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「働きたくない」と思っていた僕が学生起業し、農業の未来づくりに挑む理由/ #Gazelle起業理由ブログ

Gazelle Capitalは、日本を築いてきた国内産業にインターネットの力で変革・変化を起こし、新しい時代の中で産業を彼らと共に形を変えて紡いでいくための ベンチャーキャピタルです。
創業初期の起業家へ伴走型のサポートを行いながら、レガシー産業の課題解決を目指しています。
本ブログでは、弊社が投資している企業の代表者に、起業に至ったきっかけや、今後目指していきたい世界について語ってもらうインタビューを、連載形式でお伝えしていきます。
これをきっかけにレガシー産業の改革に興味を持つ方が一人でも増えたらと考えています。

第三回は、シェアリングエコノミー事業で農業の課題解決を目指す株式会社シェアグリ・代表取締役の井出さんにお話いただきました。

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「社会人になりたくない」と思っていた学生時代

こんにちは。シェアグリの井出(@sharagri_hiyuto)です。
シェアグリは、「農業経営に寄り添い、人と食の未来をつくる」ことをミッションに掲げ、農業界にある数多くの課題解決を目指しているスタートアップです。現在は、大きな課題の一つ「人材不足」の解消に向けて、農業分野に特化した特定技能外国人人材の紹介や農繁期スポット派遣事業を展開しています。

今から2年ほど前、大学4年生の時に起業しました。幼い頃から起業を志していたのかと言われると全くそんなことはなく、むしろ、起業直前の大学2年生ぐらいまで、「社会人になりたくないなぁ」って思っていたタイプでした。(笑)
当時の僕には、「毎日ゆらゆら、ブルーな気持ちで電車に揺られて出勤するの嫌だなぁ」とか、「なんとかPCにかじりついて、仕事して。社会に出るって楽しくなさそうだなぁ」とか、「働くこと」に対してネガティブなイメージを持っていたのです。

そんな僕が、なぜ自らシェアグリを起業することになったのかについて、お話しさせていただきます。

サークルに飲み会にと、いわゆる大学生らしい生活を謳歌していた僕がビジネスに興味を持つきっかけをくれたのは、2年次のカナダ留学で仲良くなった友人でした。
この友人が非常に行動的で、「せっかくカナダに来たんだから、あんなことやってみよう!」「こんな人と話してみよう!」と色んな経験に自分を巻き込んでくれたのです。
この留学は学部の必修プログラムで、最初はどこか受け身な気持ちでいた僕も、彼と刺激的な毎日を過ごすうちに、新しい環境に行くことや人と出会うことの面白さに目覚めはじめました。

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そんな彼が、留学から帰国後に突然「俺、ベトナムに2週間インターンしてくるわ!」と言い出しました。

「武者修行」と呼ばれるちょっと怪しい(笑)ネーミングのそのインターンは、ベトナム・ホイアンに2週間滞在し、飲食店や旅行店などのセールスを実際に体験したり、事業企画を立ち上げる経験ができる、というものでした。

「なら、俺も参加する!」

彼を追いかけるかたちで、僕もそのプログラムに参加することになりました。当時は、将来のキャリアを意識していたわけではなく、単純に面白そうという感覚で飛び込んでみただけだったのですが、「仕事したくない」と言っておきながら、ビジネスインターンに参加するなんて、今振り返るとちょっと滑稽ですね。(笑)

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その2週間のインターンの中でも、「社会人になりたくないなぁ」「働きたくないなぁ」とこぼす僕。するとインターンのファシリテーターとして参加されていた株式会社はぐくむ代表の小寺さんから「だったらこれを受けてみるといいよ」と声をかけていただいたのが、ライフデザインスクール(LDS)というプログラムでした。

LDSとは、学生同士のディスカッションや、ファシリテーターによるコーチングなどを通じて、学生のライフデザイン設計を支援するプログラムです。
屋外で体を使ったワークショップ等もあり、自分はどんなことに向いているのか、どんなことにやりがいを感じるのかなど、心身共に自分を知る機会になりました。

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その中で受けた、小寺さんの言葉が転機となり、僕は起業家人生の第一歩を踏み出すことになります。

「”はたらく”というのは、”傍(はた)を楽(らく)にする”ものだ。」

”傍”とは、自分の周囲にいる大事な人・楽にさせてあげたいと思う人たちのことで、そうした周りの人たちを幸せにしていくことこそが、”働く”ということなのだ、と教えてもらいました。

その言葉を聞き、僕の中の仕事に対するイメージが大きく変わりました。
それまでの自分にとっては、「仕事をすること」自体がゴールのように見えてしまっていたのかもしれません。しかし小寺さんの言葉を受けて、その先にある目的がクリアになったことで、それまで持っていたネガティブな固定概念がガラリと変わり、「働く」ということがものすごく身近な存在に感じられたんです。

まずは誰を幸せにしたいんだろうか?ということを考えはじめ、徐々にビジネスに興味を持つようになりました。3年生になる頃には、まずは小さくてもいいからビジネスに挑戦してみようと、起業家の集まるようなコミュニティにも参加するようになりました。

「自分に何ができるか?」熟考を経て選んだ起業の道

最初はビジネスのビの字もわからなかったので、ハードルの低そうなAirbnbの運営・清掃代行からスタートさせました。当時はまだ一般企業の参入が少ない時代だったので、ビジネス初心者の自分でも一定かたちにできるのではないか、と考えたためです。

そうして小さな事業にチャレンジし続けるうちに、個人でコンパクトにやるのではなく、スタートアップとして会社を起こしてみたいという気持ちが徐々に沸き上がってきました。就職活動も行っていましたが、いくつかのビジネスコンテストでご評価いただいたということもあり、結果的に起業する道を選びました。

事業検討を重ねる中で頭をよぎるのはかつての小寺さんの言葉でした。
事業を立ち上げる以上、もちろん利益追求はすべきですが、自分はどんな”傍・楽(はたらく)”を実現させたいのか、何度も考えを巡らせました。
その中で自分にとって最もしっくり来たのが、幼い頃から関わってきた農業の課題を解決することだったのです。
僕の実家は150年続く種苗会社。幼い頃から農業と密接に過ごしてきた分、それらの難しさや課題感にも触れてきました。家業をゆくゆくは継ぎたいと思ってはいるものの、まずは自分自身が農業分野においてビジネスができる人間になることが必要だと考え、ファーストキャリアは実家に頼らずに自分自身でつくることに決めました。

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シェアグリは、農機具のシェアリング事業からスタートしました。
農機具は非常に高価である一方で、実際の年間稼働は少ないものでたったの2週間程度。その農機具を購入するために、わざわざ借金をする農家も少なくないという実情に、以前から疑問を抱いていました。その高額な農機具がCtoCでシェアできれば、農機具を有効活用しつつ、各農家の負担も減らすことができるのではないかと考えたんです。
この事業は、当時大学で研究していたリモートセーシングという技術がヒントになっています。人工衛星のデータを解析し、米の最適な収穫適期を圃場ごとに予想するという技術です。同じ地域であっても、実は絶妙に収穫適期は異なり、3日とか1週間とかのズレが発生するんです。ここで得た情報を活用して、例えばどのルートで農機具をシェアしていくのがベストルートなのかなどを検証できれば、スムーズにシェアが進んでいくのではと考えていました。
ところが、思った以上に農機具のシェアリングは受け入れてもらえず、あえなく事業をピポットすることに。
現場の声にしっかりと耳を傾ける重要さを身をもって痛感し、農家や農協、地域商社などへの課題のヒアリングを何度も重ねました。今度は、その中で多く聞こえてきた「人材不足」という課題にアプローチすることにしました。

農業は繁忙期と閑散期の差が大きいので、通年での雇用継続が資金的に難しく、「繁忙期だけスポットで人手を借りられたら」という需要がありました。
そこで思いついたのが「人手のシェアリング」でした。
繁忙期に限定した超短期の求人募集は、農家はもちろん、働き手にとってもメリットがあると考えました。実は都市に住んでいる人の農作業体験の需要は高く、市民農園の開設数も年々伸びているんです。それでも都市部の市民農園は応募倍率が高い。平日は都会で過ごす人たちが、週末は移住することなくスポットで地方で農家の手伝いをする、というスタイルを確立できたら面白いのではと考えました。
創業時よりご支援いただいている株式会社ガイアックスのサポートを受けながら、正式リリースに向けたアプリ開発がスタートしました。

Gazelle Capitalとの出会い

Gazelle Capitalの石橋さんとの出会いはこの頃で、ゼロトゥワン萩原さんにご縁を繋げていただいたことがきっかけでした。
デイワークアプリを3週間ぐらいで開発・リリースしてみたはいいものの、本質的な農業における人材不足の課題にインパクトが与えられないことに悩んでいた時期でした。ちょうど特定技能派遣への事業転換を検討していて、それに向け増資が必要だったタイミングに石橋さんに出会ったんです。

Gazelle Capitalの、レガシーな産業を盛り上げようとしている企業に投資をしたいという思いからご支援いただくことになりました。僕らとしても「この事業領域は、スタートアップ的な短期で爆発力のある成長はしないけれど、じっくり堅実に成長を重ねていく分野なのでは」と期待を寄せていただいたことに非常に勇気づけられたことを覚えています。

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石橋さんは、悩んだ時にはすぐに相談できるようなフラットな立場でいてくださっていて、日々アイディアの壁打ちにお付き合いいただいているだけではなく、地域のJAの方を繋げてもらったり、特定技能派遣事業を構想する中でもマッチする人材派遣会社の方を繋げてもらったりと、人的支援、事業支援までサポートいただけています。相談するたびに、その時その時でベストな支援をしてもらえるので、非常に心強いです。

そうしたGazelle Capitalさんからのご支援もあり、2019年末には、特定技能外国人の農繁期スポット派遣サービスの展開に向け順調なスタートを切ることができました
「特定技能」とは、2019年4月に新設されたばかりの在留資格です。人手不足が深刻な産業分野において、一定の専門性や技能を持っている外国人材を受け入れることができる、というもので、その中でも農業と漁業だけが派遣事業を許されています。
これまで生産者にとっては年間雇用せざるを得なかったところから、特定技能の即戦力人材と繁忙期のみのスポット派遣が可能となり、特定技能を持つ外国人人材からしてみても、繁忙期の産地を数ヶ月単位で回ることにより、以前より高水準の賃金を得ることができるようになるなど、双方にとってメリットある事業の展開ができると考えました。
2020年4月からの派遣に向け、30名程の特定技能外国人人材との契約も完了し、いよいよビジネス稼働できると思っていたそんな折。
あの、緊急事態宣言が発令されたのです。

新型コロナの影響で見込んでいた売上が0に。ピンチをチャンスに切り替え見出した活路

4月から入国予定だった人材が全員入国できないこととなり、もともと見込んでいた売上はゼロに
会社の事業の方向性を模索し、ピポットを重ねてきた中でも手応えのあった事業だっただけに、基本的にポジティブ志向な僕にとっても、流石にこたえた出来事でした。

しかし、落ち込んでいる時間はありません。
更なる打ち手を考える中で、今度は国内の人材に目をつけ、国内の技能実習終了予定生の採用や、他業種で失業してしまった技能実習生を特定活動に資格変更し採用したりしました。
また、ニュースを見ると失業や派遣打ち切りなど、同じく新型コロナの影響で国内の雇用機会が問題となっていた観光業との連携を行い、異業種との人手のシェアリング事業を展開しました。

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コロナ禍で母国に帰れない状態のまま、在留資格の期限が切れてしまった農業技能実習生はもちろん、日本人含め、コロナ禍が原因で一時休業や雇用を打ち切られた観光業界・飲食業界で働く人材にもアプローチをかけるべく、観光地の雇用に強い求人サイト「はたらくどっとこむ」を運営する株式会社ダイブと提携することになりました。
今では40名ほどの人材を全国各地に派遣しており、農業の人手不足に貢献し始めています。

今後の展望

起業から2年経ち、予想もしなかった時代の濁流に巻き込まれながらも、ようやく事業の糸口をつかむことができてきました。ようやくスタートラインに立てたという感覚でしょうか。
僕らは「人と食の未来をつくる」ことを目指していますが、農業界には数多くの課題が山積しており、人材不足はその中の一片にすぎません。
まずは、今手がけている人材派遣事業を、より社会的インパクトのある事業へと成長させていきたいと考えていますが、長期的にはこれにとどまらない事業展開を志向しています。
例えば現在の事業で築いている全国の生産者とのネットワークを生かし、販路支援など、農業の課題解決に関わるビジネスを展開していきたいと考えています。

★最後にシェアグリからのお知らせ
シェアグリでは、共に日本の農の未来をつくる仲間を募集しています。
「農業」というと、身近に農業のある環境で育ってきた経験のある方ではない限り、少し縁遠いもののように感じるかもしれません。しかし実際には「食」の基盤となる事業であり、人が生きていく上では欠かせない領域です。そうした社会貢献度の高い領域で、あなたも課題解決に取り組んでみませんか?
僕らが直近取り組んでいる「特定技能」はまだ始まったばかりの制度で、国策としてまさに今推進していこうという段階です。どの地域でも人手不足が叫ばれている中で、コミットすればするほど、困っている地域の課題解決に繋がるので、刺激ややりがいに溢れるタイミングだと思います。

一緒に日本の農の未来を作りませんか?詳しくはこちらをご覧ください。

少しでも興味をお持ちいただけた方、まずはカジュアルにお話ししましょう。こちらからご応募お待ちしています!

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Gazelle Capitalはレガシー産業に革命を起こす起業家を応援しています

Gazelle Capitalでは、日本のレガシー業界を変革するスタートアップへの投資に力を注いでいきます。
農業・林業・漁業の一次産業から、建設業、製造業、不動産や保険、金融、小売、医療・ヘルスケアといった領域も含め、IT化により大きな革命を起こそうとしている創業前後の起業家をメインに、あらゆる成長支援を行っていきたいと考えています。

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