あなたは1人じゃない。フラワーデモに初めて参加した大学生が考えたこと


参加者として、あの夜を振り返る
   

1月11日夜、東京駅前。

普段は通行人がちらほら行き交うだけの駅前広場に、世代や性別を超えて人々が集まった。

凍てつくような寒空の下、数百人が、フラワーデモに参加するために集合したのである。


7時ちょうど。

何人もの参加者が一人一人群衆の前に出てきて、自らの苦しい体験や今まで蓋をしてきた思いを伝え始めた。

震える手でマイクを持ち、涙を流しながら絞り出すように私たちに語りかける人もいれば、
群衆を見渡しながら、ゆっくりと力強く話す人もいる。

微動だにせず静かにスピーチに耳を傾ける人もいれば、
涙を流し鼻をすすりながら語られる言葉を噛み砕く人もいた。

多くの通行人が、デモを前に足を止めた。
数時間経った後には、初めより遥かに大勢の人たちが群衆に混ざっていた。

そして、東京駅前のフラワーデモは、予定だった2時間を大幅に超え、静かに幕を閉じた。


フラワーデモはどのようにして行われるのか

フラワーデモは、2018年3月に立て続けに下された性犯罪の無罪判決に対して声を上げる形で、同年4月11日夜に東京駅行幸通りで始まった。

その後フラワーデモの波は急速に日本中に広がり、1月11日に開催されたフラワーデモには全国33都道府県で数千人以上が参加したと推測されている。


本デモでは、主に性被害を受けた人々に ”With you” (私はあなたと共にいます)の姿勢を示すため、参加者は各自花を持ち寄る。

フラワーデモが通常のデモと大きく異なる点は、街を練り歩き主張を叫ぶシュプレヒコールを行うのではなく、

集まった人たちがその場所で自らの声を共有し、耳を傾ける
点である。

開催形式という面では、デモというより集会に近いと言えるかもしれない。

フラワーデモ  1

(出典:東京新聞 勇気ある声が、次の声を呼ぶ 性暴力被害「フラワーデモ」のうねり 〈寄稿〉北原みのりさん 2019年8月8日)


勿論、花を持っていくことも、話すことも全くもって強制ではない。
会社帰りにたまたま周辺を歩いていた時、声が聞こえてきて興味を持ったから少し参加してみた、という人も多かったのではないか、と思う。

フラワーデモの参加者属性は、様々だと感じた

確かに女性の参加者は半数を大幅に上回っていたが、開催側含め男性の姿も見かけた。年齢層は20代から60代、と言ったところだろうか。


私が参加する前に特に気になっていたのは、フラワーデモにおける報道の存在である。
私がフラワーデモを知ったのが複数のニュースを読んだことがきっかけだったこともあり、撮影されたくない人が一定数いるであろう本デモが、どのように報道機関を受け入れているのか気になっていた。

実際現場では、撮影されたくない人たちは ”No Photo Area" と呼ばれる、いかなる方面からの撮影も禁止されている場所に行き、

万が一撮影されてもいいという人は "No Photo Area" の外側へ誘導された。

"No Photo Area" であることを明示するために、そう書かれてあるプラカードが常に高く掲げられていることに加え、その方向にカメラを向けることを禁じるアナウンスが何度もあり、参加者への配慮が徹底されていると感じた。


“With you”の大きな波が社会を変えていく。フラワーデモの意義とは。

デモの話をすると、「そんなものに参加したところで何の意味があるの?」と尋ねる人はいる。

確かに、社会的に影響力がなさそうな一市民たちが集まって何かを叫んだところで、政治家や資本家の耳には入らないように思えるかもしれない。

でも、私はそうは思わない。
フラワーデモに参加すること、そして本デモの存在自体に大きな意義があると思う。

理由としては、フラワーデモは、性暴力を受けた人々や、それを支える人たちがあたたかなコミュニティを形成する場を作るプラットフォームを作っているからである。
残念なことに、性被害を受けた人へのカウンセリングの機会や、彼ら彼女らが自らの性暴力の被害を共有するのは、今でもなかなか難しい。
そのような社会において、フラワーデモは参加者が思いを伝え合うプラットフォームになっている。そして、そのような思いを支える人々の存在がフラワーデモを通して可視化され繋がり、より多くの人がその波に加わることができるのだ。

また、フラワーデモは、今まであまりすくい上げられることのなかった性暴力の被害者たちの声を社会に反映し、変革を起こすことに大きな役割を担っている
一例としては、何人もの政治家がフラワーデモへ参加したり、国会でも性暴力やフラワーデモについて議員が触れたことが挙げられるだろう。フラワーデモは、当事者の声を拾い上げることで、社会を変えていくのである。


次の開催は、約1週間後の2月11日
前回と同じく、全国各地での開催を予定している。

場所によって開催時間は異なるが、東京駅前でのフラワーデモは19時~21時まで行われる予定なので、仕事終わりに立ち寄ることも可能だ。

フラワーデモは、開催1周年をめどに、3月で一旦終了してしまう。

残すところあと2回。
性暴力の実態を知らない人も、もっと理解したいという人も、
私は1人でも多くの人にフラワーデモでもに参加してほしいと切実に願う。

フラワーデモホームーページ:https://www.flowerdemo.org/
スケジュール情報 (随時アップデート): https://www.flowerdemo.org/schedule
フラワーデモ公式ツイッター:https://twitter.com/_flowerdemo 

(文責: 佐藤翠)