原子力が大好き!

僕は幼い頃から原子力が大好きだった。
それは手塚治虫のアニメ「アトム」の影響がとても大きかった
原爆によって戦争に負けた日本が、恐ろしい程のエネルギーを手に入れた。
平和な時代を作るロボットヒーローの活躍として描かれたアニメだった。
僕は心躍らせワクワクしてテレビを見たものだ。
将来は科学者になってロボットを作りたいと本気で思った。

毎日のようにテレビや新聞では原子力や最新科学が最高のもの。
戦争に負けた古い日本は悪者のように宣伝していた。
だから科学の粋を集めたロボットヒーローは、子どもたちにとって神のような存在だった。

テレビで見るアトムは速いスピードで飛んでいき、凄い力で悪者をやっつけて、平和を守るヒーローとして描かれた。
まるで戦時中のアメリカと日本のようだった。

僕は幼い頃、母親に「アトムは凄いんだぞ!原子力で悪い敵をやっつけるんだぞ」と自慢していた。
母は少し悲しそうな笑顔で「そうかそうか凄かとねぇ」と聞いてくれた。
その後、ポツリと「ピカドンか。。。。」と呟いた。
長崎生まれの僕の母は原爆の被爆者だった。
爆心地に近い純心高校から、飛行機の部品を作る工場に通った母は、友人を沢山亡くしたのだろう。
母はどんな気持ちで僕の言葉を聴いていたのだろうか?
「原子力で悪者をやっつけるって酷い言葉」だと思った。

敗戦を迎えて10年後に僕は生まれていた。
近所にはケロイドで爛れた肌を持つおじさんやおばさんがいた
幼い子どもたちは、恐ろしくて「化物」と言って逃げたりもした。
今思えば本当に酷いことをしたものだと思う。
昭和20年の8月、暑い夏の日、人間がレンガに影だけを残した。
誰かと待ち合わせだったのだろうか?
それとも本を読んでいたのだろうか?
死んだことすら解らなかっただろうね?
何万人という人間が黒焦げになり、水を求めて川に飛び込み死んだ。
そんな凄まじいエネルギーを人間ごときが制御できるわけは無いのだ。
人間は自分の携帯電話すら手から落とす、間抜けな生き物だから。

僕は原子力が大好きだ。
大好きだから、これ以上悪者にならないでと心から思う。
このまま墓の中で冷たくなるまで眠って欲しいと思う。

さよなら原子力
さよならアトム
さよなら戦争
さよなら原発


日本は十分悲しみました。
あとは幸せになるだけです。
さようなら。

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