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映画記#1 「土を喰らう12ヵ月」をみる その2

映画の余韻を楽しんでいる。

主演のジュリーはお人好しな人柄で、なんでも頼まれると引き受けてしまう。義母のお葬式も、義妹からのゴリ押しで一切を担当することに。

お通夜の準備までなんとか終わったと思ったら、通夜ぶるまいも準備しなくちゃ!と慌てて用意を始める。そこは料理が得意なジュリー(水上勉)。テキパキと通夜の段取りも進めながら助手のマチコに手伝ってもらいながら、料理を作っていく。

中でも僕が目を引いたのは、胡麻豆腐を作る部分。

胡麻の皮を剥いてから、丁寧に洗って天日干しにする。
乾いたら胡麻をよく擦って、出汁と合わせる。
そして葛粉と一緒によく混ぜて、火にかける。
すると、だんだんと粘りがでてきて、コシが出てくる。
調理のポイントは木ベラでよく混ぜること。鍋肌に叩きつけるようにして、
空気を入れるようにひたすら練り上げる。

ジュリーは片足に重心を乗せて、体全体を使いながらリズム良く木ベラを動かしていく。

このシーンを見て、ぼくの記憶が紐解かれた。
ああ、割烹料理の修行時代。
ほとんどが掃除に明け暮れていて、調理の指導をいただいたのは、ごくわずか。その一つが”葛きり”だったのだ。

胡麻豆腐より単純。
葛粉と水を混ぜてから火にかける。
強火にかけて、木ベラで混ぜていく。3-4分はウォーミングアップ。
少しずつ固まり始めたら、一気呵成に木ベラを動かしていく。
ここで弱気になって(焦げを気にして)、弱火にしてはいけない。
あくまでも中火〜強火で木ベラを動かす。ここまできたら止まることは
許されない。力が尽きることも許されない。ひたすら練りまくる。

火を調整するのは兄弟子だ。

最初に葛きりを教わったとき、
嬉しくて嬉しくて我先に教えてほしいと手を挙げた。
でも、本当は、葛きりを作るのは地獄だった。

練り上げる時間が長すぎて、あっという間に手にマメができる。
火力が強いので、コシが出てきた葛が飛び、腕が熱い。
練って練って練り上げるうちに腕はもうパンパンである。
でも、後ろで兄弟子が見てるので休めない。
凄まじい料理だと感じた。

それで、葛きりをやるときは、次からはどうか指名されないでほしいと願っていた。

でも、できた葛きりはきれいだった。(食べられなかったけど。)
赤坂には虎屋があって、そこでも葛きりが食べられる。
味を知るべきということで、食べてこいと親方から言われて行ったけど、めちゃくちゃうまかった。

そんな練り上げる作業が頭の中でオーバーラップしていたところで、
胡麻豆腐の素を店頭で見つけた。

見つけたのはわざマート。
最近オープンしたお店である。

https://z-p42.www.instagram.com/wazamart/

客人が今夜来るということで、思わず購入。
久しぶりに練り上げてみたくなった。


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