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生成AIの2023年振り返り2024年トレンド予測(前編)

本記事は、Stability AIのJerry Chi氏、ANOBAKAの長野氏との対談ウェビナーの書き起こし記事です。

 


小田紘生(以下、敬称略で小田): 皆様、お昼時のお忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。今から「生成AIの2023年振り返り 2024年トレンド予測」のウェビナーを開催できればと思っております。およそ1時間程度のウェビナーですが、最後までお付き合いいただけますと幸いです。よろしくお願いします。

また、本日はゲストにStability AI Japan 日本代表のJerry Chiさんと、株式会社ANOBAKA ファンドアドバイザーのシバタナオキさん、株式会社ANOBAKA 代表取締役の長野をお迎えしてお送りできればと思っております。皆様どうぞよろしくお願いします。

シバタナオキ(以下、敬称略でシバタ): よろしくお願いします。

Jerry Chi氏(以下、敬称略でJerry): よろしくお願いします。

 長野泰和氏(以下、敬称略で長野): よろしくお願いします。

オープニング 

小田: それでは、今日のラインナップはこのようなかたちで進められればと思っております。最初に2023年の生成AIニュース振り返りをざっくりさせていただきまして、続いて、登壇者の方の自己紹介、それから、一番長い時間を取らせていただいているパネルディスカッション/Q&A、最後に終わりにというかたちで締められればと思っております。
では、冒頭ですが、有識者の方のお話を聞いていく前に、ざっと2023年の生成AIの業界にどのようなニュースがあったのかという部分の振り返りが皆様と一緒にできればと思っていますので、冒頭このパートから進めさせてください。

小田: まず初めに、本ウェビナーを主催させていただいているANOBAKAについてのご紹介となります。ANOBAKAは、「チャレンジを至高の概念とする。」というミッションを掲げている、シードステージのインターネット企業を対象してベンチャーキャピタルファンドを運営している企業になっています。だいたい起業家さんがつくられるプロダクトができた直後ぐらいのタイミングで資金を投じさせていただいて、プロダクトが広く使われるようになっていくというところに対してアドバンスをさせていただくパートナーの立ち位置を取らせていただいている企業になります。

小田: ANOBAKAがなぜこの生成AIに関連するウェビナーをやらせていただいているのかというところですが、実は昨年の4月26日に、国内ではかなり早いタイミングで、Generative AIネイティブなスタートアップに特化した創業支援をさせていただかくファンドを設立しておりまして、われわれとしてGenerative AIの領域にすごく大きな可能性を感じているというところと、そういった領域で起業される方に対して積極的に投資をしていきたい、つまり、そのアピアランスを高めていきたいという目的でこのようなウェビナーも開催させていただいているといった具合になっております。

小田: 申し遅れましたが、私は本日のモデレーターを務めていただくANOBAKA アソシエイトの小田と申します。簡単に略歴ですが、神戸大学を出てから新卒でリクルートでタウンワークの営業企画を数年担当しました。その後、HRテックのSaaSのシリーズBのスタートアップのRefcomeに転職をしてCSのマネジャーとビジネスの執行役員を担当しました。そして今、ANOBAKAでは新規投資先の開拓や既存投資先のご支援をさせていただいているという人間です。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 

2023年の生成AIニュース振り返り

小田: では、本題になりますが、2023年の生成AIはどのようなことがあったのかというニュースの振り返りをざっと一緒にさせていただければと思います。上半期と下半期に分けてつくらせていただいていますして、図の見方としては、上がOpenAIとMicrosoft連合のニュースのトレンド、下がその他のビッグテックを中心としたモデルレイヤーの企業のニュースのトレンドというかたちでまとめさせていただいています。AI関連のニュースを追っていくときには、基本的にモデルレイヤーのプレイヤーがどのような動きを取ったかというニュースを追っていけば概観がつかみやすいかなと思っていまして、その軸でまとめさせていただいているものだというところで、簡単に振り返りをしていきましょう。

まず象徴的だったのが、2022年11月にOpenAIがChatGPTをリリースしたというところから、この生成AIブームが始まっているかなと思っています。その動きを受けて、2022年12月にはGoogleが自社の検索エンジンのビジネスが脅かされかねないというところでコードレッドを宣言されました。これは2022年の年末に起きたかなり象徴的な出来事だったかなと思っています。そこから1月にMicrosoftがOpenAIに100億ドルの出資を表明し、2月にChatGPTのアクティブユーザーが史上最速のペースで月間1億AUを達成するという、コンシューマ向けのアプリケーションの中で最も早い成長を実現するアプリになりましたし、3月にはGPT-4や、ほかのサービスがChatGPTの中で活用できるというプラグインの機能をリリースするなどの動きが矢継ぎ早にOpenAIから出てきたというのが2023年上半期の、さらに1Qの動きだったのかなという認識です。

そこに対してほかのビッグテックもOpenAIの動きに追随するようなかたちになっているのかなという認識をしています。2月にはMetaがオープンソースでLLaMAというモデルをリリースし、GoogleがChatツールであるBardをリリースしました。また、OpenAIを抜けて、公明正大なAIというところを掲げて設立されたAnthropicという会社がClaudeというモデルをリリースするという動きが3月にありました。4月にはAmazonがアプリケーションの開発基盤であるBedrockというサービスを提供し、今日のゲストでご登壇いただいていますStability AIさんが、もともと2022年から画像領域ですごく存在感を放っていらっしゃった会社さんでしたが、4月にStable LMという言語モデルをリリースするという出来事がありました。

こうしたOpenAIがつくってきたトレンドに対してほかのビッグテックが乗っていくという流れの中で、6月7月頃にはEUの中でAIアクト法という、AIを規制する法案が欧州議会で採択されるという出来事ありました。ハリウッドで著作権についてのストライキが起きたり、その少し前にはイーロン・マスクさんがAIの開発は一旦やめましょうという呼びかけをしたりと、かなり早い動きで進んでいた上半期の動きに対して、規制の部分や、もう少し安全性の部分を考慮しましょうという声も根強くなってきていたというのが、かなりカオスだった2023年の上半期を象徴する動きだったのかなと思っていて、こんな出来事がありましたよねという振り返りになっています。

小田: 続いて、下半期です。下半期の動きも軽くまとめさせていただいています。まず、上のOpenAI/Microsoftの部分では、6月頃にOpenAIがDALL・E3という画像生成のモデルの発表をしました。Copilotの話はもう少し前から出ていましたが、MicrosoftさんがアプリケーションレイヤーでGPT-4をシームレスに使えますよというCopilotの機能を発表される出来事がありました。そして、記憶に新しい11月にOpenAIはDevDayをして、GPTsという個人がChatGPTをカスタマイズして作成できる機能をローンチし、GPT Storeという、その作成したChatbotを個人が販売できるという、コンシューマ向けのプラットフォームのほうにしみ出してきたということでかなりDevDayの象徴的な出来事だったかなと思っていますが、このようなことがありました。そして、その直後にサム・アルトマンさんの解任→復帰のお家騒動もありましたよね。こういうところがOpenAIの動きだったかなと思います。

ほかのモデルレイヤーの動きで言いますと、7月頃にMetaがLLaMA2を発表し、AnthropicがClaude2を発表しました。9月10月頃のタイミングでは、GoogleやAmazonがAnthropicに出資をするということで、明確に立ち位置を新たにしてきたという出来事がありました。12月、本当に最近ですが、Googleがマルチモーダル、いわゆる画像や音声のモデルセットも含まれたマルチモーダルAIであるGeminiを発表し、Stability AIさんがそれまでオープンソースで提供していたところの有料化に踏み切るというメンバーシップのプランを発表しました。これらが下半期の動きの総括になります。

小田: 今はモデルセットの動きのご案内を軽くさせていただきましたが、アプリケーションレイヤーのスタートアップの動きはどうなのかという話について軽くUSと日本を比較するようなかたちでまとめさせていただいているのがこちらの図になります。

まず、USのほうですが、いわゆるスタートアップの勃興を示すにあたって、Y Combinatorの夏バッチと冬バッチのスタートアップの採択の状況を軽くまとめています。去年、夏バッチと冬バッチ合計で490社のスタートアップがプログラムに採択をされている中で、うち43.6%の214社が生成AI系のスタートアップだったというところが大きな象徴かなと思っています。かなり割合としては多くて、USでは新しく起業するなら生成AIだよねというトレンドが結構強くなってきているというのが如実に表れている数字なのかなという認識をしています。

一方で日本の話ですが、日本にY CombinatorはないのでANOBAKAで対比をさせていただいています。ANOBAKAはかなり生成AI領域でのソーシングに力を入れています。個々人のキャピタリストが生成AI領域で起業された起業家さんに対するアプローチを強めており、こういったイベントも積極的にさせていただくことで認知を広げる動きを取っているので、かなり生成AIのスタートアップのソーシングというところに力を入れている企業ではあります。一方で生成AI、ANOBAKAがソーシングをさせていただいたスタートアップの中で、生成AI系のスタートアップの割合は約20%弱というところが数字としてありました。かなり一生懸命探してこの数字というところで、USとはやはりまだスタートアップの出て来方というところのペースという部分において日本は少しビハインドしているかなという認識で、これからだんだんUSに追いついていくようなトレンドになっていくのではないかと個人的には思っているところです。ざっとここまで、モデルレイヤーのお話とアプリケーションレイヤーのスタートアップの数の比較で去年のトレンドについてまとめさせていただきました。

登壇者自己紹介/事業紹介 

小田: ざっと2023年の概観が理解できたところで、パネルディスカッションに進んでいきたいなと思っているのですが、その前に登壇者様の自己紹介をお三方それぞれお願いできればと思っています。まず、Stability AIのJerryさん、よろしくお願いいたします。

Jerry: ありがとうございます。Stability AIのJerry Chiと申します。去年の1月に日本支社を立ち上げて、今は10数人の体制になっております。研究開発とビジネス側の両方をしています。過去には外資系も日本の会社もスタートアップも大企業でも、いろいろデータ分析や機械学習の仕事をしてきました。自分で起業したこともあります。生成AIに非常にはまっております。よろしくお願いします。
 
小田: ありがとうございます。Jerryさんを初めてお見かけになられた参加者の方もおそらく多いと思うのですが、今日お話が聞けるのは皆さんすごく楽しみな部分かなと思います。よろしくお願いいたします。
 
Jerry: よろしくお願いします。
 
小田: では続いて、シバタさん、よろしくお願いします。

シバタ: 皆さん、はじめましての方も多いかもしれません。シバタナオキと言います。普段、私はアメリカのシリコンバレーにいまして、もともと自分で会社をしていましたが、事業を1つ売って、1つ清算して、去年の途中から無職と言いますか、フリーターのような生活をしています。日本の方には「決算が読めるようになるノート」や、もしかしたらここにあるような本を見ていただいた方もいらっしゃるかもしれません。

シバタ: 生成AIは結構私も注目しているのですが、「なぜあなたが生成AIを語る資格があるのですか」と言われることがたまにあります。一応、私はスタンフォード大学で研究員をしていましたが、コンピュータ・サイエンス系のところにいました。また、先ほど申し上げました通り、「決算が読めるようになるノート」を書いていますので、ビジネス系の話と技術系の話が両方分かります。

シバタ: また、去年からエンジェル投資をかなりおこなっています。去年は4月から始めて9カ月間でトータル16社ぐらいに投資をしました。去年投資したばかりの会社なので、まだ1社もEXITもしていませんし、1社もなくなっていないのですが、そこそこ良いVCが入れているディールが回ってくるようになったかなという感じです。ということで、今日は楽しみにしていますので、よろしくお願いします。
 
小田: ありがとうございます。USの知見もたっぷりお伺いできればと思っています。ありがとうございます。では、最後に長野さん、よろしくお願いします。

長野: はじめましての方も多いかもしれませんが、ANOBAKAの長野と申します。なんだかんだでこのANOBAKAという会社をつくって7年ぐらいで、160社ぐらい投資してきているわけなのですが、僕も「なぜあなたが生成AIを語るのですか」ということに関して説明しますと、正直、1年前にChatGPT-3.5のバージョンが出てきたときにすごく興奮しました。その興奮というのは、僕はもともとiモードからキャリアをスタートしているのですが、iモードでいろいろなビジネスが爆発的にカンブリア的にたくさん出てきたような時期を体験して、そのあと大きなビジネスのムーブメントとしてはソーシャルゲームブームが起こりました。日本で言いますと、MobageやGREEといったプラットフォーム上にたくさんのSAPが誕生して上場したり、スマートフォンというプラットフォームの上でたくさんのビジネスが誕生したり、そんな経験をしました。

そういう中で、今回の生成AIもそういったカンブリア的にたくさんのアプリケーションのレイヤーのスタートアップが出てくるのではないかなという予感がして、とてもわくわくしました。ですから、4月に生成AIの特化ファンドをつくって、日本の市場を一気につくっていきたいなということで活動しているというところになります。本日はよろしくお願いします。
 
小田: 皆様、ありがとうございました。こんな素晴らしいお三方でいろいろパネルディスカッションやQ&Aの議論をできればと思っています。よろしくお願いいたします。


パネルディスカッション

小田: 続いて、メインパートであるパネルディスカッションのほうに入っていければと思っております。このような質問を事前にご用意させていただいているということで、ざっくり2023年の振り返りと2024年の話ができればと思っている次第です。
では、ここから皆様は適宜Q&Aのほうにも質問を書いていっていただければと思いますが、まずはご用意させていただいた質問で進めようかなと思っています。では最初に、2023年で最も象徴的だった生成AIに関連する出来事というところで皆様のご所感をお伺いできればと思っています。まず、Jerryさん、いかがですか?
 
Jerry: そうですね、去年は本当に盛りだくさんの1年間で、まずは技術の進化ペースですね。まだ気付いていない方もいらっしゃるかもしれないのですが、例えば画像生成のスピードです。例えば去年の最初は1秒あたり0.1枚の画像、要は1枚の画像を生成するために5秒~10秒かかっていたのですが、今は1秒あたり100枚ぐらい生成できます。同じぐらいの品質で、1台のGPUで。ですから、1,000倍ぐらい1年間で改善した感じで、本当にすさまじいです。
LLMのほうも、弊社は去年の4月ぐらいからLLMの訓練を始めましたが、当時はほとんど誰もしていなくて「ほかの人も参入するかな?」と思っていたら、あっという間に数十社ぐらいがLLMを日本でつくっているという感じになって、取り組みたい会社が本当に多いなという印象でしたね。

もう1つは、一般社会への生成AIの浸透です。使ってもいいかどうかを躊躇する会社も多いのですが、例えば、アサヒビールとホンダとマーケティングのプロジェクトを一緒に進めて、大々的にStable Diffusionを使っていますとプロモーションしていただけましたので、公に生成AIを使っていますという事例が増え始めました。1年前は本当にそうしていいかどうか分からないというケースも多かったので、もちろんいろいろリスクもありますけれども、いろいろ啓蒙活動もしながら、どういうモデルを使えばどういうリスクがあるかという理解が結構進んできている印象でした。
 
小田: ありがとうございます。やはり技術の進化の速さの話と、それが比較的速いペースで社会に実装されているところが印象的だった出来事というところでお伺いできたかなと思います。この辺りについて、シバタさんや長野さんは象徴的だった出来事という観点でいかがでしょうか?
 
長野: 生成AIは、特にアメリカ、ヨーロッパもそうですけれども、結構、著作権的な批判にさらされ続けているという中で、アダプションが日本は結構緩く、大企業が導入するスピードは意外に速いなという印象ですが、この辺についてJerryさんたちはどう見ていますか?
 
Jerry: やはりまだアメリカも日本も懸念を持っている会社が多いです。例えば本当は導入したいのですがそれを外部に言えない、あるいは言ったらどう思われるか不安、また、どういうリスクがどれぐらいあるかというのを把握しづらい、説明しづらい、いろいろな懸念があります。著作権もその中の一部です。実際、例えば日本では第30条の4という著作物を訓練に使ってもいいというような法律がありますが、アメリカにはそれがなくて、今は公正利用で訓練に使ってもいいのではないかという主張も多くあるのですが、やはりそういう法的な話の結論が出るまでに結構時間がかかるのではないかと思います。日本でも著作物やクリエイターたちを守ることも大事だと政府の皆さんも認識していますし、弊社も侵害しないよう、法律を守りながら進めていきます
 
長野: なるほど。ありがとうございます。
 
小田: ありがとうございます。法的なトレンドのところも解説いただいた中で、例えばシバタさんは2023年で象徴的だったなと思われていらっしゃる流れや出来事というのは、USで投資活動もされている中でどのような感じで思われていらっしゃるのですか?
 
シバタ: おそらく1つだけ選べと言われると、あまり面白くない話かもしれませんが、やはりGPT-4で生成AIに触るユーザーの数がすごく増えたと思います。ユーザー数を増やしたという1点において、ChatGPT、特にGPT-4が出たときがやはり衝撃だったかなという印象が個人的にはありますね。どうしてもこういうものは最先端のテッキーなユーザーだけが使うということになりがちなのですが、やはりそこはサム・アルトマンはすごいなと言いますか、先ほども前半のところで小田さんから紹介していただきましたが、あれだけ短期間の間に1億人を会員登録させるというのは普通に考えたらなかなか起こることではないので、それがあのようなかたちできちんと出て社会的な認知を得られたというのはすごく私としては衝撃的でした。
 
小田: まさにそうですよね。もちろんAIの技術というのは、例えばWeb3のような感じでポンと出てきたというよりは、歴史の中でかなり改善が繰り返されている中で、あのChatGPTを皮切りに火付け役になったという歴史の理解をしています。このタイミングでこれだけ盛り上がりが爆発したという、そこの部分の背景や技術的な進歩、「ここがすごかったからこれだけ2023年に爆発したのだ」という話について、例えば長野さんやシバタさんはどのように見ていらっしゃるのか、ぜひお伺いしたいなと思いますが、この辺りについてはどうですか?
 
長野: 結局、生成AIの革命というのはある意味UXの革命にも近いかなと思っています。やはり自然言語でWebサービスを使いこなすという体験が今までのGUIの世界とはまったく違うものになったというところは、やはり3.5のバージョンからかなりスムーズに、精度で言いますと4のバージョンで一気にレベルが上がったと思いますが、3.5のバージョンのときにみんなそれに驚いて一気に瞬速で1億ユーザーということになったのかなという気はします。
 
小田: そうですね。間違いなくそこはあると思います。
 
シバタ: 僕は、これはOpenAIがFor Profitになって、Khoslaが投資したのが2019年なのです。シリコンバレーのトップのVCの人たちは、もう2019年頃からこういうものが来ると言っていたのです。だから、お金を投資したのです。どうもKhosla市場最大のチェックサイズだったらしいのですが。それは置いておいて。ですから、やはりサービスや技術もそうですが、やはりこれだけ広まったというところは、この2023年一番大きなブレイクだったのではないかなと思いますね。もちろんチップの進化やデータの量、トレーニングデータがきちんと整備されているなどいろいろな要素があるとは思いますが、これだけ爆発したというのは、先ほど長野さんがおっしゃっていたようにUXによる部分も結構大きいのではないかなという点では私もまったく同意ですね。
 
小田: ありがとうございます。2023年のその辺りの盛り上がりの背景についてもお伺いできたかなと思っています。どうでしょうか、皆さん、もちろん聞いてみたいことがあれば、ぜひQ&Aにお願いできればと思います。でも、過去の話ももちろんある程度認識されている中で、今年どうなっていくのかといったこと、モデルレイヤーもそうですが、アプリケーションレイヤーは米国と日本でそれぞれどうなっているのか、現状どうなっていて、それがどうなっていくのかというお話を本論として聞きたいのかなと思っていますが、どうでしょう、モデルの話からいきましょうか。最初に長野さんから、ANOBAKAも2023年にかなり日本で生成AIの投資をしてきた中で、現在地点、日本のスタートップの生成AI領域の盛り上がりをどう見ていて、2024年はどうなっていくだろうかといった論点について、どんなことを思われていらっしゃるかお伺いしてもいいですか?
 
長野: そうですね、今、テーマとしてある1つ目と2つ目に若干2つとも被る話かなと思いますが、去年1年間取り組んできてすごく思ったことがありまして、それは分かりにくさです。生成AIという市場の概観をつかむ分かりづらさがあるかなと思っています。よくほかのVCと話すと、「正直、生成AIはよく分からない。これはそんな特化ファンドをつくるまでする必要があるのですか」とものすごく言われたわけです。やはり生成AIというのは分かりづらいです。スマートフォンや、Mobage、GREEのプラットフォームなど、そういうのに比べてかなり分かりづらい構造にあるかなと思っています。その分かりづらさの理由は、プラットフォーマーがビジネスもがんがんディベロップしていくような、そういう構造にあるという、プラットフォーマーが両刀なのです。それがかなり分かりづらい構造になるかなと思っています。今まではプラットフォーマーはプラットフォーマーに徹していましたから、その上でどうエコシステムをつくっていくかというような、そういう分かりやすい世界観でしたが、生成AIについてはそうではないというところがあるかなと思います。

僕も去年を思い返すと、1月頃は何をしていたかと言いますと、12月の3.5のバージョンを受けて、1月にMicrosoftのわりとOpenAIに近しいテックエバンジェリストの人とできるだけ情報交換して、OpenAIがどういうAPIを用意しようとしているかというのをヒアリングや取材する活動をずっとしていました。結局、去年の1月は各LLMがどういうエコシステムをつくっていこうとしているかというのがこの市場において一番重要だったわけですね。それがまったく何も分からなかったです。ですから、ファンドをつくるべきかどうかも分からなかったというところでした。それがある程度エコシステムできそうだなという確信を得たから4月にファンドをつくったわけですが。

でも、そうこうするうちに、去年末の象徴的なイベントはやはりOpenAIのDevDayだったと思いますが、DevDayで中途半端なアプリケーションはがんがん駆逐しますよという感じのリリースだったわけです。ですから、スタートアップやアプリケーションレイヤーの方々からすると、プラットフォームは敵でもあり味方でもあるというすごく複雑な関係というのが分かりづらい構造なのかなと思っています。この辺の整理のところ、プラットフォーマーとして、今日はJerryさんがプラットフォーマーとしているわけですが、プラットフォーマーとしてエコシステムをどうつくっていくと考えるかというところが今年以降はすごく重要だよなと考えている感じです。
 
小田: その辺り、実際にプラットフォームをつくっている側のJerryさんの見方はどのような感じですか?
 
Jerry: そうですね。我々は、オープンなモデル、クローズドモデルではなくて、オープンなモデルを使ったほうがいいですよとアピールしています。もちろん全員が使うべきというわけではないですが、でも、多くの人や会社が使うべきだと思っていています。自分でモデルを所有して、例えばブラックボックスのAPIの場合はいきなりモデルがデプリケイトされてなくなる、あるいはいきなり性能や使い方が変わるなどして、結局、自分が依存していたものがいきなり変わって自分のビジネスがダメージを受けることも考えられます。

昔から、これは別にOpenAIや生成AIに限った話ではありませんが、例えばGoogle検索のアルゴリズムの微調整でいろいろな会社がいきなりつぶれるという話もよくありましたよね。ですから、プラットフォーマーに振り回されるリスクがあるので、自分がコントロールできる、例えば自分が好きなモデルを選んで好きに調整したり改造したりして、自分が好きな例えばサーバー環境が使えるようなものを選ぶメリットはあると思います。

そう言う観点で我々はモデルメンバーシップと言う仕組みで、いろいろな会社がよく使うようなさまざまな生成AIモデルを提供しています。そこから選んでそれを自社のサーバーにダウンロードすれば、そのバージョンを使い続けることができます。ですから、そういうクローズドモデル以外の選択肢を提供することはプラットフォーマーとして大事だと思います。
 
小田: ありがとうございます。まさにStability AIのJerryさんならではのご意見だったと思います。

実際その辺りのアプリケーションレイヤーのスタートアップが使っているモデルというのは、日本とアメリカではそれぞれ今どのように変化しているのか、アプリケーションレイヤーのプレイヤーとして、どういうところが出てきていて、どういうところがちょっと危ないよといった、その辺りのご所感もぜひお伺いしていきたいなと思います。シバタさんはアメリカのスタートアップの事情にかなりお詳しいと思いますが、どういうモデルレイヤーが使っているという話や、どういうアプリケーションレイヤーのスタートアップが増えてきているという話など、概観をざっと教えていただいてもよろしいですか?

 

生成AIビジネスのカテゴリーへ分類すると....

シバタ: そうですね。冒頭、私は去年1年間暇だったという話をしたと思いますが、いろいろ日本企業の方から相談を受ける中で「生成AIはどうなっているかよく分からない」ということがありました。先ほどの長野さんのお話はまさにそうで、VCの方だけでなくて事業会社の方からもよくお話を聞きます。毎回ミーティングで同じ話をしているので、同じ話をするのはやめようと思って「生成AI事例集」というのをつくり始めました。

シバタ: これは私の分類なのですが、生成AIのサービスを一応3つの大きなバケツに分けています。1つ目は汎用型と言われるもので、Stability AIさんはおそらくここのカテゴリーに入るのではないかと思います。2つ目は業界特化型で、3つ目がいわゆるインフラ・ツール系です。

シバタ: 汎用型というのはどういうものがあるかと言いますと、左側がいわゆる画像・映像系です。この黄色の1つ1つがカテゴリーです。真ん中に文書があって、音があって、右側にソースコードとUIがある、だいたいこのようなイメージです。

シバタ: そして、それ以外にもプライバシーやセキュリティなど、いろいろなカテゴリーがあります。

シバタ: この2つ目の大きなバケツで業界特化型というのがありまして、ゲーム、それから医療・ヘルスケアはもちろんあります。小売もあれば、教育もあれば、法律もあれば、金融もあれば、自動車など、もともとあるいろいろな業界の中にそれぞれAIが入り込んでいくという話があります。

シバタ: 3つ目がインフラ・ツールということで、ここは本当にいわゆるバックエンドです。モデルなど結構ゴリゴリのエンジニアの人たちの世界です。

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以上がウェビナーの前半部分です。後半は近日中に公開予定です。以下のトピックを議論していますので、お楽しみに!

・2024年年初時点におけるアメリカにおける生成AIスタートアップトレンド
・日本における2023年の動きと2024年以降
・2024年の予測と今後日本市場で仕掛けていくこと
・終わりに: 生成AI分野で起業するなら

PR: シードファンドANOBAKAの「Generative AI特化創業支援ファンド」のアドバイザーをしています。生成AI分野の起業家の方、生成AI分野で投資をしたい企業の方は、ぜひANOBAKAまでご連絡ください。https://anobaka.jp/contact/

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