『万雷を望んで』公演パンフレット
先日は、劇団ノモ第一回公演『万雷を望んで』にお越しくださり、誠にありがとうございました。
本記事では、劇場にお越しくださった皆様に向けて、キャストインタビューと演出インタビューを公開しています。
長い記事にはなっていますが、よろしければ興味のある部分だけでもご覧ください。
キャストインタビュー
(回答:蟹江、奥林、村上、下崎 質問:塚原)
Q1.お笑いをやってきた中で初めての演劇ということでしたが、いかがでしたか?
蟹江 丁度演劇とコントの違いみたいな議論をよく見てきたんですが、やってみたら、何も一緒じゃないという事がよくわかりました。見てる分には同じに見えるかもしれないけど、やってみたら全然違う。色んなライブに出た時に、演技うまいとか言って貰えることもたまにあるけど、そんなことなかったと痛感しました。
奥林 本当にそう。コントって、言葉を届ければ完成する側面があると思っていて。セリフを聞かせた方が良い、というか。演劇はそうじゃなくて、感情を届ける必要があるから、そこが違うし、難しい。まずキャラクターが居て、その奥に自分がいる。そういった出力はお笑いではしたことが無かったから、めっちゃ難しかった。
--下崎と村上は?
下崎 感情と行動を一致させて、照らし合わせて演技するってのが本当に難しくて。そこが今までとはやっぱりちがうなと。
村上 演劇とかを観た時に、「自分がやったほうがいいだろ」って思うことがあって。なので自分がやる側に回れたのは良かったですね。ただ、今回は割とハマリ役をもらえたので、逆に全く違う役をもらってたらどうなるんだろう、ってのは思ったり。
--なるほど。総じてやっぱり演劇とコントそれぞれの難しさみたいなものは実感することになったんですかね。
奥林 ただ一応言っておくけど、コントもめっちゃむずいからね。コント頑張ってきた中で改めて演劇やったらむずかったよってことですから。これちゃんと書いておかないと(笑)
Q2.台本については何か思うことはありましたか?
村上 蟹江くんの設定案が採用されなかったのが嬉しかったです。選ばれてたら悔しいので。
--(同期だなあと思っている塚原)
村上 最初もらった時はひより役だったので、三河と付き合ってる役を演じるのがすごく楽しみでした。結局はやらなかったけど。大学お笑いの設定に関しては、これ大学お笑いの人たちがたくさん観にきてくれるだろうからちゃんとやらなきゃなあって一層思いましたね。
奥林 やめてくれ~って思ったね(笑)。自分がしてきた苦労と重なる部分があったし。三河みたいに、ネタが書けると思ってた先輩が先に卒業しちゃっていなくなったりとか、湯島みたいに、同期の中では全部俺がやっていきたいと思っていたときもあったから。その分気持ちがきつかった部分はあったかな。全然変な台本を送ってくれて良かったのに!!
--すまんね。下崎は?
下崎 私って下崎家の中ではわりと面白いと思ってたんだよね。でも上には上が居て、そういう悔しさとか、圭ちゃんを見ていて何もできないつらさとか、葛藤とか、そういう苦しさがあって、台本とはいえむずがゆい思いをしたかなあ。
--なるほど。
下崎 うん。
--蟹江は?一応主演という形ではあるけど。
蟹江 生々しいな、ってのが感想ですかね。生々しすぎる。このメンバーの皆に感情移入できるな、と。三河のセリフでも、共感できる部分もあるし、否定したい部分もあるし。観客みんな傷つく可能性ありますよ?(笑)
ただ、「三河圭吾」っていう人物を深めていったことである種遠くから眺めることができるようになって、逆に安全にはなっていきましたね。
--人物理解という点は意識的に沢山やらせてきましたが、どうでしたか?
蟹江 難しかった。初めて台本を読むってのがこういうことなのか、って思いましたね。それに加えて、自分が三河を解釈しても、それをうまく表現できていないっていうのがすごく悔しかったですね。
奥林 そうなんだよ!本当に!そうなんだよ!!分かってくれ優!!
--じゃあやれよ、って僕は言うだけですからね。
奥林 それが演劇の難しいところだし、楽しい所だなと。
--村上は楽しかった?
村上 楽しかったですね。何かを演じることは元々好きでしたし、それをちゃんと見てくれる人がいるってことがうれしかった。植野なら何ていうのかとか、どう行動するのかとかを考えて、それがハマったときには快感を覚えましたね。楽しかった。
--よかった。蟹江はなにか思うところはありますか?
蟹江 それで言うと、楽しいとは思いませんね。
--えぇ!?
蟹江 いや、面白くはある。面白いという思いはあるけど、楽しい、はない。そんな気楽にはなれない。こういう演出があるのかとか、こういうセリフにこんな意味があるのか、といった意味で、世界が広がる感覚がありましたね。
奥林 ローグライクゲームみたいだ。
Q3.演劇をやってみてお笑いへの向き合い方は変わったりしましたか?
村上 わかんなくなってしまいましたね。(お笑いで)プロになんてなれるわけ無いだろ、とか思ってたときにお話しを頂いて、演劇やってみたら演劇楽しいんかいってなっちゃいました。単純に選択肢が増えちゃって、マジでどうすればいいのかわかんなくなっちゃいましたね。
--まぁまだ二年生だから。ゆっくり考えな。
奥林 ほんとうにそうだよ。蟹江見てみ??蟹江お笑いやるために休学したんじゃなかったの?
蟹江 それで言うと俺は、お笑いやりたいなと思いましたね。演劇ももちろんおもしろいんだけれど、一番はお笑いだなと再認識しましたね。
--理由は?
蟹江 うーん…やっぱり、笑わせたいってのが一番自分の中であるなって。演劇をやっていく中で自分の一番の目標を考え直した時に、ずっと目標にしていたのは単独公演として、お笑いとして完成したコントライブをやることだってのを再認識して。ちょうどノモとパンダ博士*がかぶっていた時もあったので、その期間を通して色々考えることはできましたね。
(*「いいね、パンダ博士」。蟹江と村上が参加したコントライブ。)
村上 確かに、パンダ博士が平行しててよかったなと思います。ノモは塚原さんが作ったものをやっていたけど、パンダ博士と平行する中で、自分が作ったものをやりたいなと思いましたね。だからこそ、ノモでネタを考える時はみんなでできて楽しかったし、元々は自分のアイデアから始まったものをできてよかった。ネタ考える時間が楽しかった。
奥林 初稿と比べると、後半を大分俺たちの意見で変えちゃって申し訳なかったね。
村上 いや、それはうれしかったです。変えて欲しかったというか、こんなに先輩とか、面白い人がいるなら、色々皆で言いながらやりたかったので。
--そう。よかった。下崎は?
下崎 うーん……
奥林 どうなのよ。お笑いもやって、他のサークルもやって、教員免許もとって、んで今は社会人やりながら演劇もやって。手広くやってるなと思うけど、自分がやってみてどれが一番やりたい、とかある?
下崎 それで言うと、やりたいことは見つかったかも。自分の中でふんわりではあるけど、子供の前でやりたい、って思い始めている。その中には自分が表現をしたいっていう思いもあって、けどその表現を通して自分が知識を与えたいとかではなくて。子供が自分のやりたいことを見つけることができる表現をしたい、と思ったかなあ。小道具のおやき作ってるときすごい楽しかったし。
--なるほど。下崎らしいと言えば下崎らしいですね。奥林は?
奥林 いままでは、funnyであればいいというか、笑い声が返ってくれば正解、という生き方をしてきた。演劇をやる中で色々考えても、俺が描きたいものは変わらない。人間は笑顔が一番似合うと思っているから。人間にはこうあって欲しい、ってのが笑顔だった、ってのは改めて認識したし、一層お笑い芸人になりたくなった。マルチタレントとかではなくて。
Q4.見てくれた方にコメントをお願いします。
下崎 『万雷を望んで』にお越しいただいたみなさん、ありがとうございました!!小鳥遊ひよりの成長と、みんなへの愛を見届けてもらえて幸せでした◎
結局、圭ちゃんとのデートはどこに行ったのか少し気になりますね…!!笑
蟹江 ご来場いただきありがとうございました!機材トラブルやお互いの少しのミス、アドリブなどがあり、毎公演違った感覚でした。その分、それぞれの公演にしかない良さがあったと思います。ノモを見にきてくださり、ありがとうございました!
奥林 公演だけでなく、パンフレットもご覧いただきありがとうございます!その姿勢のままおくばやしのネタもチェックしちゃいましょう!【https://youtube.com/@okubayashi?si=cOld2xl0AXgvAI4S】
またどこかで!よろしくお願いします!
演出インタビュー
(回答:塚原 質問:奥林)
Q1.お笑いサークルの話にすることに決まったタイミングはいつでしたか?
塚原 そもそも劇団ノモが発足したのが今年(2023年)の1月でした。そこから台本案をメンバーから募集したり、自分でも色々考えたりしたのですが、うまくまとまらず…という期間が長くありました。当時は就活とかも頑張っていたので、就活とかを絡めた台本を模索していた時期もありました。
『万雷』の設定案にちゃんと決まったのは7月です。それと、劇中でアレをやろうと思ったのもそのタイミングですかね。いわゆるテアトロコントにしなかった理由としては、やっぱり演劇をメインでやりたかったですし、コント集団は大学お笑いに既にいるので。そこをわざわざやる必要は無いと思いました。
Q2.大学お笑いの話しということでしたが、アレを一本やりましたよね。
塚原 劇中劇です。あくまで。
Q3.アレをやることに対する怖さとかはありませんでしたか?笑っていい空気感ができちゃうと、ノイズになり得ると思いますが。
塚原 劇団とはいえ、お笑いサークル出身者で構成されているので、アレを求められているだろうという気はありました。見に来てくれる方も大学お笑いの関係者が多くなると思いましたし。
それと、ストーリーに説得力を持たせたかったという思いが強くありました。どうせお笑いの話をやるのであれば、実際にネタを見て貰う方が説得力が出るだろうと。ネタが終わって割とすぐにシリアスなシーンを用意したので、僕の中ではノイズになるかもしれないという心配はしてなかったです。
Q4.五人のネタって考えるの難しいんだけど?
塚原 すみません……….けど、いいネタにはなったんじゃないんですかね。実際、見に来てくれたお客さんも笑ってくれましたから。
Q5.お笑いサークルが舞台ですが。実体験をもとにしているところはありますか?
塚原 蟹江や村上、奥林がちゃんと大会で負けてるところですね。最初に台本を渡したときにすごく嫌な顔をされました。
Q6.大会で負けたということが話のきっかけになるのかなと思うのですが、演出上はどのようなことを意識していましたか?
塚原 そもそも人生で色々競争をしていくと、勝てる機会ってのは少ないわけです。どこからを勝ちとするかは人によって異なりますが、それでも常に勝ち続けてきた人ってのは多くないと思います。そういう多くの人に、自分が負けた出来事とか、そのときに感じた劣等感を思い出して欲しいと考えて演出を付けました。そっちの方が、三河や湯島に共感しやすくなると思っているので。
Q7.演出についてですが、湯島が死んでからは物を触れないという制約が見えました。その中で、最後には湯島と三河の握手のシーンがある。そういった演出を入れた理由はありますか?
塚原 元々、テーマの一つに「手」というものがありました。『万雷を望んで』というタイトルも、「万雷の拍手」という慣用句から拝借していますし。お笑い芸人は拍手笑いを欲しがっている、という点からこのタイトルになっています。
そのため、手を使った演出を入れたかった。なので、舞台控え室のシーンと最後の決別のシーンでは三河と湯島に握手をさせていますし、植野と小鳥遊の喧嘩のシーンでは机を叩く。三河は自分の書いた台本を手で握り潰してしまう。そういった演出を入れました。それに、観客の皆さんにも「ありがとうございましたといったら拍手をしてください」と伝えたりしたり、フライヤーにも拍手をしている手が描かれていたり。「手」を通した他者との関与ってのをどうにか作れたらなあと思っていました。
Q8.他にもテーマはありますか?
塚原 「死者が生きている私達を救うことができるのか」とか、「才能とどう向き合うのか」とか。湯島はこの二つのテーマを共有していますね。
Q9.なるほど。色々と考えているんですね。ちなみに、公演に含まれていた隠し要素みたいなのってあったりしますか?
塚原 隠し要素、として用意したわけではないのですが、思い返してみて遊べる、というものはいくつかあるかもしれないので列挙してみます。
・蝉の鳴き声の種類。
→何がどの日付の時に鳴いていたか、覚えていますか?
・折木が紙を投げるシーンでは、実際に出演者が今までやってきたネタの台本を使っています。
→折木がネタのタイトルを読み上げるのも、ちょうど折木がそのとき持っていたネタタイトルをそのまま読み上げています。誰の何のネタか、思い返してみると楽しいかもしれませんね。
・折木栞以外のキャラクターのテーマ
→考えてみるのも楽しいかもしれません。推測難易度は、簡単なほうから「小鳥遊→植野or三河→湯島」といった所でしょうか。こちらは、記事の最後に答えを載せておきますね。
・アレをやるときの出囃子
→大学芸会Dブロックの音源を使っています。これも実際に流したときにメンバーから嫌な顔をされました。
・客入れの音源
→色々とテーマと重なる点を用意しています。これも最後に載せておきましょう。
・湯島から三河への最後のセリフ
→舞台上では無言ですが、ここは台本上はちゃんとしたセリフとして書かれています。何を言っていたのか、これも最後に書いておきますが、ここは想像の余地があると思います。
Q10.イチオシのシーンなどがあれば教えてください。
塚原 死んでいる湯島を三河が見ている冒頭のシーンですね。劇場に入って、照明を用意して、はじめて完成したと思っています。自分の想定以上に印象的なシーンになったな、と。
Q11.湯島のセリフには、あまり聞いたことの無い言い回しや、言い方があったと思いますが、意図などを教えてください。
塚原 日常会話の中ではあまり出てこない言葉をあえて使うことで、湯島の特別感を演出したいと思っていました。「まなざす」とかは、ある範囲の哲学の中では比較的使われていますが、日常的にはあまり聞かない言い方でしょう。こうした単語レベルでの言い方や、最後の湯島の独白に強く対比的な言い回しを用意したことで、少しでも湯島の特別感がにじみ出ればな、と思っていました。
Q12.この物語の主人公は三河と湯島、どちらですか?
塚原 僕にもよく分かっていません。出ている時間の長さとして見れば三河なんでしょうけれども、湯島が自分の執着と決別する物語として読むこともできると思います。そういう意味で、主人公が誰かにはこだわっていません。
キャラを作る段階で、折木以外の全員を感情移入の対象にしようと思っていました。なので、植野や小鳥遊を含めて、自分が一番感情移入できるキャラを中心とした物語として考えて頂けると幸いです。
Q13.ありがとうございました。最後に見てくださった方にひとことお願いします。
塚原 まずはご来場いただき、本当にありがとうございました。
今まで様々な経験をしてきて、勝ったり、負けたりと、いろいろなことがあなたの人生にもあったと思います。
物語の中でキャラクターが決めた選択を、それを観ていたあなたがどのように解釈して、あなた自身の人生にどのように繋げるのか。それを少しでも考えて頂けたのであれば、脚本を作った身としてはとても嬉しいです。
そして、劇団ノモはお笑いのプロを少しでも目指す人達を集めて結成しました。彼らに話しを聞く限り、どうやらこの活動は彼らのお笑いに対する姿勢を考え直す良いきっかけにもなっていたみたいです。
よろしければ、彼らのお笑いの活動も応援して頂けますと幸いです。どうぞ、よろしくお願い致します。
ここまでご覧頂きありがとうございました。
以上でインタビューは終了となります。
劇団ノモ、ならびに劇団ノモメンバーの活躍にご期待ください。
Q.14 各キャラクターのテーマを教えてください。
三河→劣等感
湯島→自己と他者
植野→真、芯
小鳥遊→愛
折木→(強いて言うなら)中庸
Q.15 客入れの時に流れていた曲を教えてください。
1.アンノウン・マザーグース/wowaka(ヒトリエ)
2.楓/スピッツ
3.八月、某、月明かり/ヨルシカ
4.ノンフィクション/平井堅
5.転生林檎/ピノキオピー
6.エピゴウネ/日食なつこ
7.ひまわり/米津玄師
8.MOTHER/平沢進
9.桜流し/宇多田ヒカル
10.死神/大森靖子
OP
心呼吸/ヒトリエ
ED
リトルクライベイビー/ヒトリエ
Q.16 ラストシーンにおいて、湯島は三河に何と言っていましたか?
湯島「……俺は、見れる範囲で、お前らのことを見ているから。何にも力にはなれないけれど、お前らが俺を越えて、活躍してくれると信じているから。期待しているよ。…じゃあな。圭吾。ごめんな、これからを頼む。」
これでほんとうに終わりです。
それではみなさま、またいつか。
くれぐれも、熱中症にはお気を付けください。
劇団ノモ主催 塚原 優
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