「石榴」閉幕しました。そのいち。〜役者の事後紹介前編〜
どうも、劇団HEN/SHIN主宰のA-ta.です。
8/12~13に上演しました旗揚げ公演、「石榴」が無事に閉幕しました。
皆様のおかげで大成功で終わりました。本当にありがとうございます。
さて、公演終了からなんと2週間が経ってしまいました。
本当は終わってすぐ書こう!と思っていたのですが、時間は残酷ですね、仕事をしているうちにこんなに月日が経ってしまいました。ごめんなさい。
というわけで改めて「石榴」を振り返って、なんでしょうね、愛すべき日々の備忘録といいますか、書き散らしといいますか、雑感といいますか、裏話といいますか、まぁそんな感じでつらつらと色んなことを書いて行こうと思います。
決して人に見せられる文章でないことがこの時点で分かると思いますので、お時間がある方のみどうぞ気長にお付き合いくださいませ。
書き始めたら長くなってしまったので、まずは役者の事後紹介part1から行きたいと思います。
役者の事後紹介
本番直前、突然素敵な写真と共に役者紹介を始めました。
勝手に、私の、独断と偏見で。
それについて撮影時のエピソードと共にちょろっと書いてみたいと思います。あとは雑感も少々。
小野 千佳子——川合 星奈
まず写真に撮られるのが上手すぎてあまり素材の数は多くありませんでした。(もっと撮ってもらえばよかった)
世に出さないのがもったいないので、ここで色々供養します。
色んな意味で才能の塊ですよね。
そして私が大好きな一枚はこれ。
彼女の名誉のために言いますが、これは増田(金成役)のアイディアです。
やらされてるだけです。私も撮影時主演女優になんてことやらせるんだと思いました。
でもパッと言われてすぐ出来ちゃうのすごいですよね。
私のお気に入りショットです。
そんな彼女に選んだのは「素直」「激情」「無限」です。
まず素直については、その吸収力に由来します。
彼女は本当に、吸収力が高いです。見たもの、感じたものを素早く吸収します。そしてそれをすぐに自分の表現に乗せられる、優秀な役者です。
私は吸収力が高い役者ほどぐんぐん伸びていくと思っています。
これからも彼女が演劇を続けてくれるか分かりませんが、続けるとしたら、その演技に期待ですね。
続きまして激情についてです。
これはもう、「石榴」を観た方なら誰しも理解してくれるのではないかと思いますが、そのままの意味です。
あの狂気を感じる感情の出し方というか、持っていき方には本当に目を見張るものがありますね。
本番直前もずーっと集中モードで、声を掛けるのも息を吞むほどでした。
私はすぐ人を抱きしめがち()なのですが、本番前に抱きしめるのもドキドキしましたね。私のせいで集中切らしたらどうしよう…と思いましたが、力強く抱きしめ返してくれて安心しました笑
…でも今思えば、激情じゃなくて爆発でもよかったかもしれません。
最後に無限についてですが、これはおそらく少し説明が必要です。
そもそも私が彼女に最初に思い浮かんだ言葉は「貪欲」でした。
……ね、言葉として良くないでしょ、これ。だって七つの大罪じゃん。
だから別の言葉別の言葉と思って浮かんだのが、無限でした。
つまり、足るを知らないと言いますか、どこまでもどこまでも役にのめり込んでいく、まだ足りない、まだこんなもんじゃないという恐ろしいまでの向上心があるように感じたんですね。
訳あって彼女が1週間ほど稽古を休まざるを得ない時があったんですが、その間も彼女は自分なりに千佳子という役を練りに練り上げて来ました。
正直、ビックリしました。「コイツ…底なしか?!」と思いました。
大抵の役者はある一定のレベルまで行くと満足して、それ以降は自分の出来る範囲の安定した演技ばかりを繰り返すようになりますが、彼女は誰に言われるまでもなく自ら殻をぶち破ろうとしていたわけです。
自分で天井を作らないって、演劇だけじゃなくて人生においても大事ですよね。
年下だけど、尊敬します。
実は彼女、演技をするようになってまだ1年とか?役者やった回数で言えば、今回を除いて3回とか?
元々演技に興味があったとはいえ、短期間で目覚ましい成長を遂げてます。
役者やらない?と声を掛ける前、私は彼女に対して、器用で表現は上手だけど台詞を聞くのがとにかく苦手な役者だなという印象を持っていました。
だからもっともっと台詞を聞けるようになったら、素敵な役者に成長しそう!と思いました。声を掛けたのも、千佳子という役を彼女に託したのも、言ってしまえば全ては「彼女を育ててみたい!」と思った私のエゴでした。
彼女はありがたいことにそれに応えてくれて、約3か月もの間、今の私の可能な限り持てる全てをぶつけるに至ったわけです。
そうして、いざ蓋を開けてみると彼女が相手の台詞を聞き、それに合わせて毎回違う芝居をしているじゃありませんか。
それを見た時、演出として本当に涙が出るほど嬉しくなったのを今でも覚えています。
千佳子という役は、本当に、本当に難しかったと思うし血反吐を吐くような思いをたくさんしただろうと感じるんですが、私が望む以上に千佳子という存在を大きく昇華させてくれました。感謝。
伊東 聡一郎——狩集 俊哉
川合と対照的に、撮られ慣れてなさすぎるのが彼です。
おそらく彼は撮られるという意味ではまだ写真という文明に追いついていません。魂抜かれると思ってます。
せっかくなので、こちらも色々供養します。
増田が終始「狩集に取らせたいポーズがどんどん浮かんでくるんだよ…」って言ってて気持ち悪かったですね。
そして彼に選んだのは「純粋」「霹靂」「不撓」です。
まず純粋については、川合とも意見が一致してましたね。
彼自身、聡一郎を観た方からはおそらく想像出来ないような生態でして。
普段から純粋さ、ピュアさをすごく感じるんですが、演技においても同じです。
なんにでも染まってしまう、けれどもその純粋さゆえに芯の部分は何にも染まらない強さがあると言いますか。
ここで少しぶっちゃけますが、聡一郎に関しては私の中で具体的なモデルがいませんでした。
だから私も、手探りというか、正解が分からないまま、目指す終着点が分からないままに漕ぎ出してしまった舟、といった感じだったんです。
しかし最終的に彼は見事に聡一郎という役を捉えました。生み出した私ですら分からなかったのに、彼は一つの正解を導き出してしまったんです。
続きまして霹靂ですが、要説明ですね。
先ほども書きましたが、彼は役者としての姿と素の姿とのギャップがすごいんですね。だから初めて接した時、衝撃が走りました。「なんだこいつ?!」と。(いい意味です)
まぁ、いわゆる青天の霹靂ってやつですね。
あとはたまたまある日の稽古でとんでもなく雷が鳴って土砂降りの日がありまして。まるでSEを入れたかのように綺麗に彼の台詞の後に雷がドーーーーン!と鳴ったので、私の中で雷のイメージがあるのかもしれません笑
最後に不撓ですね。
これはもう読んで字のごとくですが、とにかく時間がかかったとしても分かるまで、出来るまで何度でも挑み続ける姿勢がまさに不撓不屈でした。
結構傍から見てるだけでも数々の壁にぶち当たっていたように思うので、彼自身の人知れない苦労はもっと凄かったんではなかろうかと思います。
…とつらつら書いてみましたが。
まだ彼を客席で見ていた頃の演技の印象は川合とは真逆でした。
それは、聞くことに長けていることです。いや、聞くことに長けすぎていたんです。
抜群の安定感があって、彼のシーンは安心して観てられる、本当に上手い役者だと思いました。
だけど、前に出るというか、主張するのが苦手なのかなという印象を同時に持っていました。なんというか、とにかくサポート役というか。
自分が中心になって芝居を進めないところがあるように感じて、もったいないなぁと思っていました。
なので川合の場合とは逆で、もっともっと前に出る、表現することに注力するようになったらより演技の幅が広がりそうだなと思いました。
ただし、その道はものすごく険しかったです。
私はどちらかというとなるべくロジカルに、感情のプロセスが分かりやすいように役者に伝わりやすいように演出し(ているつもりでござい)ます。
しかし、彼が思った以上に感覚で演技をするタイプだと分かってからは演出の付け方を一気に方向転換しました。
はじめは彼との間によく広大な宇宙を広げ合っていましたが、稽古を重ねるにつれ感覚というか、意識を共有している感じがありました。こうだよね、と言うとすぐにあ~となるような、そんな感じで。
そして驚くべきことに、本番当日ですらも彼の進化は留まることを知らず、あぁこの子は一体どこまで行ってしまうんだろう、と恐ろしささえ感じました。
そんな聡一郎が、皆様の心に刻まれたらこの上ない喜びです。
金成 芳雄——増田 承太郎
最もカメラマンの心を掴んだ男の登場です。
3ショット撮ったらもう我慢できずにすぐボケ始めるという有様。
色々見て行きましょう。
いやほんとに、おふざけ写真の方がいきいきしてるのすごい嫌でしたね。
刑事!金成!カッコいい!って感じで撮りたかったんですが。
でも楽しませてもらったのでオールOKです。
そんな我らが長老に選んだのは、「懇篤」「道化」「爛漫」です。
まず懇篤ですが、これは本当にそのままの意味です。
彼はとにかく親切なんです。優しい。いい人。繊細で色んな事に気が回りますし、聞き上手です。
なので彼の周りに人が集まるのは必然というか、愛されキャラであるのは間違いありません。
私は人生において圧倒的にヴィラン側だなって思いますが、彼は明らかにヒーロー側です。(どういう説明?)
次に道化ですね。これもそのままの意味です。
彼はすぐふざけます。毎秒とまではいきませんが、ボケないと生きて行けない性分のようです。
だから、ツッコミに忙しいんですね。私が。
ですが同時にムードメーカーなので、どんな状況でも暗くならず、落ち込み過ぎなかったのは彼のパワーのおかげだなとつくづく思います。
さすが人生の先輩ですね。ありがたいです。
最後に爛漫です。ごめんなさい、これもそのままの意味です。
彼がいるところにはぱっと花が咲く感じがするといいますか、周囲を明るくしているイメージがあったので爛漫にさせていただきました。
…なんか単純すぎてつまんないなあと思われるかもしれません。
しかもなんか、全然演劇と関係なくね?!大体俺自身のことじゃね?!とこれを読んだら彼は言うかもしれませんが、それこそが大切なことなんです。
演劇というか、稽古って、ずーっと芝居し続けるわけではないですよね。
基礎練等もあるし、休憩時間だってあるし。
そういう時間の雰囲気づくりって、実はものすごく大事だなあと痛感するんです。一応、私も役者をやっていたので、稽古場の空気が、雰囲気が、座組の全てに影響するって身に染みて分かっているんです。
だからこそ、彼には感謝しかありません。
演技に関しては、たしかにブランクがすごくて、本人も言ってましたが最初は完全にリハビリじじいでした。しかし、ある時の稽古からぐんと金成の断片を掴み始めまして。
そこからの集中力というか、迫ってくる感じから彼の真剣さ、ひたむきさがひしひしと伝わってきました。
彼からしてみると、金成という役はあまり特徴がなくて正直難しかったんじゃないかと思います。
だって彼は今まで、声を張り、全身を使って舞台を縦横無尽に動き回り、間と表情管理にその命を懸けてきた男ですから。
今回のようないわば掴みどころのない役はおそらく初めて。
私の中でも1つの挑戦でした。
そう、彼はおふざけ路線だけじゃなく、本当は真面目路線もいける実力者なのだと知らしめるための———
本番が近づくにつれて、その背中がお父さんのように頼もしく見えたのはきっと錯覚なんかじゃありません。彼はもう立派な座組の大黒柱でした。
「俺についてこい」
そう言わんばかりの気概を感じて、思わず武者震いしましたね。
最終的に感覚を完全に取り戻して、見事に金成を演じきってくれました。
やはり彼には劇場の空気を支配する力がありますね。観客を巻き込む力といいますか。大学時代、出会った頃から変わらない彼の強みだと思います。
また彼と、演劇出来ることを祈って。
私の愛が重すぎて特大ボリュームになってしまったので、今回はこの辺で。
次回は、役者の事後紹介part2でお会いしましょう。
ではまた。
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