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これを読めばイスラエルを語れる〜中級編〜パレスチナ問題

シャローム♡中級編では、イスラエルを語るうえで外せない『パレスチナ問題』にフォーカスしてお届けします。
アラブ諸国との根深〜い対立はなぜ起こっているのか?
読んでくださっている方の理解が深まれば嬉しいです。(学生時代に歴史を学んだ記憶が行方不明の私も調べながら完成させました。笑)

※イスラエルの基本情報については『入門編』をご覧くださいませ♡
https://note.com/ganganganchan/n/ne96a3a839618

"パレスチナ問題"はなぜ起きたのか?

原因はアラブ人とユダヤ人の対立です。アラブ人の住むパレスチナにユダヤ人国家のイスラエルが建国されてしまったため。
その発端は、第一次世界大戦時に中東を支配していた”オスマン帝国”を分割させたいがためにイギリスが行った3枚舌外交でした。

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当時は多くのユダヤ人が、キリスト教徒から"汚い仕事"と嫌厭された高利貸しなどの金融業を担い、アメリカやヨーロッパでじわじわと富を築いていました。
ユダヤコミュニティから資金調達をしたいイギリス人は、ユダヤ人が1番欲しいものを引き合いに出すのです。
それは、ユダヤ人が約2000年前ローマ帝国の侵略により離散するまで住んでいたパレスチナの地への国家の設立を支持する、というものでした。(バルフォア宣言)

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イギリスの3枚舌外交の行く末

戦争終結と英仏同盟国側の勝利によって、バルフォア宣言通りユダヤ人はパレスチナの地に続々と移住を開始。
さらに、1933年〜のナチスによるユダヤ人迫害・第二次世界大戦でのホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)が"ユダヤ人国家設立"を目指すシオニズム運動に拍車をかけるのでした。

当初イギリスは、アラブ人とユダヤ人の争いが激化しないように
ユダヤ人の受け入れ人数を定めていましたが、収拾がつかなくなり責任を国際連合に丸投げしてしまいます。

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国際連合は"パレスチナ人とユダヤ人の2つの国家創出(パレスチナ分割決議)”という折衷案を出しますが、納得のいかないアラブ系民族とアラブ諸国から猛反発が起こるのです。

そして、パレスチナを統治していたイギリスが困り果てて撤退した矢先に
1948年 ユダヤ人によるイスラエル建国!が宣言されるのです。

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こうしてイスラエル建国と同時にアラブ諸国との対立が深まり、第一次中東戦争が勃発。
それから中東情勢は、資源・宗教・民族問題など様々なことが絡みあい複雑化し、第四次中東戦争にまでわたるのです...。

意外と報道されていないパレスチナの現状

イスラエル建国時に土地を奪われたパレスチナ人は、周辺国(ヨルダン・シリア・レバノン)に逃れた人々を含めて現在は約630万人いると言われていて、世界最大の難民グループなのです。

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そのうち、イスラエルのパレスチナ自治区(赤枠内)には約250万人のパレスチナ難民が暮らしています。

イスラエル政府がパレスチナ自治区の封鎖や移動制限を課しているため経済発展ができず、失業率は40パーセント...なんて、困窮を極めた暮らしを強いられている地域も。

迫害を受けた悲惨な歴史を持つユダヤ人が、パレスチナ人を迫害しているという負の連鎖。
18歳から数年の兵役義務があるイスラエル人が直面するであろう”この矛盾”をどのように腑に落としているのだろう、と思います。

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ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区を囲う分離壁は全長700kmもある
写真:日経電子版2018.5.19 (以下同じ参照先は⭐︎にて記載)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30534860V10C18A5000000/

風刺画で読み解くパレスチナ問題

そんなパレスチナ難民の現状を作品を通して広めているのが
『天才か、反逆者か』とのキャッチコピーを持つBankcy(バンクシー)”

2018年ロンドンにて、落札された瞬間に細断された”遊び心のある作品”は記憶に残っている方も多いのでは。

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写真:日経電子版 2018.10.7
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36233430X01C18A0CR8000/

バンクシーは度々パレスチナ自治区を訪れ、分離壁や周辺に一見ユーモラスだけども皮肉な風刺画を残しています。

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右上から時計回りに (1.分離壁をこじ開ける天使たち 2.イスラエル兵のボディーチェックをするパレスチナの子供 3.火炎瓶を投げようとしている青年の姿に花束を持たせている 4.平和の象徴の鳩が防弾チョッキを着ている)
写真:☆

そして、2018年にはパレスチナ自治区に
「世界一眺めの悪いホテル」(http://walledoffhotel.com/)をOPENし、多くの観光客を集めています。

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写真:⭐︎

ホテルの目の前にあるのは分離壁。客室の窓からも退廃的な景色が見える設計になっています。

あっ!と驚く戦略で、パレスチナ自治区の経済に貢献しているバンクシーはやはり天才か。

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写真:⭐︎

ある客室には、イスラエル兵とパレスチナ人が枕で叩き合う姿が描かれている。
...うーん、すごいとしか言いようがないです。笑

2014年にパレスチナ自治区に描かれた作品には、バンクシーが風刺画を描き続ける理由のヒントが残されていました。

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写真:Banksy HP
https://www.banksy.co.uk/out.asp

”強者と弱者の争いから手を引けば、強者の側につくことになる。中立ではいられない”
『傍観者も加害者だ』というグサッと刺さるメッセージから、バンクシーの責任感の強さがアートの原動力になっていることが分かります。

「イスラエルは世界の実験室に」ワクチン接種最速ペース

さて最後に、COVID-19の予防接種が世界最速で進んでいることで
イスラエルが世界中から注視されていることについて。

国民約900万人のうち、既に4割が1度目の投与を終えており、優先対象の60歳以上で見ると8割が2度目の投与まで終えています。

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(テルアビブの広場に仮設されたワクチン接種会場)

有難いことに外国人である日本人にも順番がまわってきていて、私の知人も何名か接種済みです。

しかし、イスラエル占領下のパレスチナ自治区へのワクチン供給数は2000回分のみ、とあまりに少ないことで国連から非難があるのも事実です。

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写真:東京新聞 2021.2.7
https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/84613

ワクチン接種のスピード感には、ネタニヤフ首相の個人的なパイプと交渉力が顕著にあらわれたと言われています。
・ファイザー社のCEOと友人で17回に及ぶ対話の機会を作れたこと。
・他国より2倍の金額でワクチンを買い取ったこと。
・国民皆保険で電子医療データを蓄積しているイスラエルは、ファイザー社に統計データを速やかに提供できるとアピールしたこと。

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公開予防接種をしたネタニヤフ首相
写真:毎日新聞 2021.1.11「イスラエルのワクチン接種、世界最速ペース」
https://mainichi.jp/articles/20210111/k00/00m/030/056000c

「集団免疫に向けた世界の実験室として貢献できる」と宣言しているネタニヤフ首相は、今以上の変異種の侵入で統計データが狂うことを懸念して、1/26-2/20までの空港閉鎖も英断しています。(2/10の時点で)

また、イスラエルは3度目となる約1ヶ月のロックダウンが2/7に解除されたばかり。
ここからが”世界の実験室”としての正念場なのです。

一筋の希望の光であるワクチンが、なるべく平等に世界中の人々に供給されますように。

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【参考】
・外務省 パレスチナ基礎データ
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/plo/data.html#section1
・CASA BRUTUS「バンクシーがいまなお作品を更新し続けるパレスチナの〜」
https://casabrutus.com/art/141246
・中田敦彦のYou Tube大学【宗教史①】ユダヤ教・キリスト教・イスラム教
https://www.youtube.com/watch?v=0a7nINmr_Wo
・中田敦彦のYou Tube大学【宗教史②】聖地エルサレムを巡るパレスチナ問題
https://www.youtube.com/watch?v=AwxAnh_uHTQ
・『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 著:山崎 圭一』
・毎日新聞 2021.1.11「イスラエルのワクチン接種、世界最速ペース」
https://mainichi.jp/articles/20210111/k00/00m/030/056000c
・日本経済新聞 2021.2.5 「イスラエル、ワクチン接種の60歳以上で〜」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR04EQU0U1A200C2000000/
・東京新聞 2021.2.7「イスラエル、パレスチナにワクチン2千回分のみ〜」
https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/84613
・YAHOO!ニュース 2020.2.9「ワクチン接種が『世界最速』の〜」
https://news.yahoo.co.jp/articles/7e614239ab72820a40612a24715be578704e20ba?page=3

著・写真 がんちゃん

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