神戸の電車男?No.8

テレビ出演
 2005年7月30日、M放送の方が私の事故の話しを取材に来られた。
 視覚障害者の列車での事故なのだから、どこかのテレビ局が取材に来るかな?とは思っていたが、こんなに早く取材を受けるとは思っていなかった。
 障害者を取り上げた番組の中には、障害者は苦労をしている!だとか、かわいそうだ!とか、端的に言えばお涙ちょうだい風な手法の物もある。
だから、もしそんな風に私の事故を不幸満々な雰囲気にあおり立てるような取材ならお断りするつもりで、取材に応じた。
 しかし、私の心構えとは裏腹に、取材に来られたTさんは真摯に私の話を聞いてくれた。
 私は事故の時の状況を話し 「連結に転落したことは僕にも不注意がありましたが、列車を動かされたことに関してはK鉄さんにも今後の安全対策について考えて欲しい!」  と話した。
 私が話し終えると、Tさんは
「Gentaさんの言われたこと、その通りだと思うんです。もしよろしければ、明日改めて来させていただきますので、Gentaさんが今日されたお話を記録(撮影)させていただけませんか?」
 と言った。
(今日はカメラとかマイク持って来てへんのか?)
 カメラやマイクを、場合によっては突きつけるように向けて相手のコメントを記録するのが取材だと思っていた私の偏見がガラガラと壊れた。
 Tさんは誠実な方だ!と感じた私は翌日の取材をお受けすることに決めた。
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電車男たち
 ある意味、電車との事故でテレビの取材まで受けてしまった私も「電車男」と言えるだろう。
 そして、私を引きずった列車を運行させていたK鉄道の方々も「電車男」だ。
 2005年8月4日、私はK鉄のY駅の駅長と助役と初めて面会した。
私が自己に遭ったK駅はY駅の管轄だから、彼らが面会に来たのだろう。
 電車男VS電車男だ。
K鉄: 「おかげんいかがですか?痛みとかありますか?」
Genta: 「こればっかりは日日薬ですんでね~」  K鉄の方の自己紹介後に交わされたのはこんな会話だった。
「おかげんいかがですか?」
 とは、なかなか良いフレーズだ。
誠意を見せつつ決して謝罪では無い無難な言葉だ。
こんな場でK鉄道ほどの大企業の社員が
「Gentaさん、このたびはすみませんでした!」
 なんて言ってしまっては、会社にとって大ダメージなのだ。
謝罪をすれば損害賠償だとか諸々の問題が発生した時に企業にとって不利になるからだ。
こういう場合、非を認めるような発言をしてはならないのは大企業の鉄則なのだろう。
K: 「今はそないに痛みとか無いんですか~?」
G: 「じっとしてれば…」
K: 「事故に遭わはった時は痛かったですか~?」
 個人対個人で事故だとかトラブルがあったら 「すみません!」  と平謝りするとか 「謝られてすむ問題か!!」  と怒りをぶつけるとか……、そう言う風な転回にもってけるんだろうけど、K鉄の方は謝罪の言葉を封じられているし、私は大部屋で沢山の入院患者さんがおられるので過激な発言もできず……。
だからこそK鉄さんは、どう言葉を繋げば良いのか?間をもたせれば良いのか?分からず
「事故に遭わはった時は痛かったですか~?」
 なんて真抜けなことを私に聞いたのだろう。
私は
「痛いに決まっとるやろ!」
 と思いつつ大部屋で声を荒げるのもどうかな~?っと躊躇し、ユーモアで返すことにした。
G: 「俺もやんちゃな人間ですけど~、さすがに相手が電車やったんでね~…。勝てまへんでしたわ~」
K: 「骨折しはったんは左の足でしたか?」
 私は半ばあきれた気持ちになった。
自分の会社が100%悪いわけでは無いにせよ、けがをした利用客を見舞うのに、どんなけがをしているのか?と言うことすら把握せずにいるのだから…。
G: 「あまりご存知じゃないようですね~」
K: 「いえいえ!…」
G: 「右足と背骨ですわ~。」
 万事がこんな風だから、彼らとの面談はつかみ所の無い雰囲気だった。
 2005年8月4日、2005年8月12日、2005年8月24日、2005年9月9日、2005年9月26日、計5回の彼らとの面談の中で、私が彼らに言い続け、要求したことは
1. 今後の安全対策についてK鉄道としてどんな考えを持っておられるのか、明確にして欲しい。
2. 私も体が快復するとは言え、職場を長期間休まなければならなくなったこと・受講中の通信制大学の単位取得を断念しなければならなくなったこと・地元で開催される震災10周年記念イベントの運営に参加できなくなったこと…等等、失った物も多いので、何らかの誠意を表していただきたい。
 という2点のことだった。
 彼らからは
「その件につきましては、会社の方に伝えておきますが、とにかくGentaさんが元気になっていただけるのが我々の願いです」
 というような言葉が返された。
私が元気になれば私の要求する件について回答をくれるのか?安全対策に着手してくれるのか?疑問の残るところである。
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