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チックの復讐

※即興で書いた2人声劇用台本。著作権は放棄しておりませんので、もし演じてみたい方がいらっしゃったらご一報ください。約5分。

登場人物

・童話作家
・チック:童話の悪役
・童話作家の妻(チックと兼任でもよし)
※5分ぐらい

妻:あなた、まだお仕事なさってるの?
作家:うん。今ちょうど筆が乗ってるところなんだ。
妻:昨晩もそう言ってしっかり寝ていないのに。
作家:あはは……そうだったね。もう少しだけ書いたら、寝ることにするよ。
妻:そうしてください。うふふ、今度はどんな物語が出来上がるのかしら。
作家:それはきみにも秘密かな。
妻:ええ、楽しみにしていますわ。それではお先に、おやすみなさい。
作家:ああ、おやすみ。

作家:さて、もうひとふんばり、がんばろうかな。
チック:……(小さな声で)おい。
作家:ん?今何か聞こえたような。
チック:おいって言ってんだよ、このウスラトンカチ!
作家:わあっ!だ、誰だ!?
チック:誰だぁ?まさかお前の口からそんな言葉が出るとはなぁ。オレさまの顔を覚えてないわけがないだろ?よくみろ!
作家:きみは……僕が書いている童話の……!
チック:そうさ!悪役のチックだ!
作家:そんな、まさか、僕はいつの間にか寝てしまったのか?夢でも見てるのか?
チック:ひっひっひ、夢ならどれだけよかっただろうなぁ?ええ?なんせお前は、これからオレさまに復讐されるのだ!
作家:復讐だって?
チック:ああそうさ。いつもいつも物語の中で酷い目に遭わせやがって!今日という今日は我慢ができない!だからこうしてきてやったというわけだ!覚悟しろ!
作家:復讐って、何をするつもりなんだ!?
チック:わかってるだろ。もちろん殺すのさ!
作家:殺す!?そ、そんなことをしたら、お話が書けない!きみのお話ももう書けなくなるぞ!
チック:ふん、どうせ次の話もオレさまがひどいめにあって、主人公のあいつに懲らしめられるんだろ?そんな物語が続くくらいなら、お前を殺してこの物語を終わらせてしまったほうがましだ!
作家:待ってくれ、きみがそんな風に思っているなんて知らなかったんだよ。まずそれを謝りたい、許しておくれ。
チック:……ふ、ふん、謝ってすむと思うなよ。オレさまは執念深いんだ。
作家:でもね、僕はきみのことをとても大切に思っているんだよ。
チック;なに?
作家:きみが悪だくみをするから、物語が動き出すんだ。きみが悪だくみをするから、主人公がかっこよく見えるんだよ。そしてきみはいつも悪だくみを諦めない。反省しない。だから僕は物語を綴ることができるんだ。
チック:そ、それは、そうだけれど……。
作家:それからね、きみにみせたいものがあるんだ。こっちへおいで。
チック:なんだ?
作家:今書いている新しい物語さ。
チック:ふん、どうせまたオレさまが……。
作家:もちろんそうさ。きみは僕の物語に欠かせないからね。またきみは悪だくみをする。サンタさんが町のみんなに用意していたプレゼントを、全部横取りしようとするんだ。
チック:そりゃ、オレさまは「悪い子」だからな。サンタがオレさまにプレゼントを用意してくれてるはずがないんだ。
作家:そう、きみはそう思った。けれどもね、主人公に懲らしめられた後、きみはサンタさんからプレゼントをもらうんだ。
チック:ええっ!どうして!?
作家:ふふ、気になるかい?
チック:もう、焦らすなよ!
作家:サンタさんはね、きみが「諦めない強い子」だと見抜いたんだよ。やっていることは悪いことでも、それは自分のことを認めてもらいたいからだって、わかっていたんだ。
チック:!
作家:きみが悪いことを企むのは、自分のことを認めてもらいたいからだろう?わかるよ。きみを作ったのは――この僕なんだから。
チック:う、うう……(少し泣き出す)
作家:どうかな?まだ僕に復讐したい?
チック:(鼻をすすって)ふん!今回のところは勘弁してやる!でもまたオレさまをぞんざいに扱うことがあったら、また復讐しに来てやるからな!
作家:そんなことはしないさ。物語は全部、僕が書いているんだからね。

妻:あなた、まだお仕事なさってるの?
作家:うん。今ちょうど筆が乗ってるところなんだ。
妻:前もそう言ってしっかり寝ていなかったのに。
作家:あはは……そうだったね。もう少しだけ書いたら、寝ることにするよ。
妻:そうしてください。うふふ、今度はどんな物語が出来上がるのかしら。
作家:それはきみにも秘密かな。でもこれだけは言える。またチックの仕業さ。
妻:うふふ、楽しみにしていますわ。それではお先に、おやすみなさい。
作家:ああ、おやすみなさい。

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