絡めとる天叢雲は夕暮れ時を超へようと。

さざめく街並みを超え、奇妙なそれは足立へと向かった。
色とりどりの花は踊り、風向きは明後日の方向へと叫ぶ。
「声を上げてごらん」
狂った様にそう言うと、心臓は大きく跳ねた。

「くぐもった声は天照へと向けて」

鴉が告げ、廓を飛び回る。
ペットボトルは穴へと落ちた。
皆、居なくなった。
ただ一人、カムパネルラだけはその場に立ち尽くし、爪を噛んでいた。
「君は何を?」
輪廻の底から響く烙印は、まるで雨音の様にねっとりと泳ぎ回る。

軍隊は進軍し、そぞろ歩く兵は鎌鼬の如く矢継ぎ早に皆一様にして慌てながらおしりかじりむし。
朱鷺の歌声は明日を呼び寄せる、泣き腫らした朝は凍える様に瞬く。
色褪せたポテトチップスの足は一様に止まった。
見ず知らずの明烏は幽明界を異にした。
天網恢恢疎にして漏らさず。
では悪人は……?

「この文章に意味はあるのか?」

「無いよ、本当さ。ただ、或狂人が己が狂人であることを思い出すために、脳幹に詰まった言葉達を吐き出したモノさ」

「狂人にしては、やけに達者な語彙力だな」

「私に言わせれば、俗世を我が物顔で当たり前のように生きる人間こそ、真の狂人さ」

「では、己は狂人でありながらも、また真に眼を開けた人間であると?」

「然り」

「さすれば、他者は悟りに至っておらず、己がのみが悟りに至っているという傲慢さ持ち合わせながらも、己は悟っていると言うのか?」

「いかにも。他者は悟りの境地には至ってはいない。私は真に悟りに至っている」

「己はその傲慢さに対して、いかような理論で悟りを表すのか」



この文章を以つて。

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