぐ、といったほうが正しい。 子供心に気味が悪かった。 お祭りが毎日あるのは楽しいし、物心がついた頃からそれが普通だったから、大人達に不気味だなんだと言うことはなかった。 でも、確かにあの時期。 村にいた人達みんな、何かに怯えていた

    • 2024年 創作怪談集

      X(旧Twitter)にて、応募企画に参加した創作怪談をまとめました。 #戯草140 「奇談戯草」様(@kidanntawamure)の企画 #戯草140 の参加作品です。 1 郊外にひっそりと佇む、とある廃墟。 そこに行って、「何もなかった」という人もいれば、「建物の中いっぱいに人が立っているのが見えたから、中に入らずに逃げた」という人もいる。 「何もなかった」という人はみんな、あの廃墟に入って何があったのかを、言いたくないだけなのだと思う。 2 フリーマーケットで

      • モンスターバンド、新次元へ

        9/26、さいたまスーパーアリーナ。 人生初めての、Mr.Childrenのライブ。 行ってきました。 まず一言。 化け物。怪物。尋常じゃないその気迫。 圧倒的表現者、桜井和寿さんのパフォーマンスを押し上げるドラマー鈴木さんと両脇を強固に支えるギター田原さんとベース中川さん。彩りを添えるサニーさんのピアノ。 衝動と躍動が巨大要塞のようにそびえて… …興奮のあまり一言では済みそうにない。 アルバム「miss you」を聴いた時、その完成度に驚きつつあまりにもバンド感のない

        • 行方不明展に行ってきました。

          「行方不明展」行きました。 開催発表時、賛否両論となっておりました。 僕の中で、はっきりとした線引きがいまだにできていませんが、やはり敬愛する作家さんの関わる展示会。この目で確かめなければと思い、なるべくゆっくり見ようと人の少ないだろう平日の昼間を狙ってみました。 いやはや大盛況のご様子で、人気ぶりがうかがえます。土日や夏休みに入るともっと凄いのか… 以下、ネタバレがございます。 お気をつけください。 どこか遠くを眺めるような 全体的に見て(一部は未体験ですが)、怖さや

          好きな実話怪談五選

          世はまさに大怪談師時代。 お笑い芸人さんからミュージシャンまで、様々な人が自らが体験、あるいは取材した「実話怪談」を語ったり、怪談が聴けるバーがあったり、毎年怪談師のグランプリが開催されたり… もはや人の数の何百倍も怪異が語られている今日このごろ。その無数の物語の中から、個人的に大好きな実話怪談を五話、タイトルと話者、簡単な感想を紹介していこうと思います。 もちろん、私自身まだまだ勉強不足。あらゆる怪談師に精通しているわけではありませんので、もしもおすすめのお話があれば、教え

          好きな実話怪談五選

          すべて怪異となりえる 実話怪談とファウンドフッテージの作法

          7/5(金)下北沢の本屋「B&B」にておこなわれた、ホラーの開拓者「吉田悠軌さん」と僕が敬愛してやまない奇談作家「梨さん」によるトークライブイベントに参加してきました。 三つのお題に対して、両氏がそれぞれの立場から、改変をせずに「作品」として昇華させるというのが主な内容。 お題は、「桃太郎」「取扱説明書(コピー機、プリンター)」「タマちゃん(アザラシ、懐かしい!)」 …怖がらせる要素なんてなさそうな面々。 これらの難題を、見事にホラー作品化させていました。 梨さんによる、

          すべて怪異となりえる 実話怪談とファウンドフッテージの作法

          ぼっち・ざ・ろっく!推し活日誌

          今年も残すところ半分となった今日このごろ。 いまだに将来の不安も夢も希望もなんだソレ?な状態ですが、そんな自分のもっぱらの楽しみは「ぼっち・ざ・ろっく!」をひたすら愛でること。 アニメ、原作漫画、舞台、音楽、二次創作、グッズ…とにかく触れればキリが無い深く広い裾野のほんの先っぽでちょこまかする、にわかに毛が生えたような雑魚オタクの推し活を写真とともに振りかえようと思いたった次第です。 ※展示会や映画のネタバレに触れています。 お気をつけください。 秋葉原「アトレ」コラボ

          ぼっち・ざ・ろっく!推し活日誌

          お社[怪談]

          ①空缶 仕事帰りの道すがら、むしゃくしゃしていたので、足下に落ちていた空缶を蹴飛ばした。 飛んでいった空缶は、端に置かれた膝くらいの高さがある小さなお社に入り込んだ。 お社の中から、バリバリグシャグシャと空缶を噛み潰す音がした。 とてもじゃないが、お社の中を見る勇気はなく、以来一度もその道を通っていない。 ②アパート 事故物件というわけではない。 ただ、そのアパートの前面道路でよく、遺体が見つかる。 みんな酔っ払いらしく、アパートの共用ゴミ捨て場の横に置かれたお社に頭を突っ

          お社[怪談]

          アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」が好きすぎる。

          2022年に漫画原作のもとに放送されたアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」 極度のコミュ症で陰気な女子高生「後藤ひとり」(通称ぼっち)が結束バンドに加入し、奮闘する物語。 やっと視聴環境が整ったので見てみれば、面白いし楽しいし尊いしエモエモだしで、2周目に突入する勢いなんです。 こうして感想を書いているこの時期、舞台再演続編発表が出たり、秋葉原にてポップアップストア、水族館やローソンとコラボ、春夏にはアニメ総集編劇場版公開と、お金が湯水の如く流れ出るファンに草でも食べてろと言わんば

          アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」が好きすぎる。

          遊園地吉喜珍[ショート・ショート集]

          ①「遊園地に行きたいっ!」 「叔父さん、遊園地に行きたいよぉ!」 お正月。実家に集まった我が一族。その中で生意気盛りの男子中学生が俺に駆け寄る。可愛い奴め。しょうがねぇ、連れてってやるべ。 とりあえず、行く前に弟夫婦に断りをいれなきゃな。 「おい、お前んとこのガキが遊園地に行きたがってるから連れて行ってやるよ」 「バカやろう!兄貴!俺んちのはまだ中学生だぞ!」 「わかってるよ。何を言って…」 「夜の店はまだ早いって言ってんだよ!」 おいおい、俺も流石に朝っぱらから大人の

          遊園地吉喜珍[ショート・ショート集]

          雪だるまに関する考察[怪談]

          久しぶりに雪の積もった朝。 公園の隅に雪だるまがこしらえてあった。 子供が作ったにしては、よくできてある。 親の手を借りたのだろう。 上下に積まれた白く美しい丸ふたつを見て、男は思う。 例えば。 あの雪だるまを崩したとして、中から何が出てきたら怖いだろうか。 まずは定番だが、遺体。 雪だるまの顔の辺りを削ぐと、中から人間の瞳孔がこちらを睨みつけるように現れたら、さぞ恐ろしいことだろう。 遺体を雪の中に隠すという行為に、利己的な計画性を感じる。 犬や猫などはどうか。 これは

          雪だるまに関する考察[怪談]

          雪男[怪談?]

          そびえたつS山の三角頭が白く染まっている。 やがて空気が冷たくなるにつれて、鮮やかな紅葉は白銀に覆われていく。 S山は季節折々で違った表情を魅せてくれる人気ハイキングスポットなのだが、冬になると一転、一度入ると出られない魔境と化す。いったい何人の登山者をその身の一部にしてきたのか。 その中のひとりに、私の彼女がいた。 彼女は山が好きだった。 何度も重ねたデートも、山登りがほとんどだ。 彼女がS山に登ってから、今日でまる二年。 私は、彼女を見つけなければならない。 桜が咲き

          雪男[怪談?]

          Mr.Children『miss you』を聴いて思ったこと。

          Mr.Childrenが2023年10月4日にアルバムをリリースした。 「Mr.Children」とは何かと問われて、答えられない人は少ないであろう、国民的ロックバンドの新作。しかも現時点でノンタイアップ。先行2曲以外未発表。 その新譜は、ファンの期待をもって迎えられた。 結果、SNSは賛否両論の雨あられ。 自己の評価のみを信じざるをえない、なにか挑発めいたモノを感じる今作。 これを書いている現時点で、バンド側のプロモーションが無いというのも、リスナーそれぞれに好きなように

          Mr.Children『miss you』を聴いて思ったこと。

          「これが最恐!!視聴注意の呪いにまみれた㊙︎心霊怪奇動画!〜自己責任でお願いします!〜」シリーズ全レビュー[怪談]

          知る人ぞ知る、心霊投稿映像シリーズ「これが最恐!!視聴注意の呪いにまみれた㊙︎心霊怪奇動画!〜自己責任でお願いします!〜」のDVDを全五巻揃えたのでレビューしていきます。 一巻ずつ見終える度に更新していきます。 第一巻「処の章」 記念すべき一巻目。読み方が「じょのしょう」 心霊映像好きの知人曰く、「今まで見た同じ系統の作品の中で、一番怖かったシリーズ」とオススメされて初めて知った。 パッケージは真っ黒な背景に白文字でタイトルが書いてあるのみ。後ろにも何も書いてない。 なん

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          「劇場版ほんとにあった!呪いのビデオ100」感想!

          池袋にて見てきました!トークイベント含めて面白かったので、感想と考察をまとめちゃいます。 ネタバレありなので、未視聴の方はご注意をお願いします! 時代をまたぐ投稿映像。 とある投稿映像に声をあてている際、「この映像を見たことがある」と言うナレーター中村監督。それは以前に別の投稿者から送られてきた、お蔵入りの映像と酷似したモノだった。 やがて、スタッフ達にじわじわと襲いかかる怪異の数々。全てはあの映像が原因なのか… …というのが簡単なあらすじ。 1999年と2022年前後

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          映像集[怪談]

          誰でも簡単に映像を記録し、なおかつ世界中に発信できる時代。 総数を数えると途方もないその中には、不気味な映像が山のようにございます。今回、私が入手したモノのうちから厳選してご紹介。 何か身に覚えのある方は教えてください。 ①「廃墟に行ってみたら人が住んでて焦ったw(ハプニング) とある動画投稿者がSNS上にアップした映像。 映像では、投稿者がひとりで一軒の廃屋を散策している様子が記録されている。中は非常に荒れ果てており、とても人が住める様子ではない。 廃屋内を探索する投稿

          映像集[怪談]