星新一の地獄

夜、布団で星新一の読み聞かせをしているとこんな話だった。

ある男が自己所有の山奥の廃屋に様子を見に行くと、無断で鬼が利用していた。男が鬼を問い詰めると、地獄が定員オーバーで現世の廃屋に一部の亡者を移し拷問しているのだという。男は地獄の様子を見学させてもらうーー

この廃屋の地獄というものが微妙にゆるい。役人出身の亡者は延々とハンコを押させられる地獄。元暴走族の亡者は爆音をヘッドホンで聞かされる地獄。因果応報な地獄なのだが、その量刑は「相手に迷惑をかけた分だけ」であり、どうやらその苦行を乗り越えれば地獄を脱するようだ。この程度の地獄なら真っ当に生きている限り短期間で地獄を脱せそうである。

話のオチはめずらしく2つあり、一つは「生前政治家だった亡者はどうなります?」「ここにはいません。恐ろしくて口にもできない地獄です」というもの。もう一つは、男が「この廃屋をCMの撮影所に改築しようと思っていたのだがやめよう。どんな地獄に行くか想像もつかない」というもの。

両方とも嘘と欺瞞と虚飾にまみれているということだろうが、どういう具体的な地獄に送られるのだろうか。全然眠れない。

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