映画 「ポネット」(吹替え版)

暗いフルハウス。

あらすじ

4歳の少女ポネットは、交通事故で母親を失ってしまい
その死を理解できず、受け入れられないままでいた。
父親が何度説明しても、幼いポネットには死が分からない。
母親が天国から帰ってくると信じて待ち続ける。

父親は仕事のため、ポネットは暫く伯母の家に預けられることになった。
母親を待ち、一緒に遊ぼうとしないポネットを変だとからかういとこ達。
伯母はキリストの話をし、母親が天国に行ってもう生き返らないことを説明するが、ポネットはその事実を未だ受け入れられずにいた。
仕事の合間を縫って会いに来た父親には、現実を見るように叱られる。
ポネットはすっかりふさぎ込んでしまっていた。

いとこ達と寄宿学校に行く事になったポネットだったが、
他の子どもたちと打ち解けることができずにいた。
そんな中、ポネットは「神の声を聴ける」子供アダに出会い、
神様に母親と会えるよう頼みこむ。
アダはポネットに「神様の子」になる為に勇気の照明をするテストをした。
テストをこなしていくポネットだが、神様の声は聞こえるようにならない。
いとこのデルフィーヌとマチアスは、ポネットを元気づけようとするが
うまくいかずに終わってしまう。

ある日、ポネットは学校の男の子に
「ママが死んだのは君が悪い子だからだ」
と言われてしまい、ショックを受けてしまう。
遂にポネットは、自分も天国に行って母親に会いたいと考えるようになってしまった。
父親やマチアスに励まされるポネットだが、母親に会いたいという気持ちは変わらない。

早朝に学校を抜け出すポネット。向かったのは母親の墓地だった。
母の墓石の前で、土を掘り起こすポネット。
掘り起こせるはずもなく、疲れ果てたポネットは泣いてしまった。
そんな中、聞き覚えのある声がポネットを呼ぶ。
そこに現れたのは亡くなった母親だった。
「泣いたり悲しんだりするのはもうおしまい。ママは笑うことを忘れた子は嫌いよ。」
ポネットを抱き上げ、優しく諭す母親。
母と再会することができたポネットは大喜びで甘えるのだった。

墓地を離れた二人。母親は自分の赤いセーターをポネットに着せて、こう言った。
「ママは死んじゃったから、あなたとはもう一緒にいられない。
でも私があなたを愛していることは忘れないでほしい。
一度しかない人生を楽しく生きなさい。」
母親はポネットに別れを告げ、消えていくのだった。
その後すぐに、父親が墓地の近くまでポネットを探しにやってきた。
ポネットは父親に母親と会ったことを話し、共に車で帰路につく。
車の中で父親と話すポネットには、笑顔が浮かんでいた。

レビュー

1996年のフランス映画。
幼い子供が母親の死という現実とどう向き合っていくかがテーマの作品。
俺は洋画を見るときは基本的に字幕版で視聴しますが、今回は吹替版です。

ポネット 川田妙子
お母さん 原田美枝子
お父さん 大塚芳忠
伯母さん 高山みなみ
いとこのデルフィーヌ 岡村明美
いとこのマチアス 矢島晶子
ユダヤ人の女の子アダ こおろぎさとみ
学校の友達カルラ 増田ゆき

名だたる豪華声優陣。その中でも
娘役の川田妙子さんと、父親役の大塚芳忠さんが目に留まる。
母親が亡くなった娘と父…
これ、ミシェルとダニーじゃねえか!
ころみフリークとしても気になったため、吹替版を視聴。

フルハウス

テーマがテーマなだけに、終始非常に暗い。
主人公のポネットの孤独感や、子供特有の純粋さから来る残酷さが遺憾なく描写されている。
ただ全体を通してドラマチックさや陰湿さは無く、物語が淡々と進んでいく印象を受けた。
あくまでも子供から見た、現実に起こりうる事をテーマにしている為、
リアリティの感じる作風となっている。

あらすじを読んだ時点で、周りの人達との触れ合いや経験を糧にして
母親の死を乗り越えていくんだろうなあと予測していたのだが
そのような描写はほぼ存在しない。
終盤までポネットは周りの子供達と上手く打ち解けられず、
中盤以降は同情的になったいとこ二人も、ポネットの精神的な支えになることはなかった。
手を焼いたり、いちゃつきあってるシーンはほほえましかったのだが。
死の概念を理解しきれていない子供達ならまだしも、
導くべき大人たちが揃いも揃って不甲斐ないのはモヤモヤした。
一番重要な時期に娘のそばにいてあげない父親は問題だろう…
序盤、「ママは不注意な運転のせいで命を落とした」と父親はこぼしており
奥さんが亡くなったことについて、登場する度にポネットにいら立っているような描写もあり夫婦仲があまり良くなかったようにも感じる…
この辺りは作中で詳しく説明されていないので憶測の域を出ないのだが
これから先二人は元気に暮らせるのだろうかと不安を感じてしまった。
またラストについてだが、母親の幻が出てきてようやく立ち直るって展開はいかがなものか。銀英伝のとあるシーンを思い出してしまった。

「ローエングラム公は死者にしか心をお開きにならないというの。それではあまりに寂しい。」

当人が生み出した幻想なのだから自己解決できたともとれるラストだけれど
生きている人間こそが解決してあげるべきテーマなのではないかと…
ポネットを支えてくれる人物がおらず、ただただ打ちのめされていくシーンを見続けるのは心が痛みました。
あとは設定的な問題だと思うのだけれど
物心つかない4歳の子供をテーマにするのはやっぱり話の幅が広げにくいんじゃないかなあと感じた。
詳しく書かなかったが、"死"に対するキリスト教について作中でいくつか触れられており、宗教的なことを伝えたかったのかとも思ったが
その観点で見てもイマイチ教訓めいた点は感じなかった。

しかし作中の子供たちが本当にかわいいし、演技が自然すぎる。
演技でやってるなら当然すごいし、自然に撮ってるのならもっとすごい。
ポネット役のヴィクトワール・ティヴィソルちゃんの迫真の演技は必見だ。
後は学校で恋バナするシーンとかあるけど、
フランスの子供達はおませさんなのか?早くても小学生でしそうな話をしている。給食での子供たちのやり取りは数少ない癒しシーンだ。

感動系やヒューマンドラマ系を期待していると肩透かしを食らう。
ただ、幼い子供の心情や仕草、子供の世界にはリアリティを感じる。
自分はあまりお勧めできませんが、"死"について考えさせられる作品だと思います。
ジェシーとジョーイもいなければDJとステファニーもいない、
フルハウスの別の世界線のお話です(
俺的ジャンル:ズーン…系

記事を見つけられなかったのですが、
この作品の子供たちのやり取りや会話の内容は
実際の子供たちの意見や言葉を参考にして作られたみたいです。
どこかでパッと目にしただけなので間違ってるかもしれません。
だとしたら説得力がありますね。

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