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ライブレポ2024 #1 "西憂花 1st ONEMAN LIVE 『RERAISE』" 2024.2.17 @下北沢ReG

共鳴したい甘い響きの中、踊り乱れた人肌くらいの熱い夜

今年からライブレポートを書くことにした。ライブ中消化しきれなかった想いや、ライブ後の素の感情をそのまま残したいと思ったからである。
記念すべき第1回目は、2024年活動5年目にして初めてワンマンライブを行った、西憂花の『RERAISE』のレポートをする。

私が西憂花さんを好きになったのは、某邦ロックブロガーの記事である。新世代バンドの紹介の中で、唯一歌い手というか、ボーカロイドを紹介されていたのが西憂花である。その時記事で紹介されたいたのが、今回のライブでも披露された「ルラレル」という曲だった。

この曲を聞いた時に真っ先に思ったのが、「ライブを見たい」という感情である。私がいつもアーティストを好きになる条件として必ず「生で声を聞きたい、演奏を聴きたい」という思いがある。なので、ファーストワンマンライブがあろうとなれば、どこへでも駆けつけると決心していた。

そんな中告知された今回のワンマンライブ。嬉しくて仕方なかった。予定していた別ライブをキャンセルし、何としてでも行きたかった。

今日は本当に記念すべきライブなので、一曲ずつ感想を書いていくが、多分こんなこと今後はやらないと思うので以後お見知り置きを。
※時折歌詞の解釈等が入っていますが、私個人の解釈で本人の意図とは相違がある点があるので、私の意見として楽しんでいただけたらなと思います。ご了承ください。

会場の「下北沢ReG」

OPENの18:00と共に整理番号が呼ばれ、続々と会場に西憂花さんの新たな1ページに立ち会う人たちが流れ込む。ライブ前の独特な緊張感が漂う中、白幕が上がり公演がスタートした。

1. ファジーストラテジー

静寂の中The Openingというメロディーで聞こえてきたのはファジーストラテジー。「西憂花です!よろしくお願いします!」の言葉で始まったこの曲は1曲目に相応しすぎた。私の予想はAddicted to Lifeの順番か、三角窓→ディナーの繋ぎなのかなと予想していたが、Addicted to Lifeの繋ぎを見れると思うと鳥肌が立った。

今回の演奏はAddicted to Lifeバージョンが主体だったが、このライブを見据えてアレンジを加えたのだろうか。このファジーストラテジーの前奏も、このライブで1曲目に披露したいというイメージがあったからこそのものなのか。「今夜会いたいなんて言ったら 戻れないなんて具合に眩ませてよ」今夜会いにきた我々にとって、西憂花に眩ませられる夜になるに違いないと確信した。

「この流れなら次の曲は・・・」と期待を膨らませていたら、予想通り私が西憂花さんと出会った、作曲に目覚めたきっかけにもなった曲が聴こえてきた。

2. ルラレル

きたーーー勝手に体が動くタイプのスルメ曲。なんせAddicted to Lifeバージョンの前奏が好き過ぎる。この前奏を聴けただけでチケット代以上の価値を回収できたと言っても過言ではない。

急に大人になったときに出る悩みや不安を、思いのままに描いた一曲。「腹5分目の不機嫌飼い慣らし ショートカット連なって不安視」自分の思い描いていたことが本当にあっているのか、正しい道を歩めているのか、ストレスとうまく付き合えているのか。今の自分の心情に寄り添ってくれるような一曲である。それでも「ここにいるよ」ってことを交信して、自分の居場所を確立したい。どんな悩みがあっても、この曲が寄り添ってくれるおかげで救われる気がする。

3. マーガレット

会場の熱気もだんだんと上がってきて、各々の音楽の楽しみ方が垣間見えた中、聞こえて来たのは人間誰にもあるネガティブさを受け入れてくれるナンバー、「マーガレット」。この曲のMV本当に好きなんですよねえ。

私はあまり歌詞をじっくり聞くタイプではないのだが、ルラレルとマーガレットに関しては自分の心情と照らし合わせられる部分があって、支えとなっている。
自分の思いがどう伝わるのか、相手にどう聞こえているのか、コミュニケーションが多様化される現代において考えさせられる。「言葉」に関して悩みを持つ人は少なくないだろう。

4. 時ぐすり

私はたまに趣味でピアノを弾くことがある。この曲のコピーをやろうと思っているのだが前奏部分でいつも引っかかる。今度ちゃんと練習してコピーしたい。

恋愛や人と人との繋がりの中で、楽しいこともあれば辛いこともある。人との繋がりで残った傷跡は、結構癒えるまで時間がかかる。人との繋がりで感情を動かすのはやはり言葉だと思っている。過去の傷や痛みを忘れさせる、そんな言葉があればいいが、都合のいいものなんてないだろう。言葉について歌う「マーガレット」との繋がりを考えると、この2曲はお互いに共鳴しあっていて聴いていて楽しかった。

5. citron

MCの後、Addicted to Life 2でお馴染みのメロディーが聞こえてきた。人気度の高い代表曲「citron」。歌詞で描かれている相手は、届きそうで届かない、でもずっと繋がっていたいという甘酸っぱい青春を描いたようなナンバーである。緊張して言葉がうわずった理由を「レモン味の炭酸のせい」と表現するあたり、取り留めない思いが感じる。個人的にUNISON SQUARE GARDENの夏影テールライトという曲と場面が似ているなと感じた。

私は後方あたりから見ていたため、ステージ上の雰囲気があまり見えなかったが、時折見せる憂花さんの表情から緊張が少しずつ解けていったように見えた。
にしても、「喉から音源」とはこのことかというくらい歌声が安定している。

6. 金星プリズナー

私がこの公演を見る時に一つ目標としていたことがある。それは2ビートの曲の時にツーステを踏むことである。この曲の後半と、シュガリィ・エピローグで2ビートのフレーズがあるのでそこでやろうと決めていた。

それはともかく、この曲は自分の中で「進化系citron」と思っている。citronの届きそうで届かない思いからさらに過激(?)になっているからだ。「どうしようもなく寂しい夜に君が似合いなの!」「消えないで行かないでちゃんと目を見て愛して 上澄の感情だけで私を掬わないで」でもこれくらい振り切った言葉選びの方が、citronとの温度差があって好きである。

後半でしっかりとツーステを踏んだところで、もうすでに汗をかいていて水分が足りなくなってきた。

7. 分水

この曲のじわじわと煮詰まっていく感じがたまらなく好きだ。だんだんとトンネルを潜り抜けるような、暗闇の中から太陽が差し込んでくるような、森の中彷徨っていたら抜け道が出て来たような、何というか、そんな感じ(?)。この曲のテーマのような単語である「分水嶺」という言葉から、何かから抜け出す感じがするのは間違いではないのだろうか。今回の演出でも、彩度の高い光で「分水嶺」を演出していてこの曲の雰囲気にマッチしていた。

8. 深海ディスタンス

何でこんなにもテンポの良い切ない曲を作り出せるのか。個人的に分水→深海ディスタンスの繋ぎは音源から気に入っている。何かから抜け出そうとしているところから、深海へと引き込まれ混沌の渦へ。西憂花の歌声はもちろん、バンドメンバーの演出演奏ともに引き込まれるものがあり、この曲の深い海で感性が狂わされるような感覚だった。狂わされたように体は揺れることを止めない。

9. シンデレラ

2023年個人的ベスト曲。去年1番聴いた曲。この曲を1番最初に聴いた時の感動は忘れられない。歌声と言葉選びが良過ぎる。

これまで「言葉」と「人との繋がり」について憂花さんの曲から色々と解釈していたが、この曲はそれら全ての集大成のような曲だと感じている。SNSで発する言葉を「指先の魔力」と表現しているのではと勝手に解釈できた時の感動も忘れられない。時ぐすりで過去の傷や痛みを忘れさせるには、「愛みたいな言葉」で傷をなぞることで許してほしい。今までの全ての想いが詰められているのではないか。

この曲最大のポイントであるラスサビ前の「正して、壊して、愛して」を聴いた時、頭の先から浄化されるような、心の奥に想いが届くような、改めて西憂花の「歌声の魔力」を見せつけられた。

10. 新曲

この新曲披露前にMCを行なった憂花さん。ここでX(元Twitter)で予告していた「どこから来たか」コーナーの時間が始まった。北は東北から南は大分まで、今日のライブを待ち望んでいた人がいたようだ。今日来れなかった人たちの思いを背負い、思う存分後半戦楽しみたい。

憂花さんが「靴が可愛いから見てほしい」とのことで、必死に足を上げようとするが流石に後方の方達まで届かない。すると前方の方からしゃがんで後方の方にも見えるようにしてくれて、流石に民度が高過ぎる暖かい場面に遭遇した。あの時の写真撮っている方いたらください。そして後方から「見せてー!」と言ってしゃがんでくれて本当にありがとうございます。

MCも終わり後半戦突入。Xで小出し情報をいくつか公開してた憂花さん。もう楽しみすぎてじっとしていられない感があった。その中で、誰も聞いたことの無い新曲をやりますと言う情報が公開されていた。BPM122のダンスミュージックが後半戦の幕開けを告げた。

会場はダンスホールかのように揺れながら、それぞれの楽しみ方で未発表曲を楽しんでいる。シンデレラで落ち着きが見られた場内から一気にラストスパートをかける。思い想いに手を挙げたり、体を横に揺らし、音楽を感じるままに表現していた。本当にライブハウスという空間が好きだ。それぞれの楽しみ方で、それぞれの温度で、人肌くらいの温度で熱い夜を過ごした。

11. 空虚なロマネスク

投稿活動一本目の曲。いわばデビュー曲である。この曲が投稿されてから4年でライブハウスを完売させている。動画投稿やグッズ販売などの活動もあるが、お話しした時に垣間見える人間性も人を惹きつける要因の一つではないだろうか。

このライブにぴったりの楽曲で、副題に空虚なロマネスクと書かれていても遜色ない輝きを放っていた。新曲とのテンポ感もマッチしていて、クライマックスへじわじわとボルテージが上がっていくのが伝わる。軽やかにステップを踏みながら揺れる会場で、デビュー当時の思いを馳せながら歌う憂花さんの表情がとても美しかった。

12. 召しませミザリイ

ここからクライマックスへ。Addicted to Lifeでもお馴染みのつなぎから止まらないジュークボックス。会場のボルテージはMAXに近い。なんせ人生楽しんだもん勝ち卍なんで。ここもサビの2ビートでツーステを踏みまくり遊び続けた。この新曲からクライマックスまでの繋ぎめちゃくちゃ好きなのだが、空虚なロマネスクからの繋ぎに関してはAddicted to Lifeのなかでこのライブを見据えて発表したものなのか。ますますAddicted to Lifeに仕掛けられた魔法の渦に溶け込まれていく。でもそんなんわかんなーーい、と真相は解かないまま楽しんでいた。

13. ディナー

遂に本編ラスト。正直ここまできたら歌わないのかなと思っていたが、こんな夜にもってこいの楽曲がラストを飾った。今日のライブはこの曲なしでは語れない。最初のフレーズにもあるように、美しい夜の終わりには今日のライブを頬張っている今が相応しい。それくらい特別な日になったと言える。

ああ、ずっと変わらずこのままこの幸せが続いてくれないだろうか。これを書いている今もライブのことを思い出して物思いに更けている。今日来ている人、来れなかった人、それぞれいろんな思い出がある。悲しいことも辛いこともある。でも、今日くらいははっちゃけて踊り乱れてもいいんじゃないか。このライブの題となっている「RERAISE」には何度も立ち上がるという意味がある。今日のことや、西憂花さんがいるだけで、何があっても立ち上がれる気がする。だからこそ今日まで生きて来たご褒美として、私からのディナーとして、今日のライブがあると捉えることができた。

次のライブはいつになるかわからないが、どうせまた私は西憂花が与えてくれるディナーを頬張って美しい夜を過ごすに決まってるので、この幸せが永遠に続くことはなかろうと、何度も手を取り合って生きていきたい。

わがままなディナーの後で、たどり着いたふたりのラストシーン

アンコール

1. ワンルームニトロ

ディナーが済んだと思えば、おかわりの時間がやってきた。大御所はアンコールまで時間がかかるという話があるらしい。思い返せばそうではあるが本編終了から何分も立たずにアンコールが始まるバンドもあるし様々ではある。

アンコールは3曲。本編の波を乗りこなしていくようにワンルームニトロが披露される。熱気はMAXを叩き出しており、ジャンプや揺れ方が最初よりも断然違うように見えた。今回のライブではライブハウス初参戦の方や、ライブがそもそも初参戦の方などが多く見受けられた。初めの方はその空気感に上手く乗れていない感じもあったが、もうここまで来たら思う存分飛び跳ね、各々の熱量で音楽を感じていた。やっぱり、この空間が好きだ(2回目)。

2. 夏の日

この曲、本当に可愛い。「あなたの生きる日々の中喜怒哀楽の理由まで ほんとはね、一つ残らずあたしで埋めたいの・・・なんて言えたら!」なんて可愛過ぎる。こんなこと言われたいし好きな人に思われたい(?)。

そんな妄想は置いといて、夏の青春というか、爽快感あふれるフレーズで掻き鳴らすこの楽曲。でもただ爽やかさを演出しているのではなくてどこか切ないような、もどかしいような言葉選びをしているのが西憂花の楽曲の特徴だろう。まだ、まだ、まだのところで心に秘めていた想いがじわじわと上り詰めてくる感じを演出している。

3. シュガリィ・エピローグ

Addicted to Life 2の音源通り間髪入れずに始まるこの曲で、「RERAISE」は終幕する。この繋ぎを初めて聴いた時の衝撃というか、ピースがハマった気持ちいい感覚は忘れないだろう。それが生で聴けるこんな幸せなエピローグはない。

もう言うこと無いくらい完璧な構成だったが、やっぱりこの曲は名曲だなと改めて感じた。キーを下げたアレンジではあったが、夏の日から最後まで疾走感を止めず、ここまでよく歌い切れるなあ・・と感動した。「この幸せが永遠に続くことはない」「最期のディナーになるなんで冗談にも程があるぜ」と終わりを告げるような本編ラストだったが、「終わりなんていっそ知らないままでいいから ずっとここに居て」と今日の終わりを寂しがるような表現だったのがまたよかった。今日来ていた人は特に、「ずっとこの空間にいたい」と思っている人も多くいただろう。

約2時間の「RERAISE」はこうして終わりを告げた。今日の「おやすみ。」ほど心地よくて離れたくない夜はなかった。

ライブ後のラーメン、通称ラ後のラで寄った「ゆきかげ」

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