フリーロケーション的な発想って、とても興味深い
フリーロケーションとは、ご存知の方も多いと思うが、倉庫管理の手法である。従来は、品物を決まった場所に置いて管理する固定ロケーションが一般的だった。
しかし、バーコードが普及するようになると品物のIDと場所のIDを読み取ることで品物と保管場所を紐づけることができるようになった。
その結果、フリーロケーション、つまり適当な場所に品物を保管し、その品物の保管位置を管理する方法が活用されるようになってきた。
定期健康診断結果の管理
私が前職で安全衛生部門に在籍したことは他の記事でも書いた。安全衛生部門で非常に負荷がかかる業務が定期健康診断結果の管理だった。
事業者には社員の定期健康診断結果を一定期間保管しないといけないということが労働安全衛生法で定められている。衛生関連業務を担当している社員は、業務時間の多くをこの定期健康診断結果の管理に費やしていた。
従来の管理方法
従来の管理方法は以下のとおりである。ちなみに社員数は約800人である。
各自の(紙面)定期健康診断結果が健康保険組合が送られてくる。だいたい一度に100人から200人分が送られてくる。
(紙面)定期健康診断結果を産業医にみてもらい、再検査の要否を判断してもらう。その結果を紙面にポストイットでメモする。
産業医の判断結果を、社員ごとに一覧ファイルに手入力する。
(紙面)定期健康診断結果を五十音順にファイリングする。
この作業を800人分行う。回数にすると5、6サイクルである。
そしてある日、この業務に従事し続けてきた衛生関連担当者が異動になった。後任を命じられた社員は、最初は粛々と業務を行っていたが、ある日ギブアップしてしまった。
新たな管理方法 「紙を早く手放す」
そこでなんとかしてくれと頼まれた私が思いついたのが、フリーロケーションの考え方だった。そもそも、紙の資料を基本に考えているから業務量が莫大になる。
紙の資料をいかに早く手放すかで負荷は軽くなる。
具体的には紙の定期健康診断に「連番」を付与して、後の処理は全てこの連番を軸として行うのである。手順にすると以下のとおりだ。
各自の(紙の)定期健康診断結果が県保健組合から送られてくる。(800人分)
(紙の)定期健康診断結果の右隅に「連番」記入し、複合機でPDFにする。その後、ファイリングする。
PDFになった定期健康診断結果をOCRで読み取り、電子データ化(一覧表)する。
印刷した一覧表と紙の定期健康診断結果を産業医に渡して、再検査の要否を一覧表に追記してもらい、その結果を電子データに入力する。
これで終わりである。
社員の定期健康診断結果は「連番」で電子データ管理されているので、改めて五十音順に整理する必要はない。個人の資料を調べたい場合は、データを検索して連番さえわかればすぐに見つけられる。
おわかりの通り、紙の資料は2.の段階で手放している。あとは電子データの処理である。この方法を採用することで後任の衛生担当者は業務を引き継ぐことができた。
五十音順に資料を整理することが固定ロケーションに相当し、「連番」を付与してデータによって管理するのがフリーロケーションである。
まとめ
私はフリーロケーションの根本的な考え方は、「いかに早く<物>と手を切るか」だと思っている。そのためには<物>にIDを付与することから始まる。
この考え方に私がとても共感するのは、個々のIdentityが基本であると言う点である。倉庫で管理されている品物しかり、ファイリングされた紙の資料しかり、それらにIdentityが付与されている、独立している、という点だ。
個々に着目すれば物事はうまくいく。そんな気持ちになるのだ。