見出し画像

おしぼり事件

板前修行時代のことは、今でも鮮明に覚えている。

このエピソードは、大人になって初めて人前で泣き崩れた話。

おしぼり

弟子はぼくを含めて3人いた。
3人とも春から新しく修行が始まったので横並びでした。
掃除などの仕事も全部3人で行っていました。

数少ない仕事の一つがおしぼりを作ること。

その日のお客さま用に、おしぼりを作って準備しておくことが
弟子の仕事でした。

ファミレスなどではよく袋に入ったおしぼりを使っていますが、
ぼくの修行していたお店では、毎日タオルを石鹸水で洗って、
きれいにしたものをきれいに丸めて温めておいていました。

事件その日

その日は確か、突発的な来客があった日だったか。
どういうわけかは覚えていないのですが、

前日余分に作っておいたおしぼりをそのままお客さまに
出してしまったんです。

まあ、大丈夫だろうという気持ちで。

営業後に、残っていたおしぼりを確認した親方が血相を変えていました。

これ、昨日のだろ!!!!
おまえら、おれの店を潰す気か!!!!!
ふざけんじゃねえぞ!こら!!

茫然と立ち尽くすぼく。

ヒートアップしている親方はおしぼりをぼくに投げつけました。

やってしまった、、、、

やる気満々で掃除も食器洗いもやっていて、自分なりに丁寧に
やっていたつもりが、全然できていなかったという状況に愕然としたのを
覚えています。

物凄い緊張感で日々やってきて、積み重ねていた信頼を一気に壊してしまう
出来事でした。

その時は気が張っていたのですが、帰りの東西線でつり革につかまりながら、泣き崩れたのを今でも覚えています。

これから自分はダメなんだということを嫌と言うほど思い知らされることになりますが、おいおい書いていこうと思います。笑

がん!がん!がん!

「これくらいなら大丈夫だろう。」
素人が考える勝手な見通しほど怖いものはありません。
いかに恐ろしい選択を平気でしてしまっていたか、今なら少しわかります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?