俺を獲れ!出演を終えて 完敗だけど失敗じゃない
7月9日に開催された「俺を獲れ」に出演し、少し時間が経った今、当日何を思ったか、そして今何を思うのかを記したいと思います。
なお、この記事をかくにあたり、何度も自身出演部分のアーカイブと梅原さんとミートさんの間で行われた振り返り配信を見ました。正直、自分がボコボコにされる結果をわかっていて何度もそれを確認する作業は本当に辛いものがありましたが、プレゼンが上手くいかなかった、ただ悔しい、で終わるだけでは勿体ない、少しでも明日からの自分の糧にできるものを探したい、との思いです。この記事を書くのもそんな自分の気持ちと頭の整理を少しずつ昇華していく作業の一環としてのもので、もし興味のある方はお付き合いいただければ幸いです。
はじめに
まずは主催の梅原さん、他4人の斧役及び運営関係者の皆様に感謝します。
何の実績も無い自分の様な一般人をあれだけの規模の人が視聴する中、自分をアピールする場を得られた事は大変貴重な経験になりました。改めて御礼申し上げます。
当日の結果について
皆さんご存知の通り、梅原さんに私のプレゼンが刺さる事はなく、客観的に見ても一般人枠参加のメンバーでは全参加者通じてかなり厳し目の意見をもらったのではないかと思います。それを見て、私の挑戦は失敗だったと感じる方もいると思いますが、私はそうは思いません。私は今回の出演を通じて多くのものを得ることができました。
斧の獲得
私のプレゼンに対し、GameWithさんが手を挙げてくれました。元々この企画は尖った人材がこの人には刺さらなくても他には刺さるかも?というコンセプトで5人の斧が集められている企画です。その一人から手を挙げてもらったことは光栄なことで、これでも失敗と考えるのはGameWithさんに対して失礼だと感じます。もちろん私自身も梅原さんを落としにいったので、その点では悔しいという思いも本音ではありますが、まずはこのご縁を大切にしたいと思います。
プロの本気に触れる
二つ目に得られたもの。それは、梅原さんからの忌憚のない意見です。
なぜプレゼンが刺さらなかったのか?については後ほどゆっくり触れるとして、業界トッププロの本気を感じました。恐らく格ゲーに関係ないジャンルの話であれば、梅原さんはあそこまでの発言をしていないと思います。しかし私の持ち込んだ企画は格ゲーの攻略そのもの。梅原さんにとって本丸の部分です。画面越しに見ていた皆さんにどこまでそれが感じられたかは分かりませんが、直接対峙した私には梅原さんからの「格ゲーの攻略に挑戦するなら中途半端は許さないよ?俺はそこだけは妥協できないよ?」というメッセージをひしひしと感じました。プロとして最前線で戦い続けた本気の空気(それでも相当抑えてらっしゃったとは思いますが)に触れられた事は本当に大きな経験になりました。
格ゲーとデータ その組み合わせに対する反響
三つ目の収穫は格ゲーデータの面白さを伝えられた事です。梅原さんの反応が厳しいものだったので、正直配信時のコメントもかなり酷評されているんだろうな、との不安でいっぱいでした。しかし、その予想に反して放送直後から私のTwitterには楽しんでいただけた方からのコメントが寄せられ、アーカイブで見る限りでも当日の配信で楽しんでいただけた方は一定数いる事は、格ゲーとデータの組み合わせに可能性と手応えを感じる良い機会になったと感じています。
また、私のデータの取り扱いに関しての課題なども含めて、YouTubeのコメント欄に多くの方々が議論を発展させている現状を見ると業界に小さな一石を投じる事はできたように思います。
戦友
最後に記しておきたいのが俺を獲れという舞台で共に戦った方々の存在です。
当日は極度の緊張と疲労からほとんど周りの方との交流はできませんでした。しかし、後日DMでご挨拶したり、Twitterの相互フォローになるなど、ジャンルを超えてあの場に挑んだ挑戦者たちの連帯感がそこにはありました。これまで何となく独りでデータ収集を続けてきた自分にとって初めて格ゲーの攻略に取り組む戦友の様なつながりを得たような感覚を得たのです。
企画応募から準備・用意した戦略
なぜ自分のプレゼンは梅原さんに刺さらなかったのか?の分析に入る前に、その解像度を上げるために自分が応募から当日までに準備した足跡を記しておきたいと思います。
応募まで
突如この企画が発表されたのは6月26日。応募締め切りが7月2日で企画当日は7月9日という超強行スケジュール。こういう挑戦は勢いが重要で、あれこれ考え出すと不安やリスクばかりが見えてくるもの。応募することはPVを見た時点で決めました。ただし、昂った気持ちのままでは良いエントリーができません。
普通に考えて当日で捌き切れる以上の人数の応募があり、一次審査で相当数落ちる事くらいは容易に想像できるので、まずは一次審査に通るために何を求められているかと自分のやりたいことを今一度整理するため、数日時間をあけてエントリーシートを提出したのが6月29日頃だったと記憶しています。
一次審査通過まで
現時点で何の実績もなく、何者でもない自分が仮にオーディションの場に立ったら何をアピールできるか?特にデータの話は何の資料もなく言葉だけで説明するのはかなり辛いものがあります。私には何かしらの資料を作成することが必須でした。一方、応募は最終的に500件近くを超え、当初の予想通り一次審査で相当数が落選することが示唆されます。企画が1日であることから私は当日参加できるのは30人程と予想を立ててましたので、この時点で15倍を超える狭き門と推測。運営から示された一次審査当選発表は7月7日。企画当日が7月9日なので、一次審査の結果を待って資料作りを始めたのでは到底間に合いません。書類審査で落ちれば何の価値もなくなる資料作成を応募と同時に決行するしか私には選択肢がありませんでした。私の闘いはエントリーしたその日から始まりました。
このスケジュールに対して同情的な意見をよく目にします。「企画発表から日がなさすぎて準備する時間が少なすぎる。出演者がかわいそう」と言った意見です。
しかし、当事者である私の捉え方は全く逆でした。準備に時間が取れないのは逆にチャンスです。企画発表を受けて何をやろうか考え始める人に対して、既にデータ分析で勝負しようと即決できる自分とではスタートラインで既に差がついていますし、一次審査受かったら準備を始めようと思っている人に比べれば、審査前から準備を始める自分はアドバンテージを得ることになります。もちろん、審査を通らなければ作業が無駄になることは百も承知です。でも、プロゲーマーになりたくてプロゲーマーオーディションを見てからゲームを買って練習し出す人は居ません。プロになりたいのならばいつあるか分からないオーディションの日まで常に爪を研ぎ続け、いざきた千載一遇のチャンスをものにしなければならない。これは他ジャンルも同様で、今回のスケジュール感には、戦いの場が用意されてから考えるのではなく、戦いの準備をし続けてきた人間に来てほしい!そうしたメッセージが込められていたのではないかと思います。
梅原さんに完敗した要因
さて、ここからは本題。なぜ私のプレゼンが刺さらなかったかについて振り返りたいと思います。前述した通り、当日のアーカイブや梅原さんの振り返りで私や他の出演者に触れている部分は繰り返し視聴し、頭の整理を行いました。
プレゼンの技術などに触れられている部分もありますが、結局本質的な要因は「やろうと思えば誰でも出来る」「驚きがない」という二つの指摘に集約されていると感じました。
要因①やろうと思えば誰でも出来る
この指摘に対する受け止め方は人によって大きく異なると思います。視聴していた方の中には「この量のデータを採るのは誰にでも出来ることではないよ」「データを取ることへの大変さや敬意を欠いているんじゃないか?」と言った私への擁護の立場でコメントをくださった方も相当数いらっしゃいました。実際、私もそう思います。”理論上できることと実際にやれること”には大きな乖離があり、自分の時間を犠牲にしてこの量のデータ採りを行うことは凡そ出来ることではないと今でも自負はあります。AIなどで自動化すればいいからこの労力には価値が無いという人もいますが、そんな簡単なものではありません。
ただし、ここで梅原さんから発せられた指摘はもう一歩深く受け止める必要があると今では感じています。梅原さんは以前講演で、日本で初めて格ゲープロになった当時を振り返り、「練習のしすぎで体が拒否反応を起こすレベルまで自分を追い込んでしまった」と語っていたことがあります。その他にもスト6が出てから何かに取り憑かれたようにプレーし続け、床で寝てるSakoさん。スト5時代にあまりに自分を追い込みすぎてドクターストップがかかったりゅうせいさんの事例など、一つのことに没頭し出したら狂気の沙汰と思える努力を当たり前の様にし続ける人たちが当たり前に存在するのが格ゲーのトッププロの世界。そして、その狂気じみた努力の前提の上で”自分らしさ”を表現できて初めてプロとして存在できる厳しい環境に身を置いている梅原さんの背景をすっかり軽んじていたんだと思います。
一般人の私にとっては特別な努力・労力だと思っているレベルでも梅原さんにしてみれば「その程度のものは散々見てきた。その上であなたの”オリジナリティ”はどこ?」というのが本質的な解釈で、当日の私にはこの質問への回答を持ち合わせていなかったというのが一つ目の敗因です。
要因② 驚きがない
この点に関しては振り返り配信で梅原さんが語っていたのでそれを引用すると「今まで直感的にやっていたがデータの裏付けにより全く有効ではない行動だったとか、データによるとこういう新戦術があり得る、といった気づきがなかった」という主旨の発言があり、ご自身が行った「Xiohai VS ももち」におけるデータ分析と比較して「レベルがあまりに低かった」と結論づけられていました。
この指摘に関しては私自身もほぼ同意しかありません。元々私の目指すところも「これまで直感的に信じられていた行動がデータにより覆されるような新しい発見」を目指してきました。例えばメージャーリーグベースボールではノーアウト1塁で送りバントという選択肢はほぼありません。勿論米のベースボールでは元々バントが少なかった事実はありますが、これは送りバントとヒッティングを膨大なデータで比較したときにヒッティングの方が期待値が高いと結論づけられているためです。今まで何となく行われてきた送りバント戦術がデータによって否定された事例と言えます。
また、昔から打者の判断材料とされてきた打率に関しても出塁率やOPS(=長打力)がより勝敗に影響する指標として台頭してきているようにデータによって新たな指標に着目されるケースもあります。
そして、こうした”新たな発見”が私のデータ分析の目指すところでもあります。しかし、こうしたこれまでの常識を覆す研究成果はそう簡単に導けるものではなく、現時点でその期待に応えられる成果を提示できなかったというのが事実でもあります。
とは言え、当日を迎えるまでは私にも多少の自信がありました。新たな発見は提示できなくとも、”当たり前と思われていることをデータで定量的に示すことには価値がある”と考えていたからです。そしてこの考え方は今でもそれ程変化していません。私は梅原さんの大ファンですが、だからと言って梅原さんの基準が全てだとは思っていないし、盲目的・感情的に受け入れてしまうと必ず間違いが起きます。例えば、私のプレゼンにあった「相手とのEXゲージ消費量と勝率の関係」について「EXゲージを相手より多く使えば勝率が上がるなんて当たり前だろww」と馬鹿にするコメントも多く見ましたが、こうした当たり前を一つ一つ検証していった先に「当たり前だと思っていたが実は当たり前じゃなかった」という発見があることはここで付言しておきたい点です。
また、仮に当たり前であったとしてもそれを定量的に確認することには意味があります。例えば、運動不足だったり暴飲暴食をしてしまえば体重は増えます。これはごく当たり前のことです。それでも私たちは日常的に体重計に乗ります。体重が増えているのは当たり前の事象ですが、その増え方がどの程度だったのか、どの位インパクトがあるのかを確認するには体重計に乗って定量化して初めて成し得ることなのです。
では、なぜこの内容が梅原さんには刺さらなかったのか?これはひとえに私が梅原さんのレベルを読み違えていたからだと結論づけています。
当たり前を定量化する意味の一つに人間の”感覚値・体感値”と”実測値”のズレを正すことが挙げられます。先の例にそえば人は体重計に乗った時に「体重増えてるとは思ったけど、まさか5kgも増えてるとは・・・まずい!」といった事が度々発生します。これは人間の体感値では自身の体重を正確に認識できないことが大きな要因で、その実測値との間にギャップが存在するためです。
しかし、もし特殊な訓練の結果、自分の体重をグラム単位まで感じられる人が居るとすれば、体重計のデータを見せられても「分かってたよ?」以上の感想を持たないでしょう。ここからはほぼ推測になりますが、格ゲーにどっぷり浸かっている梅原さんにとって既に格ゲーのスタッツの一部は感覚値と実測値がかなり一致する境地に辿り着いている可能性があります。
だからこそ当たり前を示すデータには興味がわかなかったというのが本音でしょうし、逆に仮にその感覚値を覆すような成果を提示できていれば全く異なる結果になっていたと思います。私が通用すると思っていたデータの価値は梅原さんの様なレベルに達している方には価値を見出しづらいものになっていた。一般的に価値のあるデータであることと梅原さんにとって価値のあるデータであることはイコールではなかった。私は梅原さんのレベルと求めるものを完全に見誤っていたのです。
今後の活動
当日のプレゼンではやや混同する形になってしまいましたが、私の構想は当初から二部構成。すなわち、エンターテイメントとして活用する一般受け向けのデータ活用と上級者向けの攻略的要素の強いデータ活用の二つで考えています。
今回の出演を踏まえてそれぞれの軸でどのような活動を行っていく予定かを記したいと思います。
エンタメ系データ活用
四人のユリアン使いの比較に代表されるように、より一層視聴者に楽しく伝えることに主眼をおいたデータの活用です。「またユリアンかよ〜」ではなく、「ときどまたEXタックル打ちやがった!!」とプレーの注目すべきアクションを増やすことで一層初心者や動画勢に楽しむポイントを増やせる試みだと考えています。この活用については当日の配信コメントにもかなり反響があったようにこれから伸ばしていける分野との手応えを掴みましたので、引き続き取り組んでいきたいと思っています。
ただし、やはりデータはサンプル数が命。少なくともSFL前半戦は概ねデータ収集がメインの活動となり、データが揃い始める後半戦で色々な発信(現時点ではYouTubeやTwitter投稿がメインの予定)ができればと朧げに考えています。
上級者(プロ)向けデータ活用
前述した通り、元々はデータの裏付けによる”新たな発見”を目指すのが私のデータ分析による目標でもありますので、この点に関して梅原さんからの示唆も含めてより一歩踏み込んだ研究を深めていきたい意欲はあります。加えて統計手法としておそらく統計ソフトを利用したロジスティック回帰分析などによるアクション毎の勝敗に対する係数を求める様なより数学的研究手順を利用することも手段の一つとして考えています。
一方、実はこのテーマに関しては葛藤があります。というのも、研究テーマをより深く、先鋭化させていけばいく程、需要は極端に減っていくことです。一部のマニアックな格ゲーマー(その最終系がプロな訳ですが)には受けても、その内容に理解が追いつかないライト層が離れていくのが現実で、発信のコストに対して反響が極めて感じづらいのという大きな課題があります。動画自体もなぜこの様なデータ集計を行ったのか、どういう基準で外れ値を除外しているかなどを詳細に説明し出すと本当に興味を持つ一部にしか視聴されないような動画が出来上がってしまうのも悩みの種です。
さらに、数学的手法を用いた分析を行うことの弊害もあります。数学的に導出された結論の意味を理解するためには一定の数学的知識が必要になり、それを持ち合わせていない場合、逆に伝わらないということが往々にしてあります。
例えば、格ゲー始めて1日目の初心者から詐欺飛びの原理について解説を求められたとして、正確に伝えようとすると受身時の状況とそれに関するフレーム及び技の発生フレームなどに言及する必要があります。しかし、そもそもフレームの原理を理解していない人にフレームを用いた説明は逆効果です。で、あれば多少不適切であっても「丁度反撃が当たらないタイミングを計算して飛んでいるんだよ」くらいの説明の方が相手に伝わるかもしれません。
統計学においても同様で、回帰分析における有意水準の考え方や決定係数の見方をどこまで理解する必要があるかなどの葛藤は常についてまわります。私がデータを提示する上で平均値などの単純な指標を心がけているのも分析手法の複雑さと伝わりやすさがトレードオフの関係になりやすい事を意識してのことでもあります。
この辺りは引き続き試行錯誤しながら伝えやすさと分析の適切性を天秤にかけて活動していく考えです。
俺を獲れ!へのリベンジについて
既に第二回への多くの期待の声や梅原さん自身も二回目の開催に意欲を見せるような発言をされていたりと次回に期待する声もちらほら上がっている状況です。しかし、私の現在のスタンスは第二回俺を獲れ!への”リベンジの為だけ”の活動をする予定はありません。
みなさんにも多少は伝わっているとは思いますが、データ収集にかけるコストは尋常ではありません。これを行えたのは”データの分析が楽しい”と思える純粋な知的好奇心でした。リベンジだけを考えて成果物第一主義のようなスタンスで今後活動するとどこかで義務感のようなものが生じ、モチベーションが続かないでしょう。何より何時あるのか、本当にあるのか?あったとして書類審査を通る保証もなく、当日万が一梅原斧を獲得できたとしてその見返りまでは約束されていない企画に人生の多大な時間を全BETするには少々賭けるものの負担が大きすぎます。まずは費用対効果とは別に、自分の楽しいと思うモチベーションを前提にデータ分析を続けます。そしてその結果として梅原さんと対等に勝負ができるだけの実力と成果物を手にする自信を身につけられたと思えた時にリベンジの機会が得られれば良いな、と考えている。これが私の偽らざる本音です。
最後に
以上が格ゲーデータ収集家Geminiの俺を獲れ振り返りになります。自分自身の整理と共に、ここまで長文・乱文にお付き合いいただきました皆様にちょっとした追体験をしていただければと考えて記したこの記事の最後に、私から一言。
今回の梅原さんへの挑戦は完敗でした。でも、決して失敗じゃない。本当に挑戦してよかったです。私も人間だから悔しいという気持ちはあります。それでも、結果にめげることなく、データ分析再出発したいと思います。データの世界は面白いんだよ!って多くの人に伝えられたら幸いです。
蛇足
以降は蛇足です。YouTubeや当日配信で寄せられた疑問に個別にお答えします。
プレゼンの技術について
ー資料多すぎ問題
当日のアピールタイムや質疑応答などの条件が示されたのは当日会場入りしてからでした。事前に梅原さんの配信で50名程度が書類審査を通っているとの匂わせがあったので逆算すると一人あたり5〜10分程度と推測することは可能でしたが、それも前日あたりにようやく認識できたレベルです。前述の通りエントリーシート提出時点から資料作成を行っていた自分には軌道修正は不可能でした。ただし、資料として渡してさえしまえばアピールタイムが終わっても後で読んで貰えるかもしれないという下心もあったので、大ボリュームになった資料自体には特に後悔はありません。
ーこくにい いじり
この件に関してはご本人とファンの方を中心に不快に思われた方々にお詫び申し上げます。一方的な説明ではなく斧側を巻き込んだプレゼンにしたいとの思いでその後フォローなどを入れながらデータの有用性を説くイメージで居たのですが、極度の緊張などもあり、当初予定していたイメージとは程遠いやりとりになってしまいました。結果として不快にさせてしまった方々が多くいたことは反省しています。
ー時間配分
前述した通り、当日のアピール時間などはほぼ出演直前に提示された為、頭の中でプレゼンの構成を再構築して何度も空想リハを行いながら待機していた状況でした。残念ながら軌道修正しきれなかったのは皆さんご承知の通りです。一方、しっかり軌道修正したクローバーさんの例や具体的な例を出しつつ確り伝えたいことを伝えきるササモさんの例がある様に即座に適応したプレーヤーが居たことからもプレゼンスキルに反省すべき点はあります。
ただし、今回に関してはプレゼンスキルはあまり本質的な議論ではないと思っています。視聴していた方は分かると思いますが、あの場は梅原さんがルールでした。純粋に私の提示した分析を梅原さんが面白い!と思えば梅原さんの一存で多少の時間延長はあったと思いますし、「後で時間をとってもっと話を聞いてみたい」という発言くらいは引き出せたはずです。結局のところ私の提示した分析が興味を引けなかったのが最大の敗因であることは言うまでもありません。
ー自信過剰すぎたのではないか?
私は一次審査が通って改めて当日の戦略を考えるにあたって攻略のヒントを必死で探すことになりました。梅原さんの配信や斧それぞれの経歴なども当然リサーチしましたが、一番のヒントはPVです。「俺を見つけられてないお前らが悪いんだぞ?わざわざ出向いてやった、くらいの気持ちで来てほしい」というメッセージからそういうキャラを作り込んでいったというのが一点あります。
また、本編でも記した通り、用意した分析を当日までは面白いと思ってもらえる、という気概で乗り込んでるので単純にその点は実力不足でしたの一言です。
でも、それくらいの気概を持ってないとそもそも応募しようなんて思わないわけで、こればっかりは結果論でしかない様な気もします。
ー研究を手伝わせて欲しい位のスタンスに軌道修正できていれば結果も変わっていたのではないか?
確かにそうかもしれません。この問題は結構難しい論点です。このオーディションの結果だけを考える最善手が果たして自分を幸せにしてくれるのか、という問題になります。他人に研究テーマを委ね、手足としてだけの立ち回りで自分のモチベーションが維持できるかは正直今の自分にかなり難しい問題です。
データに関して
ーデータ自動化
データの自動収集については最大の課題で、もちろん個人的に取り組み始めている論点です。ただし、その実現が容易ではない理由がいくつかあります。
①収集定義の複雑さについて
例えば、起き攻め時の攻防についてデータを収集しようと試みてみましょう。一番最初に思いつくのが試合動画を録画し、モーションを自動で計測する様な仕組みです。しかし、打撃重ねが通った時、画面のモーション上では相手が打撃暴れだったのか投げ暴れだったのか、はたまた全く別の選択肢だったのかは分からず、キーディスを検証して初めてそのデータを正しく集計することが可能になります。勿論、キーディスだけだと先行入力や仕込みなどを誤収集してしまう可能性もあり一つの動作を集計するだけでもかなり複雑な定義づけと判定基準が必要になってきます。また、攻め側がシミーを仕掛けた時に相手が”ボタンを押さない”という行動も一種の選択なわけですが、この”何もしない”を集計するのもかなり難しいポイントでもあります。例を挙げ出すとキリが無いのですが、一言でデータ収集の自動化と言ってもそんなに単純ではないことがご理解いただけると思います。
②費用対効果
上記のような自動収集ツールを開発するとしてその仕様書の策定から実際に納品までを考えれば、システム開発に少しでも携わった人ならば相当な金額のシステム開発になることはご想像の通りです。今はなんとなく盛り上がっている格ゲーデータ分析ですが、現時点でマネタイズの道筋の見えないこれだけのシステムに投資できる人がどれだけいるのか?という現実的な問題に直面します。
③自動化のタイミング
最後の課題は現時点で必要とされるデータが確立していない点です。野球のように有力となる指標がある程度固まっている競技ならまだしもデータをとってみたらあまり有効でない、なんてのが当たり前の様にあるのが格ゲーデータの現状です。謂わばレシピの固まっていない新作商品の試行錯誤している段階で大量生産用のオートメーションラインを整えてしまう様なもので、果たして現時点でどれだけ自動化を推進できるのかという論点は残り続けます。
以上の様にまだまだ未開拓な分野であるがゆえに課題が山積みであるのも実情というのが私の認識です。この点は引き続き試行錯誤していく他ありません。
ーなぜSFLのデータに拘るの?
自分のデータポリシーとして公式の真剣勝負の場のデータのみを取り扱う事としています。ランクマやラウンジのデータを含める考え方には、隠しきれない手癖などをデータ量から導き出す等のメリットがある一方、ランクマで平気で30連勝、50連勝するようなプロ達のデータとして果たしてどこまでそれらを信頼できるかという問題に直面します。ラウンジに関しても本番前の対策として勝ち負け度外視で特定の技への差し替えしだけを意識した試合などもあるでしょうからそうしたノイズとなるデータをどれだけ許容できるかとの課題も発生します。取得するデータの対象をどこまで絞るかはポリシーに基づくものなので決して優劣で語るべきではありませんが、私はSFLを中心とした真剣勝負のみを対象とするポリシーを持っています。
ーなぜSFVのデータを持ち込んだの?
上記の通りのデータ取得ポリシーがあったため、オーディション当日には間に合いませんでした。
ーデータ分析が結論ありきになってないか?仮説から入るべきでは?
私の分析手法は大きく分けて二つです。
①疑問、仮説から入ってデータでの裏付けを行う
②データを横並びさせて異常値を検証する
実は今回提示したEXゲージと勝率に関するデータも元々は”最終シーズンに相手ガード時にゲージ取得率が上方修正(ガイルにとってはナーフ)されたソニックブームの試合への影響度はどれほどか?”という純粋な疑問とそれに対する仮説から入って検証した結果の一部で、手順としては①になります。一方、プレゼンにおいて検証の手順が最善とは限りません。今回は時間も限られている中、キャッチーな結果を先に見せて興味を引いて内容を補足していくという建て付けにしましたが、圧倒的に時間もスキルも足りず、誤解を招いてしまったかもしれません。
また、②のような手順では新たな着眼点を得られることも多く、これもまた状況に応じて有効な手順だと考えています。
現時点で議論になっている点はざっと以上の通りの認識ですが、気づいた点があれば適宜追記していきたいと思います。
以上、ここまで読んでくださりありがとうございました。
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