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ニコニコ学会βオープンゼミ(1)「研究シーン」を考える

「第2回ニコニコ学会βオープンゼミ」なるイベントに参加してきた。
(当日のまとめはこちら  )
10名程度のグループであれこれ議論する会なのだが、
あらかじめ決めたテーマで話すのではなく、
その場で話したい事柄を持ち寄って、

1:似た者同士でグループ分け
2:30分くらいで濃く話す
3:軽くまとめて次のグループ分けへ

これを繰り返す“アンカンファレンス”という形式だ。
ミュージシャン同士が集まってアドリブで演奏する、
JAMセッションみたいなもんです。

休憩時間が数分と短すぎるのにはちょっと参ったけど
(ドワンゴビルの14FからB2へダッシュして一服して戻るのが
ヘビースモーカーにはキツいw)
10人程度で30分、てのはちょうどよい”話し足りなさ”だった。

【C-2「研究シーン」のメディアを考える 他】

議論の概要は、
・DIYバイオをはじめとして、
 在野で趣味的に研究してる人は実はけっこう多いよね。
・でも他の分野とのつながりが薄かったり、
 そもそも知られてなかったり、タコツボ化しちゃいそうだよね。
・研究会そのものに加えて、その周りで楽しんでくれる人々の
 環境が整ってないよね
・こうした「研究シーン」を取り上げるメディアがあると楽しそうだね。
・こんなのやりたいねー(タイムアップ!)
という感じでした。

イベント座長の伊予柑氏から
「感想は各々ブログとかに書いてね!」と言われたので、
せっかくだから書き溜めてたものも引っ張りだしながら
自分が参加したセッションの感想と補足を書いておきます。

【目次】
1:「(野生の)研究シーンをつくりたい」動機は不純でいいじゃない。
 →そもそも僕が「研究すること」に興味を持ったきっかけについて。

2:研究文化に必要なもの
 →過去のゆむたんの講演を参考に、研究文化に必要な要素を整理する

3:野生の研究シーンはもっと自由がいい。
 「野生の研究」と「バンド文化」

 →実は似ている2つの文化。喩える事で楽しそうな世界が垣間見え・・

4:”ちょっと外”との関わりを増やす
 →既存のコミュニケーションでは足りなくない?メディアについて考える

5:「研究雑誌」というジャンル(≠学会誌)のメディアを作れないか
 →音楽雑誌を参考に、研究メディアのアイデアいろいろ

6:妄想はできるけど実装はきつい。のか?!

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1:「(野生の)研究シーンをつくりたい」
  動機は不純でいいじゃない。

僕は芸術系大学出身、出版社勤務→映像制作会社→DIYフリーランスという
アカデミアとは無縁の生活を送ってきた。

超会議でたまたま見かけて参加したニコニコ学会βの活動を通じて
(僕がスタッフで参加しはじめたのは2013年の第3回から)、
研究者たちを間近で見ることになる。

最初は「すげーなー」「かっこいいなー」から
だんだん「俺もなんかやりたいなー」に変わってきた。
「趣味だけど研究やってます」と言ってみたい。それなんかカッコいい・・
というなんともフワフワした動機だ。

世界の謎を解明するのだ!とか人類の発展のために開発するのだ!とか
既存の学術研究の世界は〇〇だから△△すべきである!
みたいな使命感は申し訳ないがちっとも湧いていない。
そもそもそんな知識も無い。
だからニコニコ学会の運営メンバーとして研究者のそばにいても、
軽はずみに自分も研究したい、なんて口にしたら
怒られちゃうかもなと思っていた。

そんなふうにもじもじしていた時に、
第1回ニコニコ学会βシンポジウムの
「研究100連発」アーカイブを見ていて、
明治大学総合数理学部 先端メディアサイエンス学科の
宮下芳明先生(@HomeiMiyashita)の叫びに近いプレゼンが突き刺さった。

「専門分野は関係ないんです。
 我々の日常生活というのは研究活動そのものなんです。
 どういう風に話せば、あの人と仲良くなれるんだろうか
 どういう風にこのお金を使えば、
 僕はおいしいものが食べられるんだろうか
 昨日より今日を幸せにするにはどうしたらいいんだろうか
 僕たちは毎日、いろんな探求や創意工夫をしていて
 それはすなわち研究活動なんです。」
 (発表の様子はこちら  )

「あなたもやっていいんだ」と言われた気がして、すごくうれしかった。
研究者は僕にとってカッコいいのだ。
そういう人たちがたくさんいたら楽しそうだ。
それで願わくば自分もカッコ良くなりたいのだ。
そんな不純な動機でいいのだ。

じゃあ、一体何を研究するのか。という話になるが、
それについてはそのまんまである。
「研究が日常にある世界をつくる」
つまり「野生の研究シーンをつくるためにあれこれやってみる」
というのが僕の研究だ。

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2:研究文化に必要なもの

ちょっと前に、こんな講演があった。
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2014年6月14日(土)政策研究大学院大学にて
『誰もが研究する時代の到来 
〜これからの未来をつくる「野生の研究者」の生態に迫る〜』
講演者は湯村翼( @yumu19 )さん。
オーガナイズは山田Pこと山田光利( @2ndlab )さん。
講演のまとめブログはこちらをご参照 
んで当日のtogetterまとめはこちら 
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上記講演は”プロ・アマ問わず、
生き方としての研究者を選んでいる人=野生の研究者”の
「生態」を紹介する話・・というよりは、
野生の研究文化をより活発にするためにはどうしたらよいのかについて、
既存の学術研究文化(大学や研究機関)とIT界隈の文化を参照しながら、
考えるヒントを投げかけてくれるというものだった。
生き方としての研究文化=野生の研究文化 を活発にするために、
“野生の研究文化”を”既存の学術研究文化”と照らし合わせてくれている。

既存の学術研究文化(大学や研究機関のオフィシャルな研究)を
ここでは「公式研究」と呼んでおこう。

公式研究において
・学会、研究会:コミュニケーション
・論文:アーカイブ
・査読:質の担保

が大きな役割を果たしているのだそうだ。
(詳細は湯村さんの記事をご参考ください)

先の宮下先生の言葉を借りつつ、研究するとは何かを言い換えると

【研究すること】
・目的のために創意工夫をすること
・そのために過去を紐解き、工夫を積み上げること

【コミュニケーション】
・議論を深めること
・成果を発表すること

【アーカイブ】
分野を問わず成立する、普遍的なフォーマット

僕は、野生の研究文化を活発にするためには、
上記に挙げた「既存の学会・研究会」のコミュニケーションだけだと
足りてない、というより、アプローチが違う
と思っている。
気軽じゃないからだ。がんばって関わらなきゃいけない。
本人はそれでいいけど、ちょっと側にいたい人にはキツい。

もっと日常に「研究している人」が存在するためにはどうしたらよいのか。

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3:野生の研究シーンはもっと自由がいい。
 「野生の研究」と「バンド文化」

僕にとって日常にあって、カッコいいと思う文化は「バンド文化」だ。
これが意外と野生の研究シーンにマッチする。

【研究 → 個人練習】
・目的のために創意工夫すること:個人練習すること
・過去を紐解き積み上げること:コピー(模倣)をして技術を磨くこと

【コミュニケーション → バンド活動】
・集まって議論を深める:スタジオでバンド練習する
・研究会や学会での発表:ライブハウス(研究会)やスタジアム(学会)でのライブ

【アーカイブ → 譜面】
・普遍的なフォーマット:楽譜(初心者でも読めるTAB譜もある)

【査読 → ??】
・質の担保:考え中(ここはもっとみんなで話したいなあ)

突然バンド文化を引き合いに出したが、
単なる思いつきではなくて「シーン」や「ブーム」を考える上で
有効だと考えられるからだ。

なかなか似ている「研究」と「バンド」だが、
後者の方がシーンとして成立している。
それはなぜか。

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4:”ちょっと外”との関わりを増やす

シーンとして成立するには、
「直接関係しないけどおもしろがっている人」が不可欠だ。
音楽で例えるならファンやリスナーの存在だ。
”ちょっと外”とのコミュニケーションと言える。
そこで重要なのが「メディア」の存在だと考える。

例えば音楽で言うと、音楽雑誌の存在がわかりやすい。

例)
プレイヤー雑誌:GIGS/Guiterマガジン など
音楽を「演奏する人」が主な読者。
旬なアーティストの特集も使用機材の紹介やテクニカルな話題が多い。
演奏技術のためのTIPSも多く、読者ページでは
メンバー募集(メンボ:当方ボーカル。G,B,D募集)、
ライブ情報などが多い。
読者はそのアーティストの「演奏技術」を模倣する。
雑誌ごとに読者の技術レベルが自然と分かれる
(初心者:Bandやろうぜ・GIGS / 中級〜:Player・Guiterマガジン など)

ファン雑誌:B-Pass/Rockin’on など
音楽を「”演奏する人”が好きな人」が主な読者。
アーティストのファッションや生い立ちなどのコンテンツが満載。
好きな人の音楽をより楽しく味わう事や、
本人を知る事で近づいた気持ちになれる。
読者ページでは友達募集(友ボ:〇〇好きな人、いませんか?・・同じアーティストを好きな人とつながる)などが多い。
読者はそのアーティストの「容姿・生き様・スタイル」を模倣する。

批評雑誌:MUSIC MAGAGINE/レコードコレクターズ など
音楽を「聴く人」「演奏する人」が主な読者。
アーティスト本人によるアルバムの全曲解説や、
甘辛様々な批評家によるクロスレビューが特集される。
「この楽曲はイギリスの〇〇の影響を受けている」
「メンバーが変わった事により△△のような変化が生まれた」
「1980年代アメリカの〇〇のジャンルから派生している」など
特定のアーティストだけでなく、過去や異分野の情報を
芋づる式に得る事ができる。
マニアックなニュース(あのバンドのレコーディングエンジニアが
変わった、など)もコアなファン(音楽を演奏していない)に刺さる。

野生の研究シーンにおけるコミュニケーションには、
単に研究者同士の研鑽だけではなく、
「始めたい人がとっかかりをつかめる」
「やってない人が楽しめる」
「深く知る事ができる」

といった多様な関わり方が必要だろう。

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5:「研究雑誌」というジャンル(≠学会誌)の
  メディアを作れないか

既存の学術研究は、様々な事情もあるだろうし、
媒体の持つ意味も社会に伝え広める意義も一般媒体とは
ちょいと異なるようなので・・
(掲載される事の「大きな意味」つまり科研h(ry とか。
 ・・おや、誰か来たようd)

野生は公式を追いかけるのではなくて、
もっと別のアプローチをすればいいと思う。
だって趣味なんだし。ぶっちゃけて言えば生産的な消費だし。
だったらいろんな楽しみ方ができるコンテンツがあっていい。

それで今回のアンカンファレンスでは、
ちょこっとだけそのアイデアが出た。
・野生の研究クロスレビュー(1研究あたり200字くらいでの評価)
・野生の共同研究者募集(当方地理学。データ分析エンジニア募集 とか)
・野生の研究ニュース
・DIY研究機材解説(あのDIYバイオさんの顕微鏡大公開)
・野生のライナーノーツ(あの研究者はあの先生の下にいた とか)

などなど。ほら、面白そうじゃんね。

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6:妄想はできるけど実装はきつい。のか?!

で、やっぱり議論で出たのは
「そのコンテンツを作るコストはどうするか」という問題。
これはハッカソン的なイベントにすると面白いかもしれないし、
CGM的なアプローチで作れないかな、というアイデアも出た・・

というところでタイムアップ。

具体化したい人、いると思うんだよね。
ガレージでやらない??

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