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「インディラップ・アーカイヴ」内容のご紹介 (第2章:最盛期)

先週公開しました第1章:序章の告知記事に引き続き、11月27日(金)発売の拙著『インディラップ・アーカイヴ もうひとつのヒップホップ史:1991-2020』に関する簡単な内容のご紹介をさせていただきます。今回は次章となる「第2章:最盛期」について。こちらは1997年〜2004年に発表されたアルバム作品を取り上げた章になっておりまして、本書における中核となる章です。

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上記は発売元であるDU Booksさんの公式ページに掲載されているサンプル紙面なのですが、本稿のテーマである「第2章:最盛期」の最終年となる04年のリヴューになっています。こちらに掲載のアーティストの顔ぶれをご覧いただければ明らかかと存じますが、この04年はインディレーベルから数多の良質な作品が登場した年でした。MF Doomは相変わらず堅調で、『Madvillain』や『MM.. Food』といったキャリアを代表するアルバムを発表しましたし、NYアンダーグラウンドを牽引したLandspeed Recordsの作風やアーティストを継承したBabygrandeからは、Jedi Mind TricksやJean Graeなどが象徴的な作品を発表しています。Rawkusから独立したEastern Conferenceも紙面掲載のLeak BrosやHigh & Mightyのアルバム、Akinyeleの未発表音源集などを発表していて、まだまだ勢いがありましたね。つまり、この時代は前回ご紹介した91年〜96年とは打って変わり、いわゆるインディラップ像を象徴するアーティストがインディクラシックを連発した「インディラップの最盛期」といえる期間だったわけです。この辺りは当時熱心にインディラップを追っていた方はよくご存知だと思いますが、日本でもこの時代はインディラップが非常に盛り上がっていました。

このインディラップ最盛期の少し前となる90年代中期、特に93年ぐらいから96年ぐらいまでは、俗にいうアンダーグラウンドヒップホップの中心は12インチレコードでしたね。東京では渋谷宇田川町周辺にお店を構えていたCisco RecordsやManhattan Recordsを中心とする輸入盤のリテイルがブームを牽引し、貴重なシングル盤を買い求めて人々が長蛇の列を作った、当時ここでしか買えない12インチやプロモ盤が半年後には数万円で取引されるようになったなんて、今では考えられない現象が起こったことを憶えている方も多いと思います。これはまさに、先日残念ながら夭逝されたManhattan Recordsの伝説的バイヤーIta-choさんのような方が作り出したレコードショップを中心とするアンダーグラウンドヒップホップブームともいうべきで、この12インチシングル時代についてもいつか何らかの形でまとめたい(あるいは当時をよく知る方に取材したい)と思っているのですが、実は本当の意味でインディラップがグローバルとなるのは、この少し後のインターネット時代以降(97年が節目)となります。このインターネット時代については、拙著の中で荏開津さんと少しお話ししていますので、そちらをお読みいただきたいと思うのですが、オンラインで利用できる資料でいうと、こちらのRed Bull Music Academyの記事がおすすめです。当時SandboxやOHHLA.comの影響は計り知れないものがありまして、その辺りを私も僭越ながら少し紙面上で述懐しております。

この97年というのは、私が尊敬してやまないボストンのヒップホップ歴史家Dart Adamsも定義しているように、Bad Boyの躍進に象徴されるきらびやかなJiggyの時代の始まりであり、Company-Flow『Funcrusher Plus』に代表されるインディラップの象徴的なアルバムが続けて発表された記念の年です。また、インターネットが一般に普及し始めた年でもあり、このことが既存のメディア(ラジオや雑誌)を中心とするメインストリームラップと、インターネットや地域コミュニティを中心とするインディラップの市場を一層乖離させた要因にもなってゆきます。なお、Dart AdamsはこのJiggy Era/Indie Rap Eraを97-02年と定めていますが、拙著ではMF Doom躍進となった03-04年を含めた方がわかりやすいと思ったので、97-04年の範囲を「インディラップ最盛期」と定めています。また、この時代のインディラップ像を日本語で紹介している記事でいうと、Put Them on the Mapというかつて存在したネットサイトの管理人Fuma75さんの対談企画が今もオンラインで利用できますので、こちらも当時を振り返る意味で大いに参考になるかと思います(昨日久々にリンクが生きているのを発見して読み返しましたが、今読んでも興味深いことが書いてあります。Fumaさん今どこで何をされているのでしょうね)。

さてさて、そんなこんなで、個人的にも非常に思い入れの深い拙書の1997-2004「第2章:最盛期」、この時代はコアなファンが多いですし、名もなきアーティストたちが人知れずCD-Rで制作していたアルバム作品などが乱発された時期でもありますので、本書ではあまりその手のDiscogsにも載っていないような作品ではなく、いわゆるインディクラシックのような作品の掲載を中心にしています。当時をよく知る方はぜひ思い出に浸りながら、当時をあまりよく知らない方は本書を参考に、この世界規模でインディラップが人々を虜にした時代を振り返ってみていただきたいと思っています。何ともニッチな内容ですが、ぜひ騙されたと思って手にとってみてくださいね。

『インディラップ・アーカイヴ』に関する詳細、試し読みについては下記を参照ください。

DU Books公式ページ(先行特典ミックスCD付、なくなり次第終了)

Amazon.jp 

Rakuten Books

その他全国の書店、小売店などで展開を予定。

あと、最後にひとつ関連情報を。本書出版を記念して、11月29日(日)17:00からヒップホップライター/DJの荏開津広さんと対談します。インディラップとは別の側面から最新のラップ事情についてみつめる機会となります。荏開津さんファンはぜひ。詳細は下記よりご確認ください。


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