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2月2日 認めないけど気付く


病院に行くと
まだ閉まっていた
時間は九時よりだいぶはやい
壁によりかかり
受付の時間をまつ

九時に看護師が問診票と椅子を出してくれた
その頃にはちらほら予約患者が集まってきている
繁盛しているらしい
そんなことを考えていると嫁が看護婦と話し込んでいる
症状を伝えていてくれているが、
そんな慌てるような
大事だとは思っていなかった

お腹空いちゃった
終わったらバーミヤン行こうね

病院の入っているビルに
バーミヤンが入っていた
そう笑う嫁に
何故か
バーミヤンには行けないよ

そう答えた


何となくだ
何となく
行けないような気がしたんだ


記憶が曖昧になる


30分ほど待って
最初に見てもらえた

問診もそこそこに、近くにMRIがある病院があるのでそこにいってくれとのこと。
車椅子に乗せられるが
これが空気が抜けていてガタガタして怖い
看護師がしきりに
空気をいれておけば
車椅子運転下手でごめんなさい
と言うがいやなんか、こちらこそ、申し訳ないと言う気持ちになった。
車通りの多い交差点を渡り
別の病院のMRIに、放り込まれた


ようは頭の中を見る機械なのだが
この時、意識が朦朧とし始めた
このMRI
兎に角大音量
耳をダメにしないために
ヘッドホンしたり耳栓したり対策をする。

次に身体を完全に固定された。
逃げる気はないが逃げられない。
次に頭を完全に固定され身動きが出来なくなったら

もしもこれ以上検査を続けられなかったらぎゅっと握ってください

とスイッチを渡される

時間は20分ぐらいです

さらっと言われたが
この空間に20分か。きついな。
と思っていたら更に耳を保護する装置をつけられる。そんなに大音量なのか?こんなに必要なのか?
と疑問を言うことも、できず機器の中に頭を突っ込まれる
検査が始まる
あんなに保護したのにそれでも頭がおかしくなりそうな大音量が脳内へと響き渡る
これなきつい
思わずスイッチを握りそうになるが
ダメならやり直しで
もう一度やる方がきつい
我慢だ我慢

しかし長い
きつい
身動きが出来ない
顔も動かせない
目の前も機器だから
何もわからない

兎に角耐える
ヘッドホンから微かに音楽が流れている
それにすがるように意識を向ける
時間はどのくらいたったのか?
わからないが終わりのない拷問ではない

いつしか音はやみ
辺りは明るくなり
装具を外されて自由になっていく

じゆう?

気付いている


MRIのベッドから簡単に起き上がれない
何がどうなっているのか
自分でもわからない


また車イスに乗せられる
最初の病院に連絡が行き
看護師が迎えに来てくれるまで
待機する

傍らにいる嫁が不安そうな顔を必死で隠し
ぎこちなさの隠せない笑顔を向けてくる

なんで嫁はこんな表情をしているのだろう?
どうして俺は今、車椅子に座っているのだろう?
喉が渇いた
病院の受付のわきに給水機が見えた

嫁に頼んで水を取ってもらう
受け取った水を口に運ぶ
水は口から身体へと染み込んでいった
しかし、紙コップをもった右手はひどく不安定で、
紙コップを持っているだけで精一杯だ

車イスなんて大袈裟だ
そう思っている
しかしそれが口に出せない

いま、自分の状況がわからない

上手く立てない
上手く動けない

客観的に俺を見ている嫁は
こんなに不安そうな顔をしている

漠然と、小さな思いが胸に燻る

理解ができない
予測ができない
不安に不安と不安だ。

認められない
認めたくない
しかし現実は
事実しかない

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