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入院したり、手術したり

  もうそれは十年以上も前から症状は現れていたのだけど、原因が全く分からなかった。腹痛である。腹痛つっても軽いものじゃなくて、それが始まると立って居られなくなるくらいの激痛。キューンと締め付けられるような痛みで悶絶する。横になると少し楽になり、翌朝には噓みたいに良くなっている。その頻度も一年に一度か二度だったものだから、そんなに気にしてはいなかった。
  それがアータ、昨年の11月頃からひと月に2、3度になって、オイオイオイオイとなっても翌朝とか、やもすれば30分程横になってたら
「嘘ぴょーん」
とでも言うみたいにケロっと治ったりして、そんなもんだから、まっいっか!と、のらりくらりやっていたのだけど、今年の2月頃からは洒落にならないくらいの頻度になり、その痛みが3日続いた時もあった。最早これはなんかアカンやつやなと内科胃腸科の病院へ。
  病状を説明し、エコーやらの検査をし、どのような病名が告げられるのかとワクワクしていたらば、「あのね、アータね、ンコとかシッコとか屁こいたりするやろ?したらね、大腸がねいっぱい動くんよ。ユウノウ?したらね、そん時に痛みを伴うんよ。痛み止め出しとくから痛ぁなったら、それ飲め」とドクターに言われ、言われたけど、そんなんでこんなに悶絶するような痛みになるのん?と疑問を持ったものの、ドクターが言うことだし、素人の自分にはわからない何かがあるんやろねと、薬を貰ってキターク。
  一週間後、またきた激痛!でも大丈夫。だって内科胃腸科のドクターから薬が出とるから、これ飲めば、ホレ治まる。あり?治まらない。痛いやんけゴラぁー。なんやこの薬効かんぞ、しかも腹が張っとるぞ、で痛すぎるぞ、どうなっとんや?
  次の日また治まったものの、夜には再び痛み。風呂へ入ると水圧の関係か温度の関係かわからんけど楽になる。のだけど風呂から上がると
「わっしゃっしゃしゃ、さっきの倍の痛み開始!」という悪魔の声と共に痛みの倍返しが始まる。それは、痛みに耐えながら身体を拭いているときに、目の前の洗面化粧台の鏡に映った自分の姿に違和感を抱いた。
あり?チンコの上んとこ
なんか盛り上がってなくなくなくね?←どっち
つか
ああああああああああああああ
ゆで卵くらいボコって出とるぅぅぅ
なんやこれぇぇぇぇぇ
もしかしてコレってば脱腸ってやつやないの?とそのゆで卵を、ちっとアレして押してみると、なんと!ニャンと!身体の中にフェイドイン!
あり?入った!入ったら痛くなくなくなくね?
となった土曜日の夜。しかしまた翌日曜日には痛みが出て、明けて月曜日先の内科胃腸科へ。
「こうボコってなって、やんややんや」
とドクターへ説明すると、内科胃腸科のドクターは身体も見んと
「あ、それなヘルニアや。うちやないから外科へ行きいや」
と、そう言われた。つか、あんた散々診てわからんかったのんか?それともジャンル違うやつは、はなっから眼中にないのんか?とか言うても痛みは治まらないから、総合病院の外科へ。
「手術やな」
と、ソッコーで手術が決まった。
のだけど、入院や手術に伴う色々な事柄を説明受けてた時に看護師ちゃんがオモロイ事を言った。
「確認やけども、まさか歯にグラグラしとる箇所とかないよな?」
え?歯?いやあるよ。下の前歯2本グラグラやけど。
「えー見してぇ(はあと)」
ホレ!とマスクを外し見せると
「うーん。微妙(はあと)」
つか、手術とグラグラの歯、なんの関係ありますの?
「あーのね、さっきも言うたけんど、手術はねぇ全身麻酔でやんねん。つことはねぇ人工呼吸器とか付けんねん。そん時にねぇ、口をガァて開けんねん。でねぇそん時ねぇ機械みたいのが歯に当たる事あんねん。でねぇそん時ねぇ歯がもげたらねぇ、入ってまうやん?したらねぇおおごとになんねん。だからねぇちっと院内の歯科で耐えられる強度か確かめてきてクリクリ」
そう看護師ちゃんが言ったものの、院内の歯科は診察を終えたくらいの時間帯だった。しかーし看護師ちゃんてば、なんか歯科へ内線をかけてる。何の必殺技を出したのかは定かではないけど、歯科が診てくれる事に。そそくさと歯科を訪ねると、そこには宇宙人みたいなルックスの歯科医が此方を睨んで立っていた。たぶんメイビー、こんな時間はもうキャバクラなどでお姉ちゃんに囲まれながら酒を煽っている筈なのに、外科からの必殺技内線によって足止めされた宇宙人みたいな歯科医はキャバクラの恨みであるわたくしを睨んでいた。
「あのっすね、手術になりやして、で、全身麻酔って事になりやして、で、人工呼吸器なもんだから、この下の前歯2本の強度をちょっと診て貰えますか?」
と、言い終わらないうちに
「椅子倒すぞアホンダラ、口開けぇやボケ、ああこれな、はいはいはい」
とか言いながら口の中をこねくりまわし、はぁっと深いため息をついたあとで
「もう今日はキャバクラ諦めた。諦めたから歯抜したる。これも、これもアカンねん。そんなら4本抜くしな」
そういうと麻酔の注射を歯茎へゴンゴン打ち始めた。ちょい、とか思ってる間に4、5ヵ所。痛いっつーの。で、ゴリゴリいわせながら4本抜歯!さらに歯茎を縫合。キャバクラの恨み恐るべしと思っていたら
「縫うたからな、抜糸もやるねん。ええと手術するんやな?それが4日かぁ、そんなら翌日5日に抜糸や」
え?マジで?手術の翌日俺動けんの?とか思いつつもキャバクラの恨みやからしゃーないかと再び外科へ。
「歯、大丈夫やった?」と看護師ちゃん
「4本イカれたわい」とわたくし
歯を見せると吹き出しそうな顔である。笑っている。完全に。
で、後日入院の日を迎える。すると担当の看護師君が現れなんやかんやと説明をする。からの信じられない事を言う。
「今回、お腹の手術なんでヘソのゴマを取るよん」
は?嘘やろ?というのもわたくしには決して他人には触られたくない部位があって、自分でも触れない。それが、つむじ、胸付近(乳首も)、ヘソの3ヵ所である。そのひとつであるヘソにメンボーでゴリゴリやると言われビビりまくった。
「嫌なら自分でやる?」
そう言われ、メンボーと何か油みたいなのが入った小瓶を渡される。ちとやってみるも、マジで無理。つかゴマとかなくなくなくね?←
たぶんメイビー俺のヘソは綺麗で間違いない。暫くすると看護師君がやってきたから、「いやぁビックリしたぁ。あのね俺のヘソね、ゴマとか無いみたいよ」と告げると「確認したるわ」とヘソをガン見。
「ようさん溜まっとるがな。きったな」
と言ってゴリゴリやられ、わたくしは失神寸前だった。
「なんでヘソが駄目なん?変なの」そう捨て台詞を残して看護師君は去って行った。また暫くすると別の看護師ちゃんがやってきて血圧や熱や指のとこにピコって付けるやつなんかを測定して帰り際
「全身麻酔わーっとるよな?人工呼吸器やしな、で、ワレのそのきったない髭、剃るんやろな?いつ剃るん?」
と、これまた訳の分からない因縁をつけてきた。
「髭と手術に何の関係ありますのん?」
「アホか?人工呼吸器付けるんやろ?したらそのきったない髭が中へ入るかもしれんやんけ?したら肺炎とかなるかもしれんやんけ。とっとと剃れ」
だったら歯抜く時とかに言えよなぁとかブツクサしてたら、看護師君が笑顔で電動シェーバーを握りしめやって来た。そしてそれを手渡され、十数年ぶりにツルツルになる。ここまで、抜歯、ヘソグリグリ、髭剃りと何か釈然としない行為を強制させられたわけだけども、ひとつ気になっている事柄があった。しかしそれは手術当日になっても何も言われない。お腹をきる時にやる事。それはチン毛の処理だと思っていた。チン毛ツルツルになるんかなぁと。手術室へ到着しても、手術台に横たわってもチン毛はスルー。手術台の上で麻酔医さんなんかとフランクに話をしていた筈なんだけど、目覚めると手術は終わっていた。なんか夢をみていた。起こされ、手足などの動きを確認してから病室へ行くのだけど、手術チームの仕事はここまでで、当然病室へは看護師ちゃん達が運ぶらしいのだけど、俺の受け取りに来てないみたいだった。オイ!と心のなかで突っ込みを入れたのは言うまでもない。その夜麻酔が解け、痛みに悶絶していたのだけど、何となくチン毛はあるみたいだった。それは翌朝だった。痛いのに点滴しとるからシッコは出るし、ベッドとトイレの往復を夜中に何度かやり、ようやく少し痛みがひいてきたかなという頃、違和感を覚えた。
「なんかチクチクする」
で、見てみた。ら、
ニャロメ!やりやがったな!
チン毛が中途半端に剃りさくられていて、それは例えるなら落武者みたいになっていた。つまり玉の方はモジャの助なのに、竿の根元付近はヤられていて、どう見ても落武者チンコになっていた。
で、その日(手術翌日の夕方)に歯科から呼び出しがかかって、だけど歩いて歯科まで行くのは辛いので、ホントサーセンつって人生初の車椅子での移動をやって貰った。車椅子押して貰ってなんだか申し訳ない気持ちと、ちっと恥ずかしい気持ちを抱きつつ宇宙人の待つ歯科へ到着ぅぅぅ。
今日も何かやりたそうな顔で此方を見てる。が、痛い身体を引きずるようにしてようやく治療台の椅子へ。今日は何すんのやろ?と思っていたらば抜糸だけだった。セーフ。
ちと金欠な事を話して、次の予約は8月末近くへと延ばしてもらい、再び車椅子にて病室へ。
で、病室にて一晩を過ごして翌日には退院。つか退院早くね?まだ痛いんやけど。からの自宅療養に入ったらば仕事のメールなんかがゴンゴンくる。いや出来んて(怒)。そんなんでフンガーフンガーなって、ホントはね三週間程は安静にしんなんのよ?結局退院から5日後には仕事へ。そんな今月。まだ完全快気とはいかないけど、なんとかやっておる次第。トホホ。

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