「牛ほめ」

夏もそろそろ終わりでヒグラシの鳴声が私の人生をあらわしてますね。
オシィ~ツクヅク オシィ~ツクヅク オシィ~オシィ~ヨット。
ほっといてください。さてつまらないお話で笑っていただきます。
古典落語と言えば与太郎さんですね。
今日はですね、牛ほめ(うしほめ)聞いていただきますが、原話は、貞享4年(1687年)に出版された笑話本・『はなし大全』の一遍である「火除けの札」が始まりと言われております。

父ちゃん:「お~い 与太郎や!」
与太郎:「あい~」
父ちゃん:「あい~じゃねぇよ。お前だって、もうはたちじゃねぇか」
与太郎:[いやぁ、はだしじゃねぇよ、下駄履いてきた」
父ちゃん:「履物のことを言ってんじゃねぇ。歳のことを言ってんだよ」
与太郎:「年は...へへ、おとっつぁん、おれぁ、二十だ」
父ちゃん:「二十のことをはたちって言うんだよ」
与太郎:「じゃぁ、三十はいたちか?」
父ちゃん:「つまねぇこと言ってんじゃねぇよ」
与太郎:「ふぇ~」

父ちゃん:「深川の佐兵衛伯父さんが家を建てたらしい、そこでお前に行って欲しいんだが」

与太郎:「あい~いいよ」
父ちゃん:「ただ行けばいいってんじゃなくてな、家を誉めるんだよ」
与太郎:「良い家だな~おじちゃん」

父ちゃん:「こらこら 決まり文句があるんだよ、良いかこう言うんだ。
結構な御普請でございます。普請は総体檜造りで、天井は薩摩の鶉木目(うずらもく)。左右の壁は砂摺りで、畳は備後の五分縁(びんごのごぶべり)でございますね。お床も結構、お軸も結構。庭は総体御影造りでございます」とこう言うんだよ。

与太郎:「ふにゃふにゃ~;;;;;わからない」
父ちゃん:「まぁそう言うだろうと思って紙に書いておいたから、それ見ながら行きなさい」
与太郎:「最初からそう言えよ!気が利かないね~父ちゃんは」
父ちゃん:「うへぇ 与太郎にはかなわないね~そうだ叔父ちゃんは柱の穴を気にしてるから、それに秋葉様のお札を貼ってこういうんだよ~ゴニョゴニョゴニョ・・・・・て具合だ小遣いくれるぞ」
与太郎:「ほんとか!!もしくれなかったらお前弁償しろよ! もっと貰える事無いか?」
父ちゃん:「しかたねぇなぁ。おじちゃんは自慢の牛を飼ってるから、牛も誉めると小遣い貰えるぞ!」
与太郎:「小遣いはいくらあってもかまわん」
父ちゃん:「現金なやつだ、いいか、こう誉めるんだ。この牛は、天角地眼一黒直頭耳小歯違でございます。」
与太郎:「なにぃ??????」
父ちゃん:「天角地眼-というのは、菅原道真公がご寵愛になっていた牛の特徴で、牛に対する最高の褒め言葉だ。」
与太郎:「そんなんで金になるんだ。面白いね」
父ちゃん:「こら!もたもたしてねぇで、早く行って来い!」

そんなやり取りがございましておじちゃんの家に向かう与太郎さんでした。
与太郎:「お!あれが叔父ちゃんちだ」
ガラガラ~戸を開ける音
与太郎:「ごめん!もし!ごめん!誰か!すみません!ごめんなさい!本当にごめんなさい!もう金輪際やりません!許してくださぁぁぁぁい!」
佐兵衛:「おいおい~誰か玄関で謝っているかと思ったら、与太郎じゃないか どうした?」
与太郎:「家誉めに来てやったぞ」
佐兵衛:「ほぉ~感心だな、まぁ~あがんなさいな」
与太郎:「どこに?」
佐兵衛:「これこれ!柱に上がってんじゃないよ。奥の居間に行くんだよ」
与太郎:「最初からそういえよ。困ったおじちゃんだ」

居間に通される与太郎

佐兵衛:「どうだ良い家だろうぉ、建てるのに1年もかかったんだぞ」
与太郎:「火事で燃えたら20分!」
佐兵衛:「こらこら!縁起でもないこというな!」

与太郎:「よしよし紙を出してっと・・・あ~!;;;;汗で書いた紙がにじんでるぅ~;;;困った;;;;」

佐兵衛:「うん?どうした?」
与太郎:「ケケッケ・・・結構なご、ご、ご普請でございます。普請は総体火の車で、天井はサツマイモのうずら豆。佐兵衛のかかぁは引き攣りで、畳はびんぼでボロボロでざいますね。おっとっことっと!おしりもけっこう。庭は総体見掛け倒しでございます」

佐兵衛:「あちゃ~!新築の家も与太郎にかかったらボロボロだな;;;」

与太郎:「どうだ参ったか?でも叔父ちゃんよ、台所の柱の穴、気になるだろ?」
佐兵衛:「おおよ それが一番気になるんだよ」
与太郎:「ここに秋葉様のお札を貼るんだよ!そうすりゃ穴も隠れて火の用心になるって訳さ!」
佐兵衛:「おぉぉぉぉぉぉぉ!そりゃ良いことを教えてもらった」
与太郎:「小遣いくれ!」
佐兵衛:「わははは!良いよ。あげるよ」

与太郎:「おじちゃん、牛も褒めてゆくよ!」
佐兵衛:「おぉ!褒めてくれるかい。いい牛なんだよ。」
ってんで庭先まで行って牛のウシろから・・・・・・

与太郎:「天角地眼-・・・・・」
と始まりましたら牛が糞をしましてね。それを見ていた与太郎さん。

与太郎:「おじちゃん!あの穴が気になるんだね」
佐兵衛:「気にならねぇよ。ケツの穴じゃねぇかよ?」
与太郎:「いんや 気になる!気になるんなら、秋葉様のお札を貼りなさい」
佐兵衛:「おいおいおいおい!罰当たりなこと言うんじゃありませんよ」
与太郎:「穴も隠れて屁の用心になる!」

おあとがよろしいようで。

※秋葉神社は神仏習合の火防(ひよけ)・火伏せの神として広く信仰された。日本全国に点在する神社である。神社本庁傘下だけで約400社ある。


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