ちょ、あばら折れるって!

わたしはいつの間にか、あなたの隣にいた
察するにわたしとあなたは大人だ
誰とも付き合わないと決めたのに
あなたとは付き合えるらしい

新型が出てもボロが目立ってもまだ可愛がるんだ
中古に出してもクリーニング代取られるだろうし
そう言ってあなたは運転席で苦笑する
その隣でわたしもまた愛想笑いをする

できれば、ずっとその時間が続いて欲しいと
小さく痛む胸にそっと祈る
ふざけた声で出発だとあなたが笑った
夜の新大阪駅は綺麗だった

コンビニに寄ろうと言い出したのはどちらだったか
手を繋ぐような年齢でもないのに
お菓子好きなの買ってええよって言われて
悲しくなったわたしはカゴにビールを入れる

深夜の御堂筋は少し怖い
切り取られた世界にあなたといることが
いやでも夢の中だと思い知らされて
信号に照らされるその顔をずっと見ていた

あなたの部屋は物で溢れていて
そのどれもが宝物だった
ソファとベッドが別なだけで
たったそれだけで大人だと思った

先にシャワーを浴びてちゃんと髪の毛を乾かした
ベランダにいるあなたに声をかける
もう眠気の限界だったわたしたちは
ベッドの上で睡魔の囁きにすんなりと従った

正面から抱き合ってあなたの薄い胸に顔を埋める
少し上を向くと眠たそうな顔が見える
ただそれだけで何だか嬉しくて2人で笑った
セックスなんかしなくてもわたしたちは恋人だ

足を絡めてくるのは、いつもあなた
そのまま頭をポンポンされる
これはもう寝ようね、のサイン
ここでも子供扱いされてちょっとうんざり

このまま眠ったら、わたしはいつものベッドの上だ
そう、これはただの夢
分かっていてもあまりにも幸せすぎて
普段よりも数段低い声のあなたを力一杯抱きしめた


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