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LJL観戦記~LJL2022 Summer Split レギュラーシーズン21節を終えて~

1位は戦国ゲーミング(SG)

左:Spring   右:Summer

まずは結果を振り返ろう。19勝2敗で終えたSGが同じく19勝2敗と勝敗数で並ぶDFMを直接対決の差で振り切り1位でのプレーオフ進出を果たした。
直接対決に関しては仕方のないトラブルがあったとは言え、双方のファンにとってわだかまりの残る結果となってしまった事は否めず、それ故SGの1位という結果に納得のいかない人が居るのも承知だが、個人的にはゲームのやり直しも含めて当初のルール規定に則った運用であり、そのルールの中でしっかり再戦を勝ち切ったSGは1位に値すると思う。

とは言え、正直LJLのレギュレーションにおいて1位と2位の差は正直あまり大きくない。(1位の価値がプレーオフ上それほど大きくないというのはいかがなものか?とも思うがここでは割愛)
いずれにしてもSGとDFMのガチンコの勝負でしっかりと決着をつけてほしいと望む僕自身はプレーオフの舞台で双方の最高のプレーを期待している。

チーム毎の浮き沈み

Springから大きく調子を落としたチームと持ち直し、実力を発揮したチームについて触れていきたい。

最も、好対照な動きとなったのが福岡ソフトバンクホークスゲーミング(SHG)とラスカルジェスター(RJ)の2チームだ。

復調 SHG

SHGはSKTT1(現T1)などLOLの本場LCKで活躍していたBlankを筆頭にLJLでの経験豊富なDasher、Raina。LJL参戦二年目ながらポストEviの呼び声高いKinatu。新人ながら期待の若手Marbleとメンバーだけを見れば優勝争いに必ず食い込むと予想されて開幕した2022Springをまさかのプレーオフ進出ギリギリラインの6位で終えたわけだが、Summerではしっかり立て直して3位まで順位を上げてきた。プレーオフでは決勝戦への切符をつかむ為にはSGもしくはDFMいずれかを倒す必要がある。今のSHGに果たしてその力はあるのか?もう一歩先へ進むには高い壁を乗り越えられるか?

不振 RJ

逆に心配なのがRJだ。2021シーズンではほぼ唯一王者DFMに対抗しうるチームであり、そこから変更のあったのはTOPレーナーKinatu⇒Inoだけ。
といっても、Inoに変わったSpringではレギュラーシーズン中唯一DFMに勝ち越し(2-1)、SGと勝敗の変わらない3位で終えているのでInoがどうという事ではないだろう。
しかし、全く同じメンバーで迎えたSummerは順位こそ4位なれど内容は8勝13敗。大きく負け越したシーズンだった。どうしたRJ!?

希望 V3

最後にもう一つ気になるチームを挙げよう。そう、V3だ。
DAY16AXIZ戦で春夏通じて初勝利を収めるとCGA、BCからも勝利をもぎ取り3勝をあげてシーズンを終えた。
プロなんだから3勝で喜んでいるのはどうなのか?だとか結果から見ればいずれも5位6位7位のチームからの勝利だし、プレーオフにはかすりもしない最下位である事実は揺るがないのに悪い意味で注目されているのはいかがなものか?という声もあろう。
だが、しかしプロの競技シーンとは言え、プロチームの価値とは勝つことだけで全てではない。応援したいと思える選手やチームであること、その為にはバックグラウンドやストーリーが必要不可欠だ。
今は断トツの最下位で36連敗を喫したチームかもしれないが、アカデミー上がりの若者5人がのし上がっていくストーリーを目の当たりにしていると想像するのは悪くないかもしれない。

2022Summerメタ 振り返り考察

ここからは考察と称したLJL動画勢の独り言なので、LOLに詳しい人からはお笑いレベルの内容かもしれないが、自分なりに感じたことを記していきたい。

ゼリとシヴィアが中心に回ったシーズン

集団戦で真価を発揮するゼリとシヴィア

世界各地のリージョンを把握していないので、他がどうだったかはわからないが、少なくともLJLはゼリ・シヴィアの2チャンプがメタの中心に居たと感じたシーズンだった。

そう感じた理由とそうしたメタに至った要因を紐解いていこう。

まずはパッチ12.10の耐久力アップデートに触れよう。
説明すれば長くなるが、簡単にいうと全チャンピオンが固くなった。その結果レーンでのキルは発生しづらく、レーン戦で一方的にキルを取り続けて有利を広げていくよりも中盤・終盤の集団戦までに如何に総合戦力をあげておくかが重要な戦略となっていったようだ。

その点、ゼリはレイトスケールに優れ、終盤ではWによるポーク、条件付きとは言えEによるブリンクとR状態での移動速度UPも相まってカイト・追撃双方に優れ、火力はADCでもトップクラス。文句なしの集団戦最強ADCの一角となった。

一方、シヴィア。Q、Wともに複数HITを狙える攻撃スキルに、べた足ながらEでの自己防御能力を持ち、何よりウルトは全体強化で集団戦特化型。
特別レイトスケールチャンプという印象ではないが、アイテム3コアまで揃えば集団戦でダメージを出し続ける意味でこちらも現パッチ集団戦最強ADCの一角を担うこととなった。

勿論、こうした集団戦に向けたBOT構成への対策としてナミ・ルシアン、アムム・カリスタ、ドレイブンなどの序盤レーン戦最強ADC及びSUPの組み合わせを配して集団戦までに相手ADCにアイテムを整えさせない構成などもあったが、この場合レーンでコけた時の代償が大きい事やJGが相当程度BOTをケアしなければならない制約なども強く、うまく運用できたチームは少なかったように思う。

JGは節約系一発芸チャンプが人気

集団戦メタでADCが如何に気持ちよくダメージを出せるか、といった条件をクリアする為に必要な要素が二つ。
・ADCが如何にアイテムをそろえるためのゴールドを得られるか?
・ADCがフォーカスされない様、如何にフロントを張りつつ相手を足止めできるか?

比較的人気だったヴィエゴがピックされなくなった理由はナーフされた事だけではなく、集団戦メタで上記二つの条件を満たせなかったからだろう。
ADCにゴールドを集める為にはレーンミニオンだけでなく、ジャングルを狩らせる必要がある。しかしヴィエゴは自身もゴールドを集めたいチャンプであり、ここが競合してしまう。
また、ヴィエゴはフロントを張って真っ先に落とされてはいけない。なんとか生き残りキルを回収からの乗っ取り、キルを回収のループで初めて強みが出るチャンプ故、フロントを張りづらい。

そこで、台頭してきたのがポッピーウーコン次点でトランドルといったところだろうか。
勿論、各チャンプ、特にウーコンはゴールドがあるに越したことはないが、それでもフロントでウルトによるノックアップを複数に決めることで後は味方にダメージを託すことが出来るし、ポッピーに至ってはアイテムが劣っていようがLVが劣っていようがウルトさえ決めてしまえば幾らでも集団戦をひっくり返すポテンシャルがある。トランドルも強力なEによる行動制限とRで装備問わず集団戦で一定の存在感を示すことができた。

TOPはお留守番レーン 先出し安定

TOPはいつの時代も陸の孤島だ。
夏に限ったことではないが、TPの仕様変更(14分まではタワー以外にはTPできない)により、一層他レーンへの影響力をなくしたTOPは基本的に孤独に1V1を続けるレーンとなった。

更にLJLは所謂韓国人助っ人でありチームのエース級レーナーはADC、MIDと下半分にしか居らず、当然それを助ける助っ人JGも下半分を重点的にケアする体制なので、さらにTOPの孤島化が進む。

そして、集団戦メタによるBOT中心の展開が主となればもはやTOPレーナーがレーン戦でカメラに映るのはヘラルドファイトの時くらいであり、レーン戦での仕事は雑に言えば「死ぬな!耐えろ!」である。

以上のようにレーン戦では安定を求められ、集団戦で影響力を発揮できることがTOPレーンピックの最低条件である。
加えて、ピックバンの優先度を考えると敢えてTOPレーンでカウンターをあててTOPからゲーム作りをする戦略は(DFM以外は)立てづらいのでピックバンでも対面の選択が見えていない中で早めにピックする必要性も加味しなければならない。

そこで、LJLで多く採用されてきたのが、ナー、セジュアニ、ガングプランク、オーンあたりだろうか。
基本的には固く、または接近して殴り合いのリスクを避けられるメレーで必要以上にレーンでデスするリスクを避けつつ、集団戦ではAOEダメージやCC、強力なエンゲージを期待できるチャンプ達という役割を担ってきた。

春はそれでもグウェンやトリンダメアといったダメージディールにも期待できる強気なチャンピオンピックが観られたが、ナーフの影響も含めて殆ど15分までは放置レーンとなってしまった今のメタは少し残念な気もしてしまう。

結局LOLの本質はMID LOL=MIDレーナーである

ここまで、今シーズンが如何に集団戦メタでADCを中心に回ってきたかを語っておいてなんだが、結局LOLとはMIDレーナー次第だという事を叫びたい。

集団戦までの攻防でADCが装備を整える状態を作り出すためにはJGが如何にBOTレーンに介入またはケアできるかが最重要課題になる。
では、JGがBOTに介入できる環境を作り出すのは誰か?そうMIDである。

相手JG深くへワードを指し、相手JGを捕捉することでこちらのJGルートの最適解を導き出す。レーン主導権を握り、リバーでJG同士がファイトになったら相手MIDよりも早く寄れる状態を作り出す。
一方的に相手MIDをタワーに押し付けたり、ベースに帰らせて作った優位で万が一BOTで相手JGのカウンターガンクを喰らっても4v3の状況を作りだす。

要はJGがとりたいルートを自由にとれるかどうかはMIDレーナーにかかっているといっても過言ではない。この差を作れるか、または作られないようにするかが全てMIDで決まる。
いうなれば、ADCを育てられるかどうかはMIDレーナー次第だ。

チームの個性が出るMIDピック

そうした意味で、Summerシーズンにおいて最もチームドラフトの個性が出たのもMIDだろう。

まず、MIDはAPダメージを補完するためにAP系チャンプが好まれる傾向にある。元々やわらかく、デスのリスクの高かったAPメイジ系チャンプは耐久力アップデートの影響を強く受けた点も高評価だ。
その上で、ここからはチームの戦略・ゲーム観といったものがピックに反映される。

①レーン主導権と機動力を活かした他レーンへの介入
筆頭はアーリ。MIDピックとしてシーズン通して人気ピックであり続けた。強力なCCであるWからのキルの可能性を常に秘めつつ、序盤からウェーブクリア、相手へのハラス能力はMIDレーン随一で握った主導権をBOTファイトに参加する事で還元できれば試合を序盤から壊していくことができるのが最大の魅力。味方ADCの成長を加速させ、相手ADCの成長を遅らせる現メタにあったチャンプだったとも言えよう。
ゾーイや終盤になってバフの影響でピックされ始めたルブランもこのカテゴリになるだろう。
このカテゴリのチャンプの弱点は後述するチャンプに比べてレイトスケールに劣ること。それ故、レーン戦をイーブンで終えたり、他レーンが崩れた時に自身の力では中盤以降試合が組み立てづらい点にある。

②レーン主導権を相手に渡さずに相手MIDを他レーンに介入させない
代表的なチャンピオンはアジール。低レベルから圧倒的なレンジ差を活かした一方的なハラスが行える。自身はロームが得意な訳ではないし、スキルセットがソロキルを狙いやすいものではないので、あくまで相手をレーンに釘付けにすることが主な仕事。
とは言え、相手をレーンに釘付けにすることは言うほど容易いことではなく、自分の対面にロームされて味方BOTがデスする姿をMIDレーンから眺める事しかできない・・・という光景には何度も出くわしたのも事実である。
ビクターもどちらかと言えばこのカテゴリに入るかと思うが、E進化前の序盤のウェーブクリアはかなり苦しいため、この運用を行うにはメカニック次第といったところだろうか。

③序盤のレーン主導権よりも中盤、終盤の集団戦を重視
サイラススウェインオリアナコーキベイガーなどがこのカテゴリに入るだろう。
そもそも序盤のウェーブクリアが遅くレーン主導権を取りづらかったり、相手にキルプレッシャーを与えづらいなどレーン戦では弱点を抱える一方、中盤以降のスケーリングと集団戦での強力なスキルセットで影響力を出す構成として採用されてきた。
チームとしてAD、APの2ダメージキャリーの構成としてバランスがとりやすい事。そのおかげでバックラインに突っ込んでくるようなエンゲージチャンプが相手に居る場合でも的を分散できるメリットがある一方、レーニングで相手MIDのロームによる味方BOTレーンの壊滅という状況も少なくないため、味方BOTとJGに責任をかなり負わせてしまう構成であることも否めない。

少し雑ではあるが、以上3カテゴリに分類してきた見た時に、結局MIDピックとその運用次第でゲーム中で狙うオブジェクト、ゲーム時間の考え方が決まると考えている。

アーリをピックしたチームは序中盤から試合を動かして早い時間帯で試合を終わらせたいし、その主導権を活かして序盤のドラゴンやヘラルドは必ずとっていきたい。逆に序中盤にレーン主導権を握れないベイガーやサイラスをピックする予定があるならば序盤からケアの必要なナミ・ルシアンをピックしてはいけないし、レイトスケールで合わせたピックをしたならば序盤の集団戦で不用意に戦ってはいけない。
全てはMIDとその実質DUOともいえるJGがゲームテンポを握っているのがLOLだというのはどんなメタでもそうそう変わらないようだ。

総括

以上のメタを振り返りつつ、レギュラーシーズンを振り返ると1強DFMと唯一対抗しうるSG。その2チームになんとか食い下がるSHG。残り5チームが優勝戦線に加わるには相当高い壁があるというのが冷静な分析だろうか。

SGが1位抜けしたことは事実なのでDFM1強という言葉にSGファンの中には怒る人もいるかもしれないが、上記メタに沿った戦略をどんな構成でも最もバランスよく、しかも相手を圧倒する形で発揮していたのは間違いなくDFMであるのもまた一つの事実だと思うのである。

しかし、逆に言えばDFMを破って日本代表の切符を勝ち取る可能性が最も高いのもSGであり、プレーオフはレギュラーシーズンではもやもやの残った両者の対決に決着がつくのか?それとも全く別のチームが覚醒して優勝を果たすのか?そんな期待と楽しみを胸にLJL2022SummerSplitレギュラーシーズン観戦記の筆を置きたい。



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