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蒼穹の見聞録-Lagra myth-6 hecto

突然上空の彼方に引っ張られる。

私の悲鳴も虚しく上昇は加速して
先生も空中庭園のラボも
ロケットより速く小さくなっていく。

先生「いかん、こうしてはおれん。遥華様に報告せねば」

緊急回線を繋ぐ。
出力調整と言った側で‥‥

エノク「止まって蒼穹!何考えてるの⁉︎」

上昇は止まらない。
輪廻がどんどん離れていく。
蒼穹が私を見る。

やっと止まったと思ったら
私の目の前まで詰め寄ってきた。

表情が読み取れない。

怖い。

 蒼穹「エノク、何故怯えるっすか?」
エノク「‥やめて」
 蒼穹「蒼穹に教えて?」
エノク「来ないで」
 蒼穹「魂を半分に引き裂いた奴は
    一体何者‥」

思考がぐしゃぐしゃになる。
自分も、痛みが、苦しみが

自分を繋ぎ止めていた目に見えない
回路がイカれていく。



‥‥文字が見えた。
見えたのは私が2歳の時。

それは増え
やがて一冊の本になる

貧しい家庭の中、学校も行けなかった私

16年の人生をかけて解読まで終えた私が

震え上がった
恐怖した。

内容は二つに分ける

「天魔の章」「神殺しの章」

万物を凌駕した創造と破壊の書物

名を「エノク書」と言う。

有限の時が迫る私に
締め付けられる胸の痛み。
その場で崩れ落ち‥
それでも渾身の力を振り絞って
自分が書いたエノク書を掴み上げて

暖炉に放り込み、火を放つ。

メラメラ燃えていく書物。
あともう一冊‥解読書を燃やせば終わる。
再びテーブルの上の解読書に手を伸ばす。

意識が朦朧とする‥


バアン!!

勢いよく開く扉から誰かが入って来た。
筋肉質の小太りの男。
私の叔父だ。

私より先に解読書を掴み上げると
朦朧とする私の髪を掴み上げ
離れの納屋に向かって引き摺り込み
扉を破壊する勢いでぶん投げた。
満身創痍の私に怒号をあげて
本性を表す。

叔父はもう人間では無い表情で叫ぶ。

 叔父「書物を暖炉に投げて燃やしただと!」
エノク「‥‥」
 叔父「俺はずっと待っていたんだ
    お前が解読するのをな」

知ってた

私は、騙されない。
匂いは嘘は付かない
叔父の姿をした何かは
私を追い詰め

詰め寄ると拳銃を取り出し
起き上がれない私を
しゃがみ込んで睨む

 叔父「それがこの解読書しかないだと⁉︎」
エノク「‥あなた、誰?」

口が裂ける程に頬が吊り上がり
叔父がゆっくり起き上がると

拳銃を自分のこめかみに当てた。

 叔父「ガッカリだエノク
    見せてやろう」

お前だけに、俺の違和感を見破った褒美だと
躊躇なく引き金を引く。

納屋に銃声が響き叔父は倒れた
表向きは。

そうじゃない。


文書で説明できないものもある。
私は常にそんな体験を繰り返して来た。
奴は笑う。

コイツは「悪鬼」と言う。
とびっきりに肥えた大食らいだ。

 悪鬼「よしよし、俺が見えてるなあ」
エノク「 」
 悪鬼「お前は俺のものだ」

眉間に鋭い爪を刺す。
血が滴る。
最後に悪鬼はこう言い放つ。

 悪鬼「本を燃やそうが関係ねえ
    何故ならお前の魂そのものが」

エノク書とは私の魂そのもの

悪鬼は天魔の章の私と
神殺しの章の私を引き裂いた。

どんなに体を指一本残らずに
納屋を真っ赤に染めても。

問題はそこじゃ無い。

私のベクトルはどこに向けたら良い?

 悪鬼「なあ」


私は壮大に嘔吐して
泣いていた‥

仮面の下でヘラヘラしてる
アンタには‥‥

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