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ポーカーのMTTにおけるBubble Factor

『ICM』や『Bubble Factor』という言葉はポーカーのトーナメントにおいてよく耳にすると思います。

ICMとBubble Factorはポーカーのトーナメントにおいて把握しておくべき重要な要素です。
これらの概念を深く理解することは、特に終盤のプレーにおいて重要な判断材料となり、賞金期待値の最大化に役立ちます。

日本語で説明している記事が少なかったため、具体例を交えてご紹介します。

ICMとは


キャッシュゲームにおいては$10チップ=$10の価値を持つ一方で、
トーナメントにおいては同じ1,000点でも、各プレイヤーのスタックやプライズジャンプのタイミングによってその価値は変動します。
その変化するチップの価値を計算する数学モデルをICM(Independent Chip Model)といいます。

ICMを活用することで各プレイヤーの賞金期待値が計算できます。
アクションはこのICMに基づいて、賞金期待値を最大化する方向に取られるべきです。ICMは複雑な計算が必要なため、通常は専用のツールを利用します。(プレー中に暗算できるほど単純な計算方法ではありません。)

トーナメントにおいては、
プレイヤーがダブルアップしてもスタックの価値は2倍にはなりません。
逆にスタックが半分になってもスタックの価値は半分になりません。
このため、失うチップの価値>得るチップの価値が成り立ちます。

具体例をICM計算ツールの結果と合わせて見てみましょう。
Buy in:$100
残り9人で7位からインザマネー
賞金とスタックが下図青枠の通りの場合、ICMに基づく賞金期待値の計算結果は下図緑枠の通りです。

例1: ICMに基づいた賞金期待値


ここで、オレンジ枠の1位と8位のプレイヤーの2人がオールインになったときの賞金期待値の変動を8位のプレイヤーの視点から見てみましょう。

■8位のプレイヤーが勝った場合
以下の通り8位のプレイヤーはダブルアップし、賞金期待値も変動します。
スタック+800点
賞金期待値+$187.7

例2: 8位のプレイヤーが勝った場合

■8位のプレイヤーが負けた場合
スタック-800点(バスト)
賞金期待値-$274.5

増減したチップは同じ800点ですが失うチップの価値($274.5) >得るチップの価値($187.7)になっていることがわかります。

Bubble Factorとは

失うチップの価値が得るチップの価値を上回る状況において、賞金期待値を基にオールインするためには、必要な勝率を算出する必要があります。
その必要勝率を出すのに使う数値をBubble Factorといいます。
Bubble Factorは単純に言えば、「オールインを避けたい程度」を示すものです。Bubble Factorが高いほど、そのプレイヤーのオールイン範囲は狭くなります。
また、オールインによる必要な勝率は以下の式で定義されます。

Bubble Factor = オールインに負けた時に失う賞金期待値 / オールインに勝った時に得る賞金期待値

必要勝率 = Bubble Factor / (Bubble Factor + 1)

こちらのグラフはPokerStarsのイベントを例にBubble Factorの平均値を残りプレイヤー数に応じてどう変化するかを表しています。

Bubble Factorはトーナメントスタート直後から徐々に上昇し、入賞がかかるバブル前と大きいプライズジャンプのあるファイナルテーブルで大きく上昇しています。

先ほどの前章と同じシチュエーションで今度は1位と8位のプレイヤーを例に見てみましょう。

8位のプレイヤーの必要勝率
前章の計算結果より、
Bubble Factor = $274.5 / $187.7 = 1.46
必要勝率 = 1.46 / (1.46+1) = 59.3%

1位のプレイヤーの必要勝率
1位のプレイヤーがオールインに勝った場合、残り8人となり、賞金期待値とスタックは以下の通りになります。

例3: 1位のプレイヤーが勝った場合

①1位のプレイヤーが勝った場合
スタック+800点
賞金期待値+$91.3

②1位のプレイヤーが負けた場合(前章例2より)
スタック-800点
賞金期待値-$100.9

①②より、
Bubble Factor = $100.9 / $91.3 = 1.11
必要勝率 = 1.11 / (1.11+1) = 52.6%

以上より、同じポット額をプレーしていてもスタックによって
8位のプレイヤーの必要勝率は59.3%となります。
1位のプレイヤーの必要勝率は52.6%となります。

★結論
ICMに基づく賞金期待値を最大化するためには、Bubble Factorから計算された必要勝率を満たすレンジでオールインを行うことが重要です。

この必要勝率の差はわずかに見えるかもしれません。
しかし、例えば
上位9.2%(88+,AJo-AKo,ATs-AKs,KQo,KJs,KTs,QJs)のレンジでオールインされた時、勝率が59.2%を満たすハンドはAKs、QQ、KK、AAのみです。。
※実践では、ポジションによってブラインドやアンティがポットに加わるため、勝った時の賞金期待値が増加し、必要勝率は低くなります。
ハンドvsレンジの勝率を見るアプリはPokercruncherがおすすめです。

(おまけ)GTO wizardでの活用方法

GTO wizardに記録されているシチュエーションではBubble Factorをポジション別に確認することができます。契約をしている方は、ぜひ活用してください。(MTT Premium $89/month 以上で確認できます。)
以下のシチュエーションにおいて、COvsBBを例に見てみましょう。CO側のBubble Factorは1.95なので、必要な勝率は1.95/1+1.95=66%です。一方で、BB側のBubble Factorは1.07であり、必要な勝率は1.07/1+1.07=52%となり、両者の間に大きな差があることが分かります。Bubble Factorを確認しながらソリューションを見ることで、感覚が身についてきます。GTO wizardを契約しいてる方へおすすめの機能です。

最後に

トーナメントのバブル周辺で、
オープンレンジを極端に広げるチップリーダーと、そのプレーに対応できずフォールドしすぎるプレイヤーの構図がよく見受けられます。
双方のプレーは均衡から大きくずれおり、こういった状況では必要な勝率が満たされるレンジを基準にアクションを取ることで、賞金期待値を向上させることができます。
皆様がトーナメントをプレーする際に、この記事が参考になれば幸いです。

参考

参考に記事で使ったツールを紹介します。
-GTO wizard
MTT Premium以上のプランでICMを加味したソリューションが見られます。(2024/3時点)
-ICMizer
ICM計算ツールです。
-Pokercruncher
レンジvsレンジの勝率やハンドvsレンジの勝率が確認できます。


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