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 孤独な点、繋がる

 家族との外食を済ませ、直帰するのに寂しさを感じた。
「そうだ。この夏やりたい事をノートに書こう。良いノートを入手しよう。」
感覚と勘を働かせ、LOFTまで自転車を走らせた。夏の夜風が気持ち良い。風を切るたび清々しい気持ちになる。夜空は雲が多い。日中の暑さで地上の水分は蒸発し雲になる。水分を含んだ雲が風を運んでくれている。水っぽい。湿り気のある空気。夜風を浴び「この夏は何をしようか。」と胸が高鳴る。「誕生日だし。」と胸の高鳴りが自転車のスピードと共に速まる。一生懸命に漕いだ。走り出した。どんどん先へ。先へ行けた。どこへでも行ける気がした。
そうして、足と勘を働かせていると、知らぬ間に知っている道と、道が繋がった。

「この道は、この道に繋がるんだ。」

さらなる高鳴りをおぼえた。そして、既視感。知ってる。この感覚。


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 自分は、仕事でどうにもならなくなった事がある。正確には、どうにかする術も工夫も分からなかった。知らなかった。故に自信なんてものこれっぽっちも無い。もはや何が嫌かもわからない。
終わらせてしまいたくなった。「もういいや。」と思った。親の顔が思い浮かんだ。スマホを手に取り電話ボタンを押せた。繋がった。私は安堵した。そして、
『今は分からなくていい。後から、自分の知らない自分が見えてくるかも。』『今はゆっくり寝ること。』と親が私を包み込んで戻してくれた。

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 自転車を漕ぎ進め、長い信号待ちに引っかかった。道と道が繋がった喜びと親がくれた言葉を抱き締めようとした。皆が横断歩道を渡る。私は渡らず立ち止まる。そして、また、赤になる。側から見たら「渡らないの?」という状況。それでも自分は渡らず立ち止まることを選んだ。

  愚かな自分も、どこかで何かが繋がるんだ。


腑に落ちるように自転車から降りた。歩いた。自転車を押して、横断歩道を一歩ずつ。

ゆっくり。
今、確かに渡りきった。







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