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「清洲城を守る鬼」

「鬼ころし」という日本酒がある。以前、ブログ記事を毎日書くという懸賞にあたり鬼にまつわるブログ小説を毎日書くことにした。懸賞の景品は180CCの鬼ころし紙パック30個(一か月分)でした。それから鬼にまつわる話が大好きになって沢山書き始めたんです。
その第一回目が超短篇のブログ読み物でした。ちょっとしたCM動画になりそうなお話です。(このお話はフィクションです)

「清洲城を守る鬼」            脚本:玄庵(森下)
昔々、世の中が戦国時代と呼ばれた頃。
清洲の城には「織田信長」と言う武将が住んでいました。
その頃、信長は尾張の国(現在の愛知県)を統治し、京都へ攻め込むために「安土城」を強化整備していました。
信長には数人の姫がいましたが、その中でも目に入れても痛くないほどの姫君それが「冬姫」でした。

「冬姫」は心優しき姫君です。道に病気や怪我で倒れている人がいたら着物が汚れるのも厭わず助けるような姫でした。
ある日、竹筒に清洲の銘酒「鬼ころし」を詰めて、父のいる「安土城」に向かっていました。

この街道には、とても恐い「鬼族」という野党が住んでいました。
鬼の仮面をかぶり、旅行く人々を襲い金品を盗んでいたのです。
そこを姫の一行が通るのですから「飛んで火にいる夏の虫」です。
「鬼族」は徒党を組んで襲い掛かります!逃げる姫たち・・・追いかける「鬼族」

後ろを伺いながら逃げている姫が、ふと前を見たとき急に立ち止まります。
息が止まるほどの驚きと恐ろしさに動けなくなってしまいました。
なんと目の前に、大きな大きな真っ赤な鬼が立っています。
地獄から聞こえるような恐ろしいうなり声をあげています。
「目は爛々と蒼くひかり、恐ろしい牙が目の前にせまってきました!」
もうだめだ!っと思った瞬間!

大きな赤鬼は姫を飛び越し「鬼族」を一人残らず殺してしまいました。
姫は何が起こったのか判らないまま立ち尽くしていると、一人の男が鬼の側に立っていました。

男は「山中の猿」と言われる男でありました。
この男は昔から、この山中に住む身体の不自由な乞食でした
以前、信長が「清洲城」と「安土城」の街道を、何度も通る際に見かけた「山中の猿」これを哀れに思った信長は村のものに金品を与え、「山中の猿に家を建て、食べ物を生涯与えるように」と頼んだそうです。

噂では非情だと言われている、信長の優しさに触れた「山中の猿」心から感謝したそうです。

誰も相手にされなかった山中の猿は金華山に住む赤鬼とは幼い頃から遊んでいた仲間だったのです。
信長への恩返しにと「冬姫」をいつも見守り救ったのでした。

「冬姫」は手に持った「鬼ころし」を「赤鬼」と「山中の猿」に与えます。
盗賊の「鬼族」の心には鬼の心が住んでいましたが、そんな悪人を退治した心優しき「赤鬼」と「山中の猿」姿は醜くとも心は誰より純粋でした。

「鬼ころし」の酒を飲んで”ふわり ふわり”と ”こころ ほっこり”と
宴は夜遅くまで続き、舞を踊っては楽しく過ごしたのだそうです。
「赤鬼と山中の猿」は、それからずっと「冬姫」を守り続け、死んだ後も清洲城の屋根で鬼瓦となり、今でも清洲の町を見守っているそうです。

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