自分の力を発揮しやすいシチュエーションを知る
前回のnoteで書いたように、11月22日の試合で、ハノーファーは最下位のチーム・ビュルツブルクに敗れた。そこからはチームにも、10番を背負う僕にも、大きなプレッシャーがかけられていた。僕のスタメン落ちの危機も報道されていたから、そのニュースを日本で目にした人もいるかもしれない。
そこから次の試合の前までに、コチャク監督とは計3回にわたって話をした。
監督からは指摘されたのは、試合途中にトップ下から左サイドにポジションを移すように指示が出たあとも、サイドに張るのではなく、中央寄りにポジションを取っていたことだ。それが監督の意図と違っていたようで、監督はサイドラインぎりぎりまで張ったポジションを取ってほしかったという。だから、僕が監督の指示に反しているかのようにも見えたようだった。
そもそも、試合中の戦術変更なので、細かいやり取りができないという状況があった。
さらに、個人的には中央寄りにポジションをとった理由は、その方がチームを助けられると判断したからだった。あの試合ではなかなかボールが回らず、左サイドのタッチライン際まで開いていても、なかなかボールが回ってくる気配がなかった。
だから、僕はチームを助けるための判断だったことを伝えつつ、監督には指示にしたがっていないように受け取られるようなポジションをとったことをわびた。
このnoteの読者のみなさんならわかると思うけど、僕はいつでもチームを助けたいと考えているし、今シーズンは特にそういう意識が強い。だから、自分勝手な判断をしたようなつもりもない。ただ、少なからず、誤解されるような判断だったようだ。
結果的に、その次の試合に向けた練習で、僕は基本的にはずっとサブ組の一員としてプレーすることになった。コチャク監督が就任してからはケガや出場停止の関係ない全ての試合で先発してきたし、ほとんどの試合でフル出場を続けてきた。
「これは初めてのスタメン落ちもあるのかもしれないな」と思いつつも、毎日の練習には精力的に取り組んだ。
そんななか、29日のキール戦を迎えた。スタメン発表のタイミングは試合によって異なるのだが、この日はスタジアムで明かされることになっていた。
スタジアムにつくと、僕は監督室に呼ばれた。そして、以下のようなことを聞かれた。
「元気、試合に出る準備はできているのか?」
「チームのために全力をつくせるのか?」
僕はもちろん「100%、準備はできています」と伝えた。
この試合でチームとしては敗れてしまったものの、個人的にはそれまでの数試合よりも良いフィーリングでプレーできていた感覚があった。
そして、翌週。今季は上位に安定してつけているハンブルクとの試合でも僕は先発した。試合前から不利が伝えられていたアウェーゲームだったが、僕らはどうにか勝利をおさめた。(室屋)成の突破をとめようとした相手が前半のうちに退場になったのも大きかった。
この一連の時間のなかで、僕は改めて感じたことがある。
それは、プレッシャーがかかったり、信頼を感じられなかったり、苦しい状況に置かれているようなときにこそ、僕はパワーを発揮できるタイプだということだ。
監督から叱られたり、きちんとチームのために働いていることを認めてもらえないときに、反骨芯のようなものが自分のパワーとなってくれるのだ。僕は監督と個人的に食事にいくようなことは避けてきたし、監督の仕事へのリスペクトがあるからこそ、良い意味で距離感を保つようにしてきた。
例えば、ハリルホジッチ監督が日本代表を指揮しているときに、僕はレギュラーに定着して、W杯最終予選でも4試合連続ゴールを記録した。でも、あのときも監督から信頼を感じられるような言葉をかけられていたわけではない。ハリルさんは厳しい方だったから、「良いプレーができなければお前のポジションはないぞ」というような形で発破(はっぱ)をかけられていた。
ただ、そうした指導方針に対するポジティブな反骨芯をパワーに変えて、戦っていた。
なお、僕とは逆に、監督やチームメイトからの信頼を感じているときにこそ、力を発揮できるような選手もいる。
例えば、僕のキャリアを振り返ってみると、ブラジル選手などはその傾向が強い。彼らは周囲から信頼感や愛を感じているときのほうが良いプレーをするのだなと実感したことは一度や二度ではない。
彼らと接していると、家族との距離も近いし、家族間の愛情表現もかなり強い。それが当たり前の環境で育ってきたからこそ、監督などからの信頼を欲する傾向が強いのかなとは感じていた。
ここで僕が言いたいのは、どちらのタイプが正解ではないということだ。
大事なのは、自分がどういう状況でこそ力を発揮しやすいのかを知ることなのだ。それを知ることが、試合で良いパフォーマンスを出すための近道となる。
僕はコチャク監督の下でそれなりのパフォーマンスを発揮してきたから信頼してもらえた部分はある。ただ、それに甘んじでいてはダメだ。
そのなかで力を出せるように自分を追い込むことも必要だし、先に挙げたブラジル人のように強く信頼されている状況でも力を出せるようなモチベーション作りにも取り組んでいきたいと思っている。
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