人工流れ星計画への期待と懸念(2018/04時点版)

Source: https://garmy.jp/posts/2018-04/03/worried-about-artificial-shooting-star-plan/

2018年4月以降の動きに関しては反映できていません。

某社が計画している人工流れ星計画への期待と懸念を述べた連続ツイートのまとめ。 半年経過していますが同じ懸念は持ち続けています。

※2017年11月におこなったツイートの転載

人工流れ星プロジェクトは、宇宙開発の技術革新を早めるためのsandbox作りの契機となりうる

書くぞ書くぞといって書かないままになるのもアレなので連ツイで流れ星計画への懸念と期待をこれから書くよ。気が向いたら並べて清書するかも。

人工流れ星計画への期待と懸念

この計画、適切にやれば宇宙の技術革新の速度を上げて人類の宇宙開発の歴史を50年取り戻せる、でも妙な失敗すると100年送らせるプロジェクトだと思っていて、50年時計を進めたいという主張をしていたのが理解されず出てきたという次第です。

なぜ50年進められると考えたか。
宇宙開発はライフサイクル長い使い方ばかりされるので、地上で進む技術革新に追いつきにくいし、そもそも「作っては壊して新しいの試して」という、新技術を開発したい人にとって魅力が低い場となっていて、正直「未来は暗い」と考えておりました。
ロケット安くなれば技術革新が~という論はよく聞きますが、Falcon9が価格破壊してもまだ宇宙開発は活性化してません。
それは、今でも「宇宙にあげるものは固い設計をしてくれ」という制約があるからです。そりゃそうで、衛星がチャレンジ枠か否かにかかわらずゴミとして溜まると困るわけで。

だとすると、本当の問題は「シミュレーション環境ではなく実環境にsandboxが存在しないこと」なのではないか、と考えた訳です。
実際、高度400km以下で加減速しない衛星であれば、2,3年で大気圏落下しますしISSにも干渉しないわけで、sandbox領域と認めて貰えれば…と。
しかし、そんな発想はすでにあるのに、なぜISS放出のcubesatが練習台ばかりなのか。それこそ、「ライフサイクルが長い使い方」しかなくて投資回収が出来ないからなんですよね。

短期間で付加価値を稼ぎまくれ、むしろ短寿命で退場する方が嬉しいみたいな低軌道の衛星を使ったビジネス、と。
人工流れ星は、流れ星の素を打ち切った時点で売上を全部立てられます。打ち止めになったら衛星はお荷物ですからさっさと退場させて、その軌道に代替の衛星を載せたい。そんな衛星にはテスト機能も載せようぜ、と、どんどん代替わりさせることがビジネスの成功にも宇宙開発の活性化にも繋がる。

じゃあホントにビジネスになるの?という観点については、桁違いのリーチの広さはイベントになるぜ!って発想をCMOが持ち込んでクライアントも見つけてくれて、そういう「世界初」銘柄であれば投資家が投資する意味もあるよねってことでCEOがお金も集めてきて。万々歳に見える。
(ちなみにビジネス経験からみて、これはこれでなかなか上手い作りで、そこは心配いらないです。というかその点は他の宇宙スタートアップも啓発して回ってよい)

ただし、正しいsandboxを作らないとより世の中を保守的にしてしまう

ちなみに、sandboxがほんとにsandboxだぜ!と思って貰うためには「こんなにトンデモな案件でもOKなんだ…」という事例が必要で、それこそ「宇宙で物体放出」なんて今まで宇宙ではタブーと思われることって、sandbox案件としてもっとも適切だと思うわけです。

じゃあ何が懸念なのさ、というところで「100年宇宙開発を遅らせるリスク」の説明が出てくるわけで。
それこそ、「他の衛星と衝突しないようにコントロールして物体を放出する」技術って、精度が上がれば上がるほど「他の衛星に当てる技術」に近づいて、もろ軍事技術になっていってしまう。
(この点は、海外のさまざまな方とパイプがある方にも、海外の識者からも具体的な懸念があったと聞いていました)

ついでに言うなら、流れ星の素が入った状態で分解なんかしたらデブリバラマキ衛星になってしまう。
「弾詰まりはしてもよいけど誤射も破裂も絶対起こすな、デブリと衝突してもデブリをばらまく破壊はされるな」という点では固い設計が求められてしまう。

精度が低すぎると事故るかもしれないし見たい場所に流れ星が流れない。
精度が高すぎると軍事技術ではないかと懸念され、場合によっては「宇宙を軍事利用したい国家や組織」が無法行為をする根拠にもされうる。
でも壊れない設計の必要がある。「ほどほどの技術で進化を止める」べきだと考えた。

また、そういう技術のバランスって、技術自体よりは「手続き論」がよい説明になる場合があって。
それこそバカ丁寧な情報開示をできる組織でないと物体放出はまかり成らん、というやり方で、ならず者の参入を排除しつつ、善良な技術者の実験場を作れないか(これはビジネス上の競合優位にもなる)。
安全性の観点での情報開示は、それこそ流れ星の軌道を精密に開示する、みたいなもので、手続き書類も沢山つくる感じにする。
でも、専門家が示す軌道が公開されても地上からの見え方は大半の人には分からないから、分かりやすい情報提供のビジネス的価値は損なわれない。

そして、そういう「情報開示がしっかりしている」という組織の条件として、そもそもガバナンスとコンプライアンスがキッチリしていて、労務管理とかもしっかりして、偽装請負に見えるような個人への業務委託なんかもしません!といったお堅い側面もある会社でないといかん、としたかった。

なんで「ならず者が宇宙を好きにしてしまう」と懸念したのか。
それこそ関わる前後に読んだ、オービタル・クラウドからの着想です。
読んでみれば分かりますが、ならず者が宇宙を好きにしようとするのを、立ち振る舞いが気持ち良い人たちが防ぐお話し。これ読んでて頭の中で全部繋がった。

こういうことを考えて働いてたし、日本SF大会で藤井先生ご本人に応援されたのもあって、こわーいお役所に行くのも「正々堂々と正確にやっていることを伝えて理解を得る」という、あるべき姿を体現しようとしていた、でもそれを理解しようともされず。

私の不安と、関係各種公的機関への願い

なので、誇大妄想だとは思ってはいますが、もし彼らの衛星が破裂したらどうしよう、ルーズな運用してしまったらどうしよう、そんなことして宇宙開発の脚を引っ張ることをしたらどうしよう…と思い続けて、情報開示された図面とか見て(´・ω・`)と思ったりしてその誇大妄想が消えず今日に至ります。

なので、宇宙クラスタもそうですが、各種公的機関(日本に限らず)におかれましては、少しでも疑義が残っている状態では打上を認めないよう、切に願うものであります。大丈夫、CEOは死ぬまで諦めないひとだから多少のびたところで困らないはずです。周囲の人がどうかはしらんけどさ。
(なので頼むから特別公開の時のポスターで見えてたタンク丸出しとかそういうデザインやめとくれ…理論上は事足りるのかも知れないが、そこは過剰なほどやって見せる方がよいと思うのですよ)

懸念の話は以上。

※ここだけ2020/02追記…
のちに情報公開請求したら打上2日前に許可だしてて、なんだかなぁ…と思った…

「サイエンスをビジネスにする」と言われている件への不満

それとは別にもう1個、「サイエンスをビジネスにする」と言われている件。

「本来サイエンスは知的娯楽であり、サイエンスを正しく見せることをお金にする」のは賛成だしやりたいことですが、今の流れは、「単なる特殊効果屋さんというビジネス」をやりたいだけになってる気がする。
特殊効果屋でもサイエンスの発展には寄与するかもしれない(花火⇒炎色反応の理解、みたいな)。
でも、それってサイエンスがオマケでついてくるだけで今までにもあったよね。ホントに「サイエンス自体を面白いと思って、理解することにもお金を払って貰う」のだとしたら、もっと立ち振る舞いは変わる…

なんか、遠くの理想に向けて着実にfactを積み上げていくという「科学」や「技術」の営みへの敬意とか心酔とかから、理想を追い求めるために参加した私には、そのズレは辛かったよね。
その上、オービタル・クラウドはCEO、読んでくれなかった。あーしんど。

追加情報への反応

記者への「安全性」の説明が…

一応、衛星のタンクはカバーしてくれたようだ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?