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人生の選択

※即興で書いた2人声劇用台本。著作権は放棄しておりませんので、もし演じてみたい方がいらっしゃったらご一報ください。約4分。

登場人物

ゆかり:仮死状態。
神様:万物を司る神様。

神様:ゆかり……目覚めなさいゆかり……
ゆかり:う、ううん……はっ!ここは一体!?
神様:ここは死後の世界です。そして私は神。
ゆかり:ええっ!?死、死後の世界……!?ということは、私……死んじゃったの……?
神様:はい。
ゆかり:そ、そんな……全く記憶がない。
神様:あれだけ衝撃的な死に方をすれば、そうでしょうね。
ゆかり:えっ、私、そんな死に方を?
神様:それはもうすごい死に方を。
ゆかり:教えてください!一体私はどうやって死んだんですか!
神様:えー言うの?
ゆかり:急に馴れ馴れしい!
神様:だってなんか私の理解の範疇を超えててとても口にできないって言うか。言ったら傷つきそうだし。
ゆかり:気遣ってくれてるのかもしれないけどめっちゃくちゃ気になるじゃないですか!
神様:ほら私優しいから……。
ゆかり:優しいならむしろ教えて!?
神様:さて、今のあなたには2つの選択肢があります。
ゆかり:そらされた!
神様:ひとつ、記憶も姿もなくし新しい生物として生まれ変わるか。ふたつ、周囲の人間の記憶をそのままにすることを条件に生き返るか。どちらにしますか?
ゆかり:えっ!?生き返るって、そんな、できるの?
神様:私神様ですから、なんでもできますから。
ゆかり:じゃあ2つに絞る必要ないんじゃ、
神様:その方が盛り上がると思って。
ゆかり:人間で遊ぶな!
神様:まぁ、厳密に言えば今あなたは仮死状態なんです。生死の狭間なんです。だから選べると。
ゆかり:じゃ、じゃあ生き返りますッ!
神様:えー…。
ゆかり:当たり前じゃないですか!
神様:マジで言ってる?
ゆかり:マジですよ!きっと私が死んだこと、両親は悲しんでるはず!
神様:……もし、悲しんでいなかったとしたら?
ゆかり:!?
神様:可能性の話をしたまでですがね。もしもあなたの両親が、悲しんでいなかったとしたらどうします?
ゆかり:それって、どういう……。
神様:生き返ることの条件に、「周囲の人間の記憶をそのままにする」って言いましたよね?なんでそれが条件になっているか、わかります?
ゆかり:……わかんない。
神様:あなたに対してよろしくない記憶を持っている可能性があるということです。
ゆかり:よろしくない記憶……?
神様:例えばそう、昔意気揚々と生き返った少年は、自分が両親から虐げられていた記憶を失っていました。結果、再び両親から虐げられる生き地獄を味わうことになったのですよ。
ゆかり:……。
神様:私だってそんな惨たらしい光景はもう見たくないわけです。神様の割には優しいでしょ?
ゆかり:あ、はい……。
神様:まぁあなたの家庭環境などを知っているわけではありませんので何とも言えませんが。さて、どうします?
ゆかり:……でも、私、生き返ります。
神様:ほう?
ゆかり:パパとママがもし私のこと嫌いだったとしても、私はパパとママに会いたい!そしてそれ以外にも会いたい人がたくさんいる!私はまだ、死にたくない。いや、死ねない!
神様:やれやれ、今時珍しく随分図太い魂さんだ。じゃあ生まれ変わる方向で手続きするからちょっと待っててね。
ゆかり:魔法とかじゃなくて手続きなんですね……。あの、最後に一ついいですか。
神様:何です?
ゆかり:やっぱりものすごく、ものすごく気になってるんです。私は一体、どうやって、死んだんでしょうか。
神様:しつこいねぇ。
ゆかり:お願いします!教えてください!せめて自殺か他殺かだけでも……!
神様:う~ん、あれは……自殺かなぁ。
ゆかり:え……!?
神様:本棚の奥に隠してた大量の成人向け同人誌の山と、成人向けの原稿をしているところを見られて、あなた自身が部屋の窓ガラスに頭を突っ込んだんですからね。自殺の分類かなぁ。
ゆかり:…………………。ミジンコ、とかになれますか。
神様:オススメしときます。

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