20200313

高校生活最後の3月、
私は東京で一人暮らしを始めていた。

まだ授業も残っていたけれど、
色んな事が起きて、
ついに学校に行くのを辞めてしまった。

卒業試験の代わりであるセンター試験も
無事に基準点を満たしていた。

学校も許してくれて、
卒業式より2ヶ月はやく
上京して生活していた。


夢みたいな時間だった。

ずっとSkypeを繋ぎっぱなしにして、
ネット上の友人たちと笑い合って。

夜通し作品作りをしたりして。


その仲間たちの本名も顔も知らない。


そんな中に、
当時お付き合いしてる人が居た。

顔も本名も知らないまま、
本人の言う居住地や年齢も
真偽は証明できないまま。


夢みたいな時間の中で、
私は卒業式を控えていた。

出席したくなかった。

会いたい人も居なかった。


嫌だなぁって、
口癖のように呟いていたある日。

「俺は行った方がいいと思う」

彼にそう言われた。

「せっかく中高一貫校での
6年間を終えられるんは、
あかりが逃げなかったからやろ。

堂々と出席して、証書もらって。
ちゃんとやり通した!って、
自分のこと褒められるん、
これが最高の機会やと思う。」

そんなふうに、思ったこともなかった。
考えたこともなかった。

「卒業式って、式典やろ。
そら卒業式のあと、
友達とわーきゃーあるかもしらんけど。
でも、あかりは卒業式には
胸張って出席すべきやと思う。

出席してきたら、
むしろ最っ高に褒め回したる!!」


あのとき、彼の言葉がなかったら。

私は卒業式に出席せず、
きっと今になっても
「出席できなかった」と
私を責めて、後悔しただろう。


私は卒業式に出席した。

長かった髪をショートボブに。
メガネは辞めてコンタクトに。


私のことを私だと、
みんな認識できなかった。

声をかけられても、
「久しぶりだねっ」って、
普通の可愛い女子高生らしく返事をした。


卒業式。

いままで数々の賞状をいただいてきたけれど。

私の人生で、最も栄誉ある賞状をいただいた。


県の合唱連盟から、
個人宛に、賞状をいただいた。

県の合唱のレベルを押し上げる、
合唱文化を活性化させる、
素晴らしい貢献をした、と。


文化部のない中学校で、
合唱部を立ち上げた。

3年間で、コンクール入賞校まで引き上げた。

軽音部になっていた高校の合唱部を、
多様性を活かして
多彩な活動をする音楽集団に昇華させた。

県内で、児童合唱団の支援や
老人ホームでの慰問演奏、
県庁所在地を巻き込んだ
音楽イベントの企画運営。

大学合唱団での飛び級活動。


何もかも、前例がなかった。

全部、やりたくてやった。

やり通した。

あとから、
「ああしておけばよかった」と
反省することは山ほどあった。

でも次の企画には全部活かした。


無我夢中だった。


普通の高校生みたいに、
友達と遊んだり、メイクして自分磨きしたり、
そういう青春はなかったけれど。


紛れもなく、
あの駆け抜けた時間は私の青春だった。


それが、評価された。

認めてもらえた。


卒業式は、
私の過ごしてきた時間を
「無駄じゃなかった」と認めさせてくれた。


静かに、堂々と。

あんなにも真っ直ぐな気持ちで
賞状を受け取ったのは、
あれが初めてだった。


卒業式の季節になると、
毎年彼を思い出す。


感謝しても、し尽くせない。


私が、私を認められる、
数少ない出来事のきっかけをくれた人。

背中を押して、支えてくれた人。


本当にありがとう。




noteに目を通していただき、ありがとうございます。皆さまからいただいたサポートは、私の心身の療養に充てさせていただきます。またnoteを通して日々還元していけるよう、生きます。