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第2回内科専門医/第158回(循環器)/2022

第 2 回内科専門医試験
2022年度予想

52歳の女性。気が遠くなるようなめまいを主訴に来院した。1年前に鼻翼に丘疹が出現した。今朝から気が遠くなるようなめまいが出現したため受診した。体温36.7℃。脈拍40/分、整。血圧132/72mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。
血液所見:赤血球414万、Hb 12.6g/dL、白血球5,400、血小板27万。
血液生化学所見:総蛋白7.4g/dL、アルブミン4.3g/dL、AST 21U/L、ALT 22U/L、LD 261U/L(基準120〜245)、CK 78U/L(基準30〜140)、クレアチニン0.5mg/dL。CRP 0.1mg/dL。胸部エックス線写真で異常を認めない。心電図検査画像を別に示す。この疾患について誤っているものはどれか。1つ選べ。
a. 診断に 18F-FDG PET が有用である。
b. ガドリニウム造影 MRI における心筋の遅延造影所見が有用である。 
c. リードレスペースメーカー植え込みが有効である。
d. 多核巨細胞の細胞質内に存在する asteroid body が診断に役立つ。
e. 活動を抑制するためステロイドが広く使用されている。


< ここから解答・解説になります >


解答

c
心サルコイドーシス

解説

心電図では、T波の終わりにP波があり、それに引き続くQRS波形が脱落している。2:1伝導の高度房室ブロックである。気の遠くなるようなめまいはこれによるものであろう。鼻翼に丘疹を認めていることからも、サルコイドーシスの診断。

a. 正しい。18F- FDG PET における心筋への異常集積は、心臓サルコイドーシスの炎症の活動性を反映する重要な所見である。
b. 正しい。ガドリニウム造影 MRI における心筋遅延造影所見は、心サルコイドーシスの組織障害や線維化の指標として重要である。
c. 誤り。本症例ではすでに高度房室ブロックをきたしており、今後致死的心室性不整脈(VT、VF)の出現も想定しなければならない。除細動機能のないリードレスペースメーカーは、心サルコイドーシスには適応とならない。
d. 正しい。心臓サルコイドーシスの典型的な組織学的特徴として、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫に多核巨細胞が存在することが挙げられる。肉芽腫は類上皮細胞、多核巨細胞、マクロファージ、リンパ球、形質細胞などから構成されるが、心筋生検で典型的な肉芽腫が採取される確率は約20%ともいわれ、決して高確率とはいえない。多核巨細胞の細胞質内には星形を示す封入体である asteroid body や Schaumann body を認めることがあり、これらの封入体はサルコ イドーシスの診断に有用なことがある。
e. 正しい。

サルコイドーシスの疫学

サルコイドーシスは全身の諸臓器に乾酪壊死を伴 わない類上皮細胞肉芽腫を認める原因不明の疾患であり、その臨床経過はいずれの臓器病変においても自然軽快、増悪が伴いさまざまである。一般に、サルコイドーシスは女性に多く、好発年齢は40歳以下の成人で 20歳代にピークがあるといわれているが、最近のわが国からの報告では、高齢発症が増加し、女性は二相性から中高年層へ男性は若年者の一相性から二相性へ と変化している。本疾患の発症には人種差や地域差があるといわれ、一般に北に多く、南に少ないとされる。わが国の推定有病率は人口10万人あたり7.5~9.3 人で、罹患率は年間人口10万人あたり 1 人前後である。2015年に指定難病の 1 つであるサルコイドーシスの診断基準が刷新され、サルコイドーシスの診断は組織診断群と臨床診断群に分けた診断基準に則って診断される。

参考

https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/26-1.pdf

心内膜心筋生検により心臓限局性サルコイドーシスの診断に 至った 2 例

今回の症例とは無関係だが、「リードレスペースメーカー」

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