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芝人形トシ君 ③自由への疾走

大阪の水道水のおかげで、順調に成長していったトシ君。
日々成長を続けるトシ君の姿を仕事から帰宅した時に確認するのは、今や僕の人生の楽しみの一つになっていました。

ところがある日、トシ君は思春期に入り、自我を出すようになってきました。

「大阪の水道水、そろそろ飽きてきたわ。
たまには北アルプスの湧水とか、そういうの飲ませてくれや。」

トシ君の生まれ故郷である岐阜県板取町は清流「板取川」が流れる町。
故郷の水が恋しくなったのでしょうか。
どこから用意したのかサングラスをかけ、訴えかけてきました。
しかし甘やかしてはいけないので、大阪の水道水を与え続けました。
すると・・・

ドルルン、ドルルン!

「もう我慢ならんわ。家出するわ。」

バイクにまたがり、エンジンをかけ始めました。

「ほな、行くわ。今まで世話んなったな。」

トシ君~!カムバーック!!

「芝色に染まったこの俺に、水をやるやつはもういない」

(つづく)

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