2000年のあの日



2000年、有馬記念。

勝ち続けると、すべての馬が敵になる。

その馬は、完全に包囲された。

道は消えたはずだった。

テイエムオペラオー。お前はなぜ走れたのか。

年間全勝のレジェンド

その戦いに、人は夢を見る。 さぁ、夢を見よう。

― 2000年 有馬記念 ―



年間無敗、世紀末覇王。

2000年の幕開けから、一度の敗北も喫することなく進撃してきたその馬は。

20世紀末、最後のレースを迎えていた。

レースは勝者を生む。だが、必ず敗者も生む。

当然、こんな快進撃を由としない者も居た。


ゲートが開く音と同時に、激戦の幕は開けた。

レース序盤。覇王は中団につく。

第4コーナーを周る馬群は、少しばかり異常であった。

ゴーイングスズカ、ホットシークレットが上がってくる。

だがオペラオーは後方から三番手。

先頭はジョービッグバンが走っている。ゴーイングスズカは二番手。

それでも変わらずオペラオーは三番手。

外側にはナリタトップロード、マチカネキンノホシも居る。

前は開かない。勝利への道筋が、閉ざされている。

ここで第3コーナーのカーブへかかる。

攻めるなら今だと言わんばかりに前へと向かう。

第4コーナーを突き進む。

残り300m

未だに前方は塞がれている。光は見えない。

ダイワテキサスか。ナリタトップロードか。アメリカンボスもやって来た。

残り200m

オペラオーが来る。攻める。攻め込むなら今しかない。

テイエム来た!テイエム来たッ!テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!

完全な包囲の中。ほんの僅かな隙間を見つけ、覇王は抜け出した。

抜け出すか!?メイショウドトウとテイエム!テイエム!?テイエムか!?わずかにテイエムか!?

実況の叫びの通り、オペラオーの側に居たのはメイショウドトウ。

ゴールに到達したときは、わずかなハナ差であった。

会場に歓声が巻き起こる。

テイエムオペラオーは、完璧なマークの中、勝利を手にしたのだった。



王者の讃歌。

衝撃のGⅠデビュー。その後の好敵手たちとの熱い勝負。

正攻法で、しかも堂々と戦い合うことで、

風格と威厳を身につけてきたテイエムオペラオー

完璧な勝利を重ね、歴史が認める英雄へ――。

王者を称える歌が、力強く、声高らかに聞こえてくる。

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