きっと、万引き家族。

いつもの駐輪場にたどり着いた。
やっと帰れる。

自転車に跨り、夜道をするすると進んで行く。

なんて気持ちのいい風なんだ〜。
昼間の暑さなんて忘れてしまうほどの風。


途中で自転車の灯りをつけていないことに気づき、ライトに手を伸ばす。

あれ?
ライトがない。

急いで、携帯の灯りをつけて確認するとハンドル横にとりつけたはずのライトが無くなっていた。

固定部分のプラスチックのところが、ギザギザになっていて、無残にももぎとられた様子。


すっごい苛ついた。

ひとのライトを盗むなって。

ぷんぷんした。

納得いかないまま自転車を漕いで、家に向かう。

誰だよ、もう!!

そんな時、映画館で観た万引き家族を思い出した。

あの小さな子どもたちが、生きてくためにハラハラしながらお店のものを盗むシーン。

万引きは悪いけど、あの子たちは生きてくためにしたこと。お店側が責めても、私は責められないなぁ、と思った。

そして、私の思考回路は不思議。

もしかしたら、どうしてもライトが欲しかった子どもが私のライトを持っていったのかもしれない。

私のあの白く光るライトがどうしても欲しかったのかも。

そんなことを考えていたら、さっきまで悶々としていた気持ちがすぅっと消えていった。

捉え方ひとつでこんなに気持ちが楽になる可笑しさを知った日。

結局、誰が持っていったのかは分からないけれど、もうあのライトが戻ってこないのは確実。

それなら、心のエネルギーがあまり減らない方を信じた方が、健康的だ。

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