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ボルヘスの「1944年8月23日に対する註解」

ボルヘスの「1944年8月23日に対する註解」
アルゼンチンの作家:ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899-1986)が1944年のパリ解放の知らせを聞いて書いた文章の終わりのほうをここにのせます。

「欧米人にとって、可能な秩序は一つであり、一つしかない。それはかつてローマと呼ばれ、今は西洋文化と呼ばれている。ナチであること(つまり、ヴァイキング、韃靼人、16世紀のコンキスタドール、ガウチョ、インディアンなど、猛烈な野蛮人をよそおって蛮人ごっこをすること)は、知的にも道徳的にも不可能なのだ。ナチズムとは、エリウゲナの地獄のように、非現実の存在だから、人はそのために死に、そのために嘘をつき、そのために殺し傷つけることはできても、そこに棲むことはできない。わたしは敢えてこう推測する、ヒトラーは敗北を望んでいる。・・・」*1

矢がつがえられたら、それは放たざるをえなくなって、このようになっている。わたしたちは今、人類が道連れにされないように、そっと身をすくめている。

*1「異端審問」ホルヘ・ルイス・ボルヘス 中村健二訳 晶文社1982年 p200

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