要約された人生〜竹内朱莉さんの卒業について
*本記事が初投稿となるため、色々と不備があったら申し訳ありません。ご容赦ください。
あなたの竹内朱莉はどこから?
当時、研修生に興味のなかった私はスマ加入からである。
5人のサブメンバーはあまりにも子どもで、きらきらというよりもぴかぴかしていたように思う。つんくさんが選定に関わっていたこともあり、幼いながらに歌唱力はもちろん、何より声がそれぞれに彩り豊かで4人のバランスの良さは目をみはるものがあった。
そこからしばらく続く不遇の時代のことは、今思い出しても腹立たしさと申し訳なさが拭えない。アイドルという立場ゆえ、ファンや大衆から比較され、評価されることはあるだろう。だが、人生で1番やわらかく瑞々しい時期をアイドルに捧げる彼女たちで商売をしているのは大人たちであり、都合の悪いことはすべて子どもたちに押し付ける当時の大人たちはあまりに無責任であったと思う。
だからこそ、その後の地道な活動と荒削りながらも確かな実力により、人気を獲得して武道館まで上り詰めた彼女たちの努力と根性には心から敬意を表したい。
決定的な転機は改名、3期加入を待つことになるが、その基礎となったのは6スマの活動であり、今もなおグループから醸し出される反骨心や自立心はこの名残りのように感じられる。
私は先代リーダー和田彩花さんが卒業時に「(メンバーは悪ガキだらけで)自分がいつも皆が脱ぎ散らかした靴を揃えていた」「(和田さんの卒業間近の頃には、)年上メンバーが靴を揃えるようになった」というエピがとても好きだ。
そして同時に、和田彩花さんが「自身のメンバーへの影響力を自覚していたからこそ、自分の考え方を押し付けないように気を付けていた」というエピに至っては、彼女を信捧する理由に足ると考えている。
アンジュルムというグループが、場所が、どういったものであるか、その一面を窺い知ることができるものではないだろうか。
当然、まだ年若い女性の集団であるが故の衝突や不和も、影に日向にあっただろう。また、日本の女性アイドルの活動期間はあまりに短く、活動期間よりもずっとずっと長い人生がその先にある。だから、彼女たちは様々な理由でそれぞれの道に進む。
その余波とも言えるが、竹内朱莉さんの不遇は加入初期のみならず、リーダー継承後も第2次不遇期として訪れることになる(命名俺)。共にグループを支えてきた盟友、これからのグループの中心になるはずだった期待の後輩が次々と卒業を表名したことで、一部の心ないファンもどきから「お前がリーダーになったからだ」とその捌け口にされてしまう。
本人も仰っていたことだが、実際の諸々は彼女がリーダーに就任する前から決まっていたことであり、もちろん彼女に責任はない。むしろメンバーの新陳代謝が進み、パフォーマンスが不安定になる度に、力強くしなやかに、表から裏から誰よりもグループを支え、メンバーを成長させたのは、他でもないリーダー竹内朱莉であった。
竹内朱莉さんは(観測の限りではあるが)、漢字は苦手だし、勉強はあまり得意ではないそうだ。しかして、頭の回転は早く、機転や対応力の高さはファンなら周知のことであり、間違いなく初代リーダーに比肩する偉大で有能なリーダーだ。
(あと、不遇時代を経験しながらも、自分ができることにはちゃんと自信を持っているところも、非常に健やかで素晴らしい。歌もダンスも必要以上に謙遜しないし、いつかは自身の運動神経の良さをあっけらかんと語っていたが、おそらく大概のスポーツは人並み以上のレベルでこなせ、その道に進んでいたら一廉の選手になっていたのではないだろうか)
1人の悪ガキが、世間の荒波に揉まれ、仲間を得て、世界を広げ、今の彼女になるその物語は、とてもエキサイティングで美しい。
小説家の伊坂幸太郎は、「人生は要約できない」と書いた。そのとおりだと思うし、そうでなくてはいけないとも思う。
けれど、我々ファンが見ているアイドルは、彼女たちの切り取られた「要約された人生」である。
SNSの普及により、その要約部分は拡大しているとは言え、この10余年の間、私は竹内朱莉さんが提示する「要約された人生」という物語を心から楽しませていただいた。
要約されなかった部分には、不遇も、理不尽も、苦境もきっとたくさんあっただろう。傍観者として「エキサイティングで美しい」と安易に称すのは、いささか無責任で配慮に欠けるかもしれない。
それでも私はただのファンなので、無責任に無遠慮に、心から彼女を讃え、感謝を申し上げたい。
竹内朱莉さん、アイドルになってくれてありがとう。
アンジュルムでいてくれてありがとう。
素晴らしいパフォーマンスをありがとう。
どうかこれからも、時折は「要約された人生」を我々ファンに見せていただきたいし、「要約されなかった部分」についてもたくさんたくさん幸せであって欲しい。
卒業おめでとうございます。
残りのアンジュルムとしての活動期間も目一杯楽しんで、我々ファンを楽しませてください。
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