2021年の『いとしのエレノア』

ナードマグネットの「そうふくしゅうツアー 〜Crazy, Stupid, Love編〜」が先日無事に最終日を迎えました。お越しくださった皆さま本当にありがとうございました。
色々あってSubway Daydreamが出演できたのは京都と横浜の2公演となったわけですが、どちらの日もサプライズで我々の『いとしのエレノア』をカバーしてくれまして、大変すばらしかったですね。京都のときは不意打ちすぎて歌い出しの瞬間から涙出そうでした。
ちょうど僕らも最近スタジオでめちゃくちゃ久しぶりに合わせたところだったので、この曲にまつわる色んなことを思い返していました。今日はちょっとそのことについて書いてみます。

エリオット・ペイジというカナダの俳優がいます。彼は2020年の末にトランスジェンダーであることを公表し、それまでの名前から「エリオット」へと改名しました。
僕は彼が改名するずっと前からのファンで(2007年くらいからかな)、たぶん昔のインタビューとかでも言ってると思うのですが、『いとしのエレノア』という曲はそんな彼が過去に主演したとある映画に感動した勢いで書いたものです。僕自身はヘテロセクシュアルであり、この曲を書いた当時は彼のことを「女性」として認識していたので、これはつまり「海の向こうの憧れの人への想いを綴った歌」なんですね。海の向こうの君には一生会えないんだろうな、ということでWeezerの"Across the Sea"を引用しているわけです。ガチ恋ソングですね。キモいですね(キモいとか言うな!そんなん言うたらバンプの『アルエ』なんて綾波レイに向けたラブソングやぞ!藤原基央さんあらためてご結婚おめでとうございます!)。

なので歌詞を書いてるとき、サビの「エレノ〜エレノ〜エレノ〜」ってところには、なんとか彼の当時の名前をそのままあてようとしてたんですけど、どうにも語呂が悪いのでちょっとだけ変えて「エレノア」になったんです。そこがうまくハマらなかったことがなんか中途半端だな〜とちょっとだけ心残りだったんですけど、彼が改名をしたニュースが出たときにTwitterで「デッドネーミング」や「ミスジェンダリング」という言葉を初めて知って、「そうか、逆にこれでよかったんだ!」と思えたんです。それぞれの言葉についてはググってほしいのですが、要は、新たな人生を歩み始めた彼に対して過去の名前や性別を持ち出して語るということは、その決意を踏みにじる行為になりうる、ってことなんですよね。文字どおり、彼の過去の名前はもう死んだ(デッドネーム)わけです。
なのでこうやって曲ができた経緯をいまさら書くこと自体も本当はあまりよくないことなのではないかとも思っているのですが…まあ今後はこの話はしないぞ、という区切りの意味も込めて。ともかく、エリオットの過去の作品から生まれた「エレノア」という女の子は、長い年月を経て完全にファンタジーになりました。昔の名前をそのまま歌詞にしてたら、きっと今後歌うたびに罪悪感を覚えることになったんじゃないかと思います。当時の僕が感動したその気持ちは本物だとはいえ、です。まじ昔の自分グッジョブという感じです。おかげで後輩バンドの名カバーにも素直に感激できるし、自分自身でも引き続き歌っていけそうです。キモいガチ恋ソングとしてではなく、素敵な架空の女の子を生み出した最高の俳優をめいっぱい讃える歌として。

僕は今でもエリオットのファンです。今後の彼の俳優としての活躍を心から楽しみにしています。そういえばアンブレラ・アカデミーのシーズン3は撮影が終わったらしいですね!ヴァーニャがそろそろ幸せになりますように!

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↑これはクラウスTシャツ。ライブ直後で汗びしょびしょ(photo by うつのみや)

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