鰻屋

まいどバカバカしいお笑いを一席
お江戸は神田の町に鰻屋がございまして
この鰻屋の夫婦はたいそう仲が良く
子どもが生まれたばかりで仕事にも精を出しておりました。
旦那は毎日店先で鰻をまな板で〆ておりました。

いつものようにまな板に鰻を乗せ千枚通しでトンと頭を止めて
職人の技でささっと見事に3枚におろしております。
そこにたまたま大店の旦那が通りかかったんでございます。
この旦那はというと近所でも評判の仏の清兵衛といわれるほどの
殺生などに無縁の御仁でございました。

清兵衛:これこれ鰻屋さん
主人:へぇ
清兵衛:鰻が可哀そうだから逃がしておあげないさよ。
主人:旦那さん、そうは言っても、鰻屋が鰻〆るのやめたら飯のくいあげですよ。
清兵衛:そうかい、困ったね~じゃこうしよう私が全部買い取りますよ。
主人:え!ほんとうですか!
清兵衛:これでどうだい。
主人:こんなに沢山いただいて良いんですかい?
清兵衛:殺生することに比べたら安いもんです。
仏の清兵衛さんは受け取った桶の鰻に向かって
清兵衛:もう二度と人間なんかに捕まるんじゃありませんよ

と言って鰻を神田川にザブーン。

それから毎日毎日 鰻屋を通りかかっては
神田川にザブーン!
ザブーン!
ザブーン!

それからは鰻屋の旦那は仕事もしないで毎日毎日清兵衛さんを待っておりました。そうなるともう人間だんだんと欲深くなってゆくものでございます。

そんなある日、台風で鰻が取れない日がございまして。
店先に座っていた鰻屋の旦那
遠くから清兵衛さんが歩いてきております。
嫁に向かって一言

旦那:お~い!かかぁ~おあしが・・・・いやいや、清兵衛さんが来てるよ!うなぎがねぇえぞ・・・・どうするよ!おい。
嫁:あんた、そんな言ってもとれてないからしょうがないだろ?今日はあきらめな。
旦那:そうはいくかっての何かねぇか?あ!そうだ先だって生まれた赤ん坊いたろ、あれ持って来い!
嫁:あんた鰻じゃないんだから駄目だよ!
旦那:なぁ~にまな板に乗せるふりだけで金がもらえるんだよ。

ってことで赤ん坊をまな板に乗せて清兵衛さんを待つ鰻屋

清兵衛:これこれ!赤ん坊でも食べるつもりかい!お金を渡すから赤ん坊を渡しなさい!
旦那:こんなにいっぱい良いんですかい?
清兵衛:殺生することに比べたら安いもんです。


清兵衛さん赤ん坊をあやしながら
清兵衛:いいこだねぇ~かわいいね~もう二度とこんな家に生まれてきちゃいけないよ
と言って神田川にザブーン!
お後がよろしいようで。

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