雑感:「DXの前にOXが必要」…マンション管理業界が目指す道は?

少し前に、「MANSION INNOVATION FORUM 2021」が行われており、Webで視聴できたため仕事の傍ら垂れ流しておりました。
そこで感じたことを雑感として残しておきます。

※私は本当に管理士でも管理会社でもないただの一般人ですので、あくまで一感想として捉えてくださいね。

MANSION INNOVATION FORUMとは

端的に言えば、業界団体である(一社)マンション管理業協会が主催するマンション管理のナレッジ共有を図り、管理業界における課題解決やイノベーションに繋げるための取り組みとして開催しているイベントのことです。
その一環として、マンション管理業に携わる企業や管理組合が優良事例を共有する「マンション・バリューアップ・アワード(MVA)」があり、優秀作品によるプレゼンテーションや授賞式が行われています。

今回の「MANSION INNOVATION FORUM 2021」は、
 第1部:「MVA2021」公開最終審査プレゼンテーション
 第2部:特別講演 及び スペシャルセッション(座談会)
 第3部:「MVA2021」表彰式各賞の発表及び授与式
の順で行われております。

Twitter界隈ですと、イニシア千住曙町の旧ミニショップ跡地のラウンジ化ですとか、品川のタワーマンションにおける機械式駐車場の改良による利便性向上・収益改善等が比較的取り上げられやすいかなと思います。
(どちらも素晴らしい取り組みです!)

平たく言ってしまえば、「普段日の目が当たらず評価されにくいマンション管理業界におけるよしよし会」といった感がありますが、住民の生活の場を守るマンション管理は「イノベーション」とは縁遠い分野でもあるので、志としては立派だと思います。

手間暇かけることで実現するアプローチが評価された「MVA2021」

第1部の「MVA2021」公開最終審査プレゼンテーションでは、4つの各部門(「マンションライフ・シニア部門」「工事・メンテナンス部門」「防災部門」「管理組合部門」)の部門賞受賞作品より、グランプリを選ぶための公開最終審査のプレゼンテーションが行われました。
(タイトルや内容は冒頭のリンクから見られますので、ぜひご覧いただけばと思います)

私見ですが、どの受賞作品も課題感、コンセプト、活動内容と立派だなぁと感じつつ、「建物・住民の老化」に対するアプローチ(例:手間暇かけることで実現するコミュニティ形成・工夫)が共通して示されているなぁと思いました。

DXの前にOX(おじさんトランスフォーメーション)

個人的に最も興味深かったのは、第二部の特別講演で「DX(デジタルトランスフォーメーション)の前にOX(おじさんトランスフォーメーション)が必要だ」と演者が訴えていたことです。

この主張は、私もIT業界の端にいるので納得する部分があります。

企業のDX化の障害は多くの場合は「ヒト」の印象です。

DX化は、単純な部分業務のデジタル化を示しているわけではなく、デジタル技術を活用して「どのような価値を生み出したいか」が重要です。
そこに至るまでには、戦略・ビジョンを確立し、全体にかかる運用・ルール作りとその浸透を行うべく、実務リーダーが推進できるようトップのコミットが求められるわけです。

多くの場合はDX化の過程において、トラブル・手戻り・二重業務等の予期せぬ負担が生じたり、また標準化に伴う不便さが生じたりして、「変わる」ことに対する反発が生じます。
DX化においては、そのような流れを織り込んで推進すべきなのですが…残念なことに、「DX化すれば便利になってみんなハッピー」な意識しか持てないトップだとあっという間に意識が変わり、有耶無耶になるケースが散見されます。

その点において、OX(おじさんトランスフォーメーション…まぁ、おじさんの意識改革とでもいうニュアンスでしょうか…)が先に来るというのは理解できる話です。

そういえば、こんな特集も組まれてましたよね。

手間暇に依存する管理業界

ここからは少し生意気なことを申します。

管理業界における良い話は、概ね
・管理組合活動に関心がない住民が多い中、活動したら協力してくれるようになった
・こんな集会を開いたら人が集まってくれるようになった
・管理員や管理貸家のフロント担当がこんな努力をしたら、理事会からほめられた
という「手間暇」に依存する定性的な内容が多いように見受けられます。

先のMVA受賞案件も「手間暇」が評価される印象を抱き、
「では、この中心メンバーが去った後、この取り組みは継続されるのだろうか?」
「採用がままならなくなり人が確保できなくなったら、収益にならないことに手間暇をかけ続けられるのか?」
なんてことが思い浮かんだのも事実です。

理事役員目線としては、受賞案件における各取り組み自体は立派だと思いますが、勤労者である私が同じように手間暇をかけて取り組めるかというと、恐らく難しいなと考えております。
(よくよく受賞案件を見ると、「内製化してxxx万円分のコストセーブ」といった趣旨も見受けられ、内製化圧力に繋がる可能性があることから、時間が限られる現役世代には厳しさを感じます)

また、理事会目線ではなく企業目線ではどうでしょうか。
大変失礼な物言いをすると、管理会社を中心にマンション管理に携わる企業の多くが、拘束時間・精神的な負担に対する稼ぎが少ないという意味において厳しい労働環境ではないかと考えます。
また、他の業界と比較して相対的に魅力がない業界ということは、今後の雇用確保はさらに難しくなることは想像に難くありません。
労働者の確保という観点からは労働環境改善は喫緊の課題であることを考えると、「お金にならない手間暇は削減対象」とせざるを得ないと考えられますし、既にこの数年で管理会社における選別が進んでいるのもニュースで取り上げられています。

管理業界、OXできますか?

先の通り「MVA2021」で高い評価を受けた受賞案件の多くは「手間暇」に支えられていますので、マンション管理協業界の価値基準が「手間暇=評価対象」だと示しているような印象を持ちました。

一方で受賞案件には、管理会社提出を中心に働き方変革や効率化に繋がるような内容も見受けられます。
一般的には、「手間暇=素晴らしい」の価値観では「効率化=あいつはサボる方に考えおって…」となりがちですので、この点はもう少し評価してあげないと企業も管理組合も持続できないんじゃないかと思う次第です。

個人的には、「こういう提案をしたら組合も喜んでくれたし、うちの会社も工事代に加えてその後の定期的な収入源にもなったしサイコー」とか「このシステム入れたら定時で帰れるフロントがxx%増えたぜ」くらいの案件が評価されても良いと思いますし、組合においては企業がお金を稼ぐことや勤務時間適正化に対して理解しても良いんじゃないかと思います。
コストダウン一辺倒とか手間暇かけて~とかに評価が集まるのって業界として健全じゃないと思いますし、「稼働時間に対する成果が要求されている現役世代」には本当に響きませんよ…。

という意味で、管理業界(組合含む)こそOX化が求められているものと思いつつ、今日は筆をおくことにします。
(素人が生意気申してすみません)

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