母のことを書こうと思う。このお彼岸にも墓参りにさえ行かなかった親不幸者だ。
そんな母親について、思い出というか、幼い頃、母親が言ったことを思い出す。

小学校に上がる前のことだ。近所に工事があった時、母は必ずと言っていい程、その人夫さん達にお茶とお菓子を出していた。まだ戦後と言われた頃、自販機等ない時代だ。

「お母さん、なんであのオジちゃんたちにお茶菓子やら出すと?」
決して裕福ではない家庭で育った私は4人兄弟の末っ子だ。おやつは必ず4人で分けなければいけない。腹いっぱい、おやつを食べた記憶がないほどだ。

すると、母はこう言った。「お父さんもどこかで他人から、こんな風にしてもらいよるかも知れんやん。せやから、私にできる事は、人にもせないかんのよ」
父は土建屋で、年中、あちこちの工事現場に立ち会っていたのだ。
母は父の工事現場など、見に行ったことすらないのだ。それでもそう空想して工事現場の人たちにお茶とお茶菓子を出すのだった。


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