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「目標」の先をイメージして行動する意義

試合内容が素晴らしかったわけではなかったが、ホームでの開幕戦で、僕らは2-0で勝利をつかんだ。僕は後半のアディショナルタイムに交代でベンチに下がったが、チーム2点目をアシストして、最低限の活躍は見せられた。

そんなホーム開幕戦のあと、日曜日と月曜日の2日間にわたってオフが与えられた。普段の日曜日であれば、土曜日の試合で長くプレーした選手は疲労や筋肉などの張りをとるためのメニューに取り組み、それ以外の選手は普通の練習を行なうことが多い。このときは珍しく連休だった。

ただ、連休になったからといって、僕は、通常の試合の翌日にやるべきことをやめることはない。

開幕戦翌日も練習場に行き、ケアをうけ、コアや上半身のトレーニングをしにいった。オフで人のいないジムで身体を動かしていると、33歳のフランツがやってきた。今季から加入したベテランで、ブンデスリーガ1部での経験も豊富だ。

ドイツ人は家族での時間も大切にするから、フランツも家を出る前に、奥さんから「なんで休みの日なのに練習に行くの?」と聞かれた。それでもジムに来た理由を彼はこう話していた。

「2日間も休んでしまったら、この年齢になると身体が思うように動かなくなる。だから、オレは休まずに身体を動かす」

彼の練習に取り組む姿勢はもちろんのこと、練習前後の準備や身体のケア、そして鍛え抜かれた体つきを見ても、真のプロフェッショナルであることはよくわかる。
それでいて練習が終われば、ふざけ合うのが好きな、明るいキャラクターだ。
僕よりも年上の33歳だから、リスペクトをこめて、ドイツ語で「おじいちゃん」を意味する「オパ」というニックネームで彼のことを呼んでいる。

最近はそんな「オパ」ともよく話をする。あの日、彼が驚いていたのは、僕ら2人だけしかクラブハウスにいなかったことだ。前日の試合に出場した選手はともかく、試合に出られない若手選手が来ていないことにビックリして、こう語っていた。

「オレが若いころは試合に出られなかった日の夜はとにかく悔しくて、次の日は誰よりも早くクラブハウスに来て、練習をしていたよ」

まさに、僕も若いころは同じような感じだった。基本的に試合に出さしてもらっていたが、僕にはそんなことなど関係なかった。
試合に出ようが出なかろうと、オフの日はボールを蹴ったりトレーニングをしていた。

うまくなりたい、成長したい。
有り余っていたパワーを、チームの練習が休みになるタイミングでも発散させていた。あのころは、まだ学生で時間のあった中高のチームメイトなどに声をかけ、自分が納得するまでボールを蹴っていた。その積み重ねが選手としての成長をうながしてくれたのだろうし、そうやって野心をもって行動していくことが自然にできていた。

だから、フランツの話を聞きながら、僕はこう感じていた。

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