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20周年特別インタビュー(16)夏目雅也×黒木陽子<後編>

インタビュー前編からお読みください。>

衛星旗揚げ前の話をしたところで時間が来てしまったので、夏目さんが『プロトタイプ』衛星公演をご覧になった後、AKIKANにてインタビューを再開。その場でお客さんに挨拶をしていた蓮行も途中、ちょっとだけ入って来ます。(あと、アルコールも少し入っています。)

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『保科仙吉』以降・・・

(過去の上演チラシを見ながら)

黒木:『総理・保科仙吉』までお話しいただきましたよね。

夏目:はい。それで、次の『サロメ』(96年6月『超贋作サロメ〜冒涜版』)は…、全然関わってなかったですね。劇団員としては『保科』ぐらいまでしかいなかった。でも、その後も…結構一緒にやってるんですよ。

この次の『ガリバン』(96年9月『宇宙巡査部長ガリバン』)の時は、岡嶋さんの家に発電機(※インタビュー前編参照)を取りに行くっていう仕事だけは、僕がしたんです。それで、発電機を持ってきたものの、使い方がわからなくて…。照明の小柴くんと試行錯誤しながら何とか繋いで。「よっしゃ!」て電源を入れた瞬間に、吊ってたパーライトの玉(※電球部分ですね)が、全部割れた。…100Vと200Vが両方出るようになっていて、たぶん200Vの方に繋いじゃったんだと思うんですけれども。…でも、まあガリバンもそれだけしかしてないです。


大騒動!衛星ボックス事件!

ーーその後、蓮行がやっていたバンド「心」の歌が今回の公演の客入れ音楽として流れていて懐かしかった、という話や『捕虜』の初演に出演されていた大畑えりさんの話、学生劇団入団合同説明会の話がなされました。

……そしていよいよインタビュー後半の山場、「学生部との闘い」のお話です。

黒木:『赤べこカマトト早急便』初演(97年6月)。私はこれを観て、衛星に入りました。

夏目:はい。……衛星ボックス事件っていうのがこの前にあってですね…。まあ、ちょっと公にはできないとは思うんですが。

黒木:はい。(いよいよ来たぞと思う黒木)


<!ーーここには載せられないような話をなるべくマイルドに書く1ーー>

劇団衛星は拠点を求めた。

はじめに、自治の風吹く某大学の片隅にボックス(プレハブ小屋)を建てた。

「それ、やっちゃダメですよね」

「ダメだねえ」

「まあ、なんでもありやったから・・・」 

<!ーーここには載せられないような話1終わりーー>


夏目:まあ、それで学生部がすごく怒ったんだよね。

蓮行:怒った!怒ったねえ!

夏目:それで、その場所は撤去することにしたんだけれども…。


<!ーーここには載せられないような話をなるべくマイルドに書く2ーー>

劇団衛星はその拠点を当局の指導により手放し、つぎに、学生自治が強く及ぶ土地に再度プレハブ小屋を建てた。しかし、なんやかんやあってその地の自治会と揉め、その地を去ることになったのだった。

(以下、夏目さんの言葉を抽出します。)

「最初はやりなよ!って言ったのに」

「当局からの圧力が」

「態度が豹変」

「吊るし上げられ」

「憤り、夜通し話し合って書いた声明文」

「火に油をそそぎ」

「『学生部からこんな手紙が届きました』」

<!ーーここには載せられないような話2終わりーー>


黒木:はー!私、部分的にしか知らなかったです。わー。それは…ちょっとその出来事について誤解していました。

夏目:まあ、それでボックス事件とかもありつつも、『赤べこ』の公演日を迎えることはできたんですが…。初日の朝、全部仕込んである状態のところに、学生部の人がやってきたんです。当時、衛星は公認団体じゃなかったから、「ボルゼロ(vol.0。潔癖青年文化団の前身団体)」の名義で、学生部から幕とかの物品を借りていたんですね。それで…学生部の人が会場にやってきて、「これ、劇団衛星だよね?劇団衛星には物は貸せないんで、貸しているものを全部返してください」って…。初日の朝に言われたんです。

蓮行:そんなことあったっけ?

夏目:ありましたよ!…で、しょうがないから、学生部に返して。…主に幕だったんですけど。

黒木:ええ!本番初日ですよね?…どうしたんですか?

夏目:どうにかしたんでしょうね…。布を買ってきて作って、みたいな感じだったと思います。その後もまあいろいろあって…。

それからしばらくして、別の団体のタタキ(※舞台美術を作成したりする作業です)を学内でやってたら、構内見回りで歩いていた学生部の人が僕の顔を見て、ツカツカツカって近寄ってきて…、「君なんかいつでも退学にできるんだからな」って言われたり。それからもう学生部には一切近寄れなかったです。

黒木:ひえええ!顔を覚えられてる…。私が入団したてで「なんか、フレンドリーじゃない劇団だな」とのんきに思っている間に、そんなことがあったんですね…。

夏目:もう、大騒動です。

黒木:大騒動ですね…。

夏目:でも、そう考えるとこの頃はまだ…ボックスを建てるとか、そういうことでつるんでたんですよ、蓮行と。夜中遊んだり、すごく盛り上がって声明文とかを書いてた。…でも、僕と蓮行だけじゃなくて、もうひとりかふたりいたような気がするな。…桐山くん(※既出、中野劇団の桐山さんです)かなあ。

ちょうど大学が独立行政法人になっていく流れの中で副学長制度が導入されるというので、大抗議運動が起こったことがあったんですね。それで、いろいろ頑張っている自治会もあるのに、そこ(※もめたところですね)は共闘しようとしないんですよ。それで、僕も憤って…。でも会議の場で危ない目に合って。こんな腕の太いパンクのお兄さんが「お前表に出ろや!」「いや、表には出ませんけど」って…。それから三年間くらいは、もうその周辺出入りするのはやめていました。

黒木:怖い…。ハードですね…。私はハードの何たるかを知らずに劇団員やってたなと、しみじみ思っています。

夏目:なんか、それなりに、ちゃんと…中からきちんと改革しようと思ってたんだよね。当時、吉田寮(自治会)はもう少し進歩的だったと思います。学校との交渉も一緒にやってましたし…。


その後〜蓮行モテ話について

黒木:その後は?

夏目:僕が最後に関わったのが…『水龍の纏』(98年6月)での舞台監督です。(チラシを見て)おお!照明を魚森(※照明家の魚森理恵さんです)がしてますね。舞台装置をなんと小早川(※音響の小早川保隆さん)がしてますよ。

黒木:この公演は楽しげな感じがありますね。私は衣装のお手伝いとのぼりの旗作ってただけですが。

夏目:あと田中遊(※正直者の会の田中遊さんです。当時は劇団員ではありませんでした)が怖かった。

黒木:怖かったですね。

夏目:ほんとこの当時、なんか田中さんに怒られてた。「舞監はそんなもんじゃない」って言われて。…これが最後ですね。

黒木:その後は夏目組に注力されていくんですね。この98年秋に、当時若手劇団の登竜門と言われた「扇町アクトトライアル'98」に、夏目組と衛星は参加することになります。(※他は南船北馬一団、清流劇場、芝居屋坂道ストア、三角フラスコが参加)

夏目:OMSのこの公演で、僕はいったん演劇活動をやめてしまった。アトリエ劇研での公演もしたけれど、フェードアウトして。その後5〜6年は、この界隈にいなかったと思います。大学を卒業して、何もせず…。びわ湖ホールの舞台管理に入ったから、こういう小劇場の活動からは離れてしまいましたね。

黒木:今日ご覧になった衛星の公演はいかがでしたか?

夏目:案外変わってないなって思いましたね。どうしてもドラムを叩きたがるところとか。

黒木:ちなみに、これは今までの先輩方にも聞いているんですが…。やっぱり蓮行の女性エピソードで大変だったこととかあるんですか?

夏目:19〜21歳くらいの蓮行さん…麻雀とかしてた時代ですけど、あれだけ女の子の話をしながら、麻雀もしてたんだなぁ。よく時間あったなあ。

〔夏目注※ちなみに、いつも蓮行が麻雀に加わるのは夜中1時とか過ぎてからで、それまでに女の子とご飯食べたり、家に送ったり、一通りすましてからだったのだと思います。(蓮行の名誉とアイデンティのために、と追記として…と、送ってくださいました。)〕

夏目:大変だったことは…。ああ(思い出す)、「あれは大変なんだろうな…」という話はひとつだけある。女の子の部屋から出てくるのを目撃したり。

黒木:ほほう!(ようやく蓮行モテ話が聞けたな…と嬉しい気持ちになる)

夏目:うーん。(過去の上演チラシを眺めながら)チラシを見ていると、あの時の蓮行のお気に入りはこの子だったんだなってわかりますね。でも、結局「ずーっとその人の話しかしてないな」っていう女性は…案外、別の人とあっさり付き合ってたりしてますね。

黒木:あら…。(なんか悲しい話を聞いてしまった)


現在の衛星について思うこと

黒木:今の衛星について、どう思われますか?

夏目:作品も面白いんだけれども…。はたで見ていて面白いことをしたな、と思うのは、このKAIKAを作ったこと、というか…、こういう場所があるっていうことかな。ここに集う人たちがいて…、それで蓮行さんの作品ももちろん面白いことになっていくんだろうけれど、場所を作って人が集まるという、そのこと自体が。

黒木:「場所のこだわりはない」って、3日前くらいに蓮行は言ってましたけど…、うーん。過去の話を伺っていると、そうなのかもしれません。

夏目:事務所をかまえたり、ボックスを建てたり…。いろんな騒動も起こしていく中で、そういう指向性が強いんだなと。こういう場にそれが結集しているように感じます。ずっと人が集まる場所を求めているんだなあと。

黒木:なるほど…。

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インタビュー後記

夏目さんが、私の全然知らない旗揚げ前夜とその後2年の話をしてくださって、私は、蓮行さんや植村さんらしいある部分がとても凝縮されているように感じました。しかも、それは私が「なんかわからんねんなー」と思っている部分だな…とも!はー。すごい。18年一緒に過ごしても、空白の2年は空白のままなんですなあ…。

でも、まあ、そして、そんな私や、夏目さんはじめ過去に関わってくださったいろんな方も含めて「劇団衛星」なんだろうな、太陽系みたいな感じじゃないか!と、私は思っております。おお。まさに衛星。

夏目雅也さん、お忙しい中お時間とっていただきましてありがとうございました!

ちなみに一番びっくりしたのは、蓮行さんが夏目さんはじめ男連中と毎晩集って麻雀をしたり熱く語っていたり、ということです。はー。「求む!賢い年下男性!」

劇団衛星の活動継続と公演の実現に向けて、みなさんのサポートを、ありがたく受け取っております。応援ありがとうございます。