小夜子の書き出しブックトーク【そして、バトンは渡された】
『そして、バトンは渡された』 瀬尾まいこ・作 (文春文庫)
本稿は2024年7月に下北沢駅前劇場で上演する『ANGERSWING/アンガーズウイング・アンガースウィング』に寄せて、“書き出し”の一文をご紹介するブックトークです。
ANGERSWINGのキーワードを拾って、「そういえばあんな本読んだなぁ」「読もうと思って読んでなかった」「これを機に出会った」という作品たちを、それぞれの冒頭1行と共にご紹介します。
今回のテーマは「家族」。第二弾。
書き出し文はこちら。
✤✤✤
困った。全然不幸ではないのだ。
✤✤✤
2019年本屋大賞受賞。映画化もされた本作をご存じの方も多いでしょう。
前回に引き続き、テーマは「家族」。
ベタですが、選んでしまいました!
そもそもブックトークの企画を貰ったとき、「読んだことある作品で」というのが前提だったのですが、これを機に新規の本を選びまくって自らの首を締めている計画性のなさ…。
本屋大賞は数ある賞の中でも特に信憑性の高い賞だと思っているし、しかもあらすじもすごく魅力的な本だなぁ、と話題になっている当初から思ってはいたのですが!いかんせん!
ひねくれものが故、話題の図書に飛びつけない…!
(きっと一定数いますよね、そういう人)
だから気になりつつもかなり温めてしまっていました。
大人たちに見守れて育ってきた優子
納得の面白さでした。
書き出しがもう絶妙ですし。
あと、嫌な奴が出てこない。これは大事!
主人公・優子には、大人の都合により母2人、父3人という5人の親がいるのです。
担任の先生から「その明るさは悪くないとは思うけど、困ったことやつらいことは話さないと伝わらないわよ」と心配されて困ってしまうくらい、それぞれの親たちに愛されてきたと感じている優子。
優しい親ばかりでいじめられもせず、良かったなぁ、と思う反面、それでも子供の頃から親が2回も3回も変わったら全くのストレスフリーとはいかないでしょう…
そういう意味で、日頃から優子を気に掛けてくれる、この担任の向井先生がすごく素敵な存在でした。
担任として大人として、優子に適切な心配をする。親たちからの愛情はもちろんですが、こういう身近な大人から気にかけてもらえるって、子どもにとってとても重要なことだと思います。
大人の責任を全うする向井先生が私はすごく好きでした!
映画版はというと…
さてさて。
本が先か映画が先か、観る順番を迷っている方。
まだ映画を観ていないなら、あなたは幸せです。
この作品に限ったことではないけれど、絶っ対に原作から先に読んでくださいね。
ちなみに、映画には向井先生が出てきません!!!
なんかありがちな、表面的な心配をする担任は出てきますがそれは断じて向井先生ではないので…
ラストも違うし…
キャストが好きな方はキャスト目当てで観るのは良いかもしれませんね!
でも本を先に読んでください。
今回はこの辺で!
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