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GrounddigginG : 03 「Music for Life」編

”GrounddigginG”は、GroundbreakinG収録曲のうち、ある特定の楽曲に惹かれた方向けに、媒体問わずそれと同じ系譜を持つであろう楽曲をいくつか厳選・紹介し、次なるdigへの道を示すことをコンセプトとした連載記事企画です。第3回は『GroundbreakinG BOFXV COMPILATION ALBUM』に収録されている「Music for Life」から導かれるdigへの道を紹介していきます。担当ライターはFALLです。

…はい、スタッフ内要望により、作者本人が担当するGrounddigginGです。

0. 「Music for Life」について

「Music for Life」は、2019年開催の「BOFXV - THE BMS OF FIGHTERS eXtreme Violence -」にて「コバコノカクレガ」チームから登録されたBMSです。作者はこの文章を書いているFALLです。
「コバコノカクレガ」はANKAKEさんを中心に結成されているチームで、この年が初出場。その後もメンバーを変えながら毎年連続で出場しており、近年の常連チームと言ってよさそうな程の活動実績を重ねています。
なお、このチームはANKAKEさんが主催する同名のリアル音楽イベントをルーツとしています。「まったりと、ゆったりと、しっとりと」に重点を置いたラウンジ色の強いイベントで、このチームもそのコンセプトを継承しています。
「Music for Life」もそんな背景を受けて作られた、ゆったりとしたテンポのポップミュージックです。ブラス隊が絡むバンドサウンドを基調に、歌声合成ツールUTAUによって紡がれた雨歌エルのボーカルが、音楽の素晴らしさを歌う――そんな作品です。

ジャンルとしてタグ付けられている「NEO CITY POP(ネオシティポップ)」は、2010年代後半頃から日本でやんわりと提唱され始めた音楽ジャンルです。明確な定義の無いジャンルなので線引きが難しいのですが、1980年代頃に流行したシティポップを現代版にアップデートした音楽という共通認識が大枠ではあると思います。ソウル、ディスコ、フュージョン、アシッドジャズ、ヒップホップ…などの要素を取り入れた、雰囲気としてはオシャレなポップとか言っておくのが妥当でしょうか。
「ところでじゃあ『シティポップ』とは何だ」という話になるのですが、こちらも明確な定義は無く、洋楽志向の都会的に洗練された音楽とかいうムード重視のふんわりしたジャンルになっております。ライター泣かせ。近年「山下達郎」や「竹内まりや」などのアーティストの昔の音源が海外で人気だという話題を見かけた方は多いかと思いますが、彼らは「シティポップ」によくカテゴライズされるアーティストの代表です。

さて、以上の前置きを踏まえて、「Music for Life」に惹かれた方が次に聴くべきであろう楽曲を5つ提示してみます。

1. cero - Orphans

いきなりライター=作者特権で、まずは制作中に参考にした楽曲のひとつからレコメンドします。楽器構成、ブラスアレンジなどから影響が伺えるのではなかろうかと思います。
ceroは日本の3人組バンドです。MVではもっと多くのメンバーで構成された楽器編成が伺えますが、このようなゲストミュージシャンを含んだ大所帯のアンサンブルによる多幸感のあるサウンドはこのバンドの特徴です。心地良い、ゆったりとしたグルーヴと、メロウな空気感が魅力的です。
ちなみに、ceroはその作風が年々変遷しているバンドなので掘るときにはやや注意が必要かもしれません。近年の楽曲ではアフリカ音楽の影響や複雑なポリリズム、はたまたテクノ・アンビエントへの接近…などが見え隠れし、深化を続けています。それもまた魅力です。

2. LUCKY TAPES - BLUE feat. kojikoji

続いてはネオシティポップの代表格バンド、LUCKY TAPESをレコメンドします。
こちらは2020年リリース、シンガーソングライターのkojikojiをフィーチャリングした1曲です。「こんな出来損ないでごめんね」というパンチラインから始まる歌い出しは秀逸。ちょっと気怠げな雰囲気の甘いボーカルがクセになります。
LUCKY TAPESは豪華なストリングスアレンジを駆使した楽曲も多く、そこがほかのネオシティポップ系バンドと一線を画していると思います。ぜひほかの楽曲も聴いてみてください。

3. Special Favorite Music - Royal Memories

ブラス隊が印象的なポップスということで、Special Favorite Musicという名前のバンドをレコメンドします。このバンドは現在こそ3人体制ですが、一時期は管弦楽奏者を含んだ9人編成の大所帯バンドでした。
この楽曲は、Special Favorite Musicの中でも普遍的なポップミュージックの良さを大いに感じる、エバーグリーンな名曲です。多幸感のあるサウンドが、気分をポジティブにさせてくれます。畳み掛ける管弦楽のアレンジは、ポップス好きなら悶絶モノではないでしょうか。

4. Kan Sano - Stars In Your Eyes

ジャズ/ヒップホップ色を強めて、Kan Sanoをレコメンドしてみます。数々のアーティストの作品に参加する人気プロデューサー且つキーボーディストで、自身のソロ作品では自らボーカルを担当したりしながら、そのピアノ演奏やビートメイクのスキルを存分に発揮しています。「Stars In Your Eyes」も心地良いビートにピアノが絡み、ゆらゆらと体を揺らしながら聴きたい一曲。
なお、この曲が収録されているアルバム「Ghost Notes」(2019年リリース)は、作詞作曲ミックスからキーボード、ドラムの演奏に至るまで全てをKan Sano一人で担当しているという一枚で、その多才っぷりが伺えます。

5. 土岐麻子 - HOME

最後に土岐麻子をレコメンドして締めたいと思います。音ゲープレイヤーならば名前を見たことがある方も少なくないかもしれません。かつてはCymbalsというバンドのボーカルでしたが、その後のソロ活動を経て現在では“シティポップの女王”なんて呼ばれたりもしています。
「HOME」はTVアニメのために書き下ろされた楽曲で、温かみのある曲調がほっこりした気分にさせてくれます。唯一無二の歌声が本当に素敵です。


以上、GrounddigginG : 03「Music for Life」編をお送りしました。クラブミュージック全開だった02からまた温度差の激しいラインナップになりましたが、少しでも世界が広がったなら幸いです。
(ネオ)シティポップはまさに現在進行系で日本/世界を席巻している音楽のひとつで、フォローしがいがあると思います。今回は触れていませんが、より80年代の再現に振っているアーティストや、テクノポップ寄りのアプローチをしているアーティストなど、様々なタイプがいますので、ぜひ貪欲にdigっていってもらえれば。

“GrounddigginG”は今後も複数回に渡り、様々なライターによる紹介を連載していきます。次回以降もお楽しみに。

担当ライター:FALL (@likeside)

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