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なぜスターフィールドは不評なのか。ある一つの理由

最近のSteamの評価(2023/12/29時点)は高評価が30%をきってしまっていて、これまでのベセスダがリリースしたゲームの中でも史上最低の評価をつけられてしまっています。

ではなぜここまでの評価になってしまったのか。それは案外単純なものなのかもしれません。

メインワールドがないから

これまでのベセスダのゲームに共通してあったものです。そしてStarfieldにはないもの。それが冒険の主軸となるメインワールドです。fallout3ならキャピタルウェイストランド、オブリビオンならシロディール、スカイリムならスカイリムのことです。

プレイヤーはメインワールドを放浪し、その途中で見つけた洞窟や施設、街や集落などに入り、そこで人と関わったリクエストを受けたり、時折ランダムイベントが発生したり。

それを通じて紡がれていくプレイヤーだけの冒険を楽しむことができるのがベセスダゲーの提供するゲームの基本エッセスンスであると思います。

メインワールドを主軸とした「冒険」「放浪」こそがベセスダゲーの醍醐味といってもいいでしょう。

さらにメインワールドは他にも洞窟や町、ダンジョンなどあまた存在する各セルをつなぐ「メインハブ」として機能していて、様々な発見の導線としても機能しています。よってやはりメインワールドありきのゲームデザインが、「冒険している感覚」を感じるために必要な最低限の要素なのだと思います。

放浪ができない。


しかしスターフィールドにはメインワールドがない。メインハブがない。世界がない。舞台がない。彷徨う場所がない。代わりにファストトラベルして言われた地点まで向かってまた戻るを繰り返すルーチンだけがあるだけです。
確かに星に降り立てば歩き回ることはできますが、だだ無駄に広いだけで何もない荒野を走り回り、数百メートルの感覚で点在する自動生成されたランダムなロケーションを散策するだけ。
そしてそれらのコンテンツがとにかく薄すぎる。その規模間から従来のベセスダゲーでいえば洞窟やダンジョンのような立ち位置に近い内容で、かつ広さがこれまでのメインワールドなみに引き延ばされたものになってしまっている。
配置されているオブジェクトのほとんどがランダム生成されたものにすぎず、それ自体に意味はない。前作のようにロケーションに思いをはせたりすることもないし、思い入れのある地形すらもない。

自動生成だから。文脈ゼロだからです。

「どこがスカスカなの、一つの星でこれだけのオブジェクトやら建物があるじゃん!」というのを見ますが、いわゆる「スカスカ」といわれているのは物量のことではなく質のことです。なんらかの歴史や事の成り行きがあったことを感じられるユニークなロケーションなど、設定から細部まで作られたコンテンツがほとんどない。発売前に1000の惑星とトッドが言っているのを聞いて、嫌な予感を感じた人もいたのではないでしょうか?そんなの手作りで全部作れるわけがないと。自動生成だらけの味気ないゲームになるんじゃないか、それを危惧していた人は割といるんじゃないかと思います。そんなスカスカのハリボテのゲームなんてベセスダゲーには求めてないのに。

ではその自動生成がすごいのかといえば大したこともなく、パターンはそれほど多くない。星の地形を反映したランダムな採取オブジェクトや生物といくつかの洞窟や建物のロケーションが点在するのみで、採取は面白いのは最初だけ、すぐ飽きてだだっ広い地を走りながら敵を銃で撃ちつつ目的地を目指すか、拠点構築したりしなかったりする程度(別にやらなくても全くストーリーに影響しない)。ストーリーに関連する星にはユニークなロケーションもありますが全体からすればほんの一部であり、その星すらもそのロケーションを除くとひたすらに広い荒野か大地が広がっているのは他の惑星と大して変わらず。
とてつもない自然現象や地形など、宇宙、惑星ならではの超現象なんてものはなく、ほとんどの星がただスキンを変えただけのような似たり寄ったりの惑星ばかり。
さらに何回か上陸して散策を続けると早い段階で全く同じ内容のロケーションに出くわしたりします。ロケーション自体の規模も従来の作品の洞窟や施設のそれと比べると圧倒的に小規模であり、ちょこっと遊んでまた外に出てロード画面をその都度挟みまくりながらちまちまと薄味のコンテンツを楽しむゲーム体験になっています。

寄り道がない

これも大きなマイナスポイント。クエスト自体は町などのユニークなロケーションにいけばその道中でお使いクエストが馬鹿みたいにわいてきますが、放浪中においては全くといっていいほどこれがない。
これまでのメインワールドを放浪できたシリーズでは、ある目的地を目指しているその途中で別の目的地が見つかったりクエストが発生したりして、いろんな寄り道をすることによってさまざまなコンテンツへの導線がありました。
それがファストトラベルで直接目的地、すなわち惑星の指定の上陸利点にいくことしかできなくなり、そこには前述のランダム配置された数個のダンジョンしか基本的に存在しないため寄り道の導線も機会もほとんどが損失してします。
結果「ただ言われたことをやるだけ」というかなり作業感の強いお使いゲーム体験になっています。

従来のベセスダゲーは町で受けるクエストはメインワールドを放浪をする一つのきっかけでもあり、その"放浪中"でさらに様々な放浪の機会につなげてくれる導線の仕組みがあってそれがウケていたわけですが、その仕組みが今作にはほとんどないのです。

お使いクエが完全に虚無

放浪ができず、ほとんどの移動がファストトラベルなので「〇〇いって〇〇を手に入れろ」「〇〇を〇〇に届けろ」というお使いクエが本当にそこにいってまた戻るだけ、という遊び方にとどまってしまっている点。

お使いクエも前述した通り従来作品では放浪の導線の一つだったのが放浪ができなくなったことでただメニューから目的地をオペレーションして目的地までただ走るだけの虚無に。あるNPCから別の惑星にある本を買ってきてほしいと頼まれて、本当にただ本をベンダーから買って届けて終わりだったのは正直あきれを通り越して驚いた。ほとんどメニューやUIから目的地を選んでポチポチやっていた印象しかなく、何かのオペレーターでもやっている気分だった。これを本当に面白いと思って作ったのか本気で疑った。ちゃんと自分で遊んだのか?と。

さらにたちが悪いのは、このようなタイプのお使いクエが死ぬほど大量にあること。町などにいくと大量に飛び込んでくる。特に初見ではクエスト一覧でどれがお使いでどれがそうでないか判別がしづらく、そういった点からクエストで楽しむという遊び方も難しい。

よって、その作業感の強さとコンテンツの薄さと意味のなさ、引き延ばしっぷりのひどさから数時間も遊べばこのゲームが用意しているものが想像できてしまい、遊ぶこと自体が苦痛になってきます。「あそこにいったら何があるんだろう」という探求心はスポイルされてしまい、遊べば遊ぶほど虚無感だけが増して希望がなくなっていき、苦痛の方が大きくなっていって最後は飽きます。

本作のメインワールドにはなるはずだった「宇宙」

おそらく今作におけるメインワールドに相当するものは、レイヤー的にも最も上に位置し、かつテーマでもある「宇宙」が担っているのでしょうが、その宇宙すら各星の上陸地点や施設と同じ、「区切られたセル」にすぎません。
惑星間の宇宙空間はつながっていません。ファストトラベルしないと移動できない。
宇宙船はほとんどファストトラベル置物でしかなく、宇宙船を改造できるという要素はいいものの、それを生かせる場面が時々発生する戦闘くらいでただ置物をゴージャスにしているだけにすぎず、いわば「プラモデルを作って終わり」という自己満足で終わってしまいます。やはり宇宙船なのですから、宇宙船で宇宙を移動したり星に離着陸したりなど自分で操作して遊びたいものです。

実装されている全ての要素がまとまりがなく関係もせずバラバラで、セルの寄せ集めにしかなっていない。コンテンツ同士がほとんど孤立していてシナジーしないのです。だからどのコンテンツもやってもやらなくていいものになっていて、人によってはあるコンテンツをほとんど触らないこともあるでしょう。例えば拠点構築や宇宙線の改造など。

まとめると、このゲームのルーチンはメニューから入室するセルやコンテンツを選択して何度もちまちまと間に16倍のロード画面をはさみながらちびちび遊ぶ作業ゲーです。その作業感と虚無感がローディング画面シミュレーターと揶揄されてしまうほどに冒険しているという体感をスポイルしてしまい今作の致命的につまらない欠陥になってしまっているのではないかと私は思っています。

どうすればスターフィールドはよくなるか?


頭で描いたように、メインワールドがないのが問題だからそれを作ればいいと思います。"従来の"メインワールド的なものです。

プレイヤーが"自らの操作によって"散策ができ、発見があり、道への探求の機会、導線が構築されたメインワールドを作れればこの問題は解決すると思います。

どこに作るか。もう一つしないでしょう。やはり宇宙だと思います。つまり、1000の区切られたセルの寄せ集めにすぎないShattered Space宇宙を一つのメインワールド、一つの宇宙として作り替えるということです。

宇宙を直接移動することができる一つのセル、メインワールドとして作り替え、その宇宙に様々なコンテンツを追加することで、かつてのベゼスダゲーの醍醐味を最低限表現することはできるのかな、とは思います。星もシームレスに着陸出来たらほぼ言う事はないんじゃないかと思います。

何、星間が広すぎるからどうせファストラベル使うだろって?ノンノン。ようはX4: FoundationsとかElite Dangerousとかみたいな感じにしてくれりゃいいんですよ。グラヴジャンプとかいういくらでも宇宙移動を面白くできそうな設定があるのに、ただのファストトラベルにとどまらせておくなんてもったいないじゃないですか。

さらに欲を言うと、宇宙船でしか宇宙を移動できないのはまだまだ味気ないので、例えば現実でいうところの宇宙飛行士のミッションのように船外に出て何かできたりするとさらに良いのかな、なんて思います。

メインワールドさえあればいくらほかの要素が作りかけであったとしても、ベセスダゲーは最低限の冒険の良質なゲーム体験を与えれくれるはず。ここまでできれば、MODDERの楽園といっても差し支えないベースゲームになるんではないかと個人的には思います。各星に町を作ったり中継ステーションのようなものを作ったり、空間がシームレスになるだけで相当なMODDINGのポテンシャルになると思います。仮に実現すればゲームの評価も変わってくるんじゃないでしょうか。おすすめしないにしている多くのスチムレビューも意見を変えるかもしれません。

でも、そんなことできると思う?

無理でしょう。

素人目にみても採算が取れるとは思えませんし、きっと技術的にもコンシューマーのスペック的にも無理なんじゃないか、なんて想像します。エンジンの根幹的な改修まで必要となる話であったならなおさら不可能でしょう。

仮にその問題をクリアしていたとしても、creation kitの配信などモッダーに向けて開発リソースを提供すると言うのがそれをさせない重い足枷になっているのではないか、とも思います。modは基本的にゲーム既存のものを修正したり、それを前提にした上で新しいプログラムを追加する、と言うことで作ることになると思いますが、その元のリソースであるゲームそのもの仕組みが大きく変わるようなものを作ると、それまで作ったmodが全て動作しなくなるんじゃないか、なんて思います。

ではそのためにmod対応を諦めるか、と言えばそれは99%あり得ないと思います。元々ベセスダのゲームはMOD文化によってその名声を高めてきた背景があることもそうですが、先日「Creation」という有料modの仕組みを、過去に似たようなことを2回やって失敗した10年以上前のスカイリムに対して12月に配信し始めたことからも(そしてやはり反発を招いている)、彼らの本気度が伺えます。当然本作にもこれを導入するつもりでしょうし、これを成功させメインの収益源として担いたいと考えているであろうことは想像に難くないと思います。

それを蹴る、あるいは障害となるような大きなアップデートをするとは思えない。するなら既存の仕組みそのものには手を加えず、むしろそれをベースに肉付けをしていくようなアプデ、dlcの配信をするだろうと考えます。となると一つの広大な星を追加するというのが結局は落としどころになってしまうのですが、かといってSkyrim規模の惑星を作るとなったらまた何年も開発にかかってしまうだろうと考えます。DLCというよりも、むしろStarfield2みたいな感じで作らないと厳しそうな気がするのですがどうなんでしょうか。

つまり、starfieldの根幹的な問題である従来のベセスダゲーの持ち味であった冒険感の消失の問題はおそらく解消されないんじゃないか、と思います。少なくとも宇宙を放浪するゲーム体験はほぼほぼ実現しないだろうと。MODDERだってこれを直すのは至難の業だと思います。
なので今後いくらアプデが行われても、放浪をゲームプレイの根幹として楽しんでいたプレイヤーは多分戻らないだろうと思います。

「従来のベセスダゲー」という既成概念は捨てた方がいいかも

スターフィールドは従来のベセスダゲーを期待して遊ぶと痛い目を見るので、何も期待せずに遊ぶのがいいという感じがします。私はオブリビオンに熱中して以来のベセスダゲーファンですが、それらのゲームと比較してもStarfieldが同じ「従来のベセスダゲー」とはとても思えません。インディーズが作ったベセスダライクゲーというなら納得という感覚です。

よく「期待しすぎた」というのをこのゲームの評価で見ますが、宇宙ゲーとかそれ以前に、"従来の"ベセスダゲーとして期待することなのかもしれません。ベセスダファンの中でも評価は割れているようで、「いつものベセスダゲー」というファンもいる一方「もうベセスダはだめかも」と落胆しているファンもいます。おそらく古いファンほど落胆するんじゃないかと推測します。

しかし、そんな"かつてのベセスダ"の姿を求めるのは無理があることなのかもしれません。開発の中の人たちも随分かわってしまったでしょうし実際、彼らの作るゲームの内容も随分変わりました。シリーズを通じて"できること"がどんどん変わっていっている印象です。(ただの想像ですが、RPG要素を削って拠点構築などに舵を切ったのは、単にかつての彼らのRPGが作れなくなった、ということもあるのかもしれない。拠点構築や戦闘の強化はできるメンバーだったからそっちに力を注ぐこともできた…ということなのかも。)

モロウィンドウ、オブリビオンのリードデザイナーのKen Ralston氏やTESシリーズのロアの大部分においてかかわりのあるMichael Kirkbrideは退社済ですし、そのころと同じものを現開発体制や現リードデザイナーのEmil Pagliarulo氏に期待するというのも無理がある話です。オブリビオンやFallout3のころにあった従来のRPG要素を縮小し、かわりにアクション、建築要素に力を入れ始めたところからもそれがうかがえます。本作に至ってはゲームプレイの根幹的な要素である探索要素すら削ってしまっていますからね。
とはいえスチムの否定レビューに「退屈ではない。月に行った宇宙飛行士は退屈したのか?」などと訳の分からない定形文を返信して反感を買ったり(そりゃ実際"リアルに"月に行った宇宙飛行士は死ぬほどやることあったでしょうよ。ただマラソンと採取やるだけじゃなくてね)、否定的な評価に対する個人的なお気持ちを表明するなど、ひょっとしたら自身のプロダクトに真摯に向き合う姿勢をわすれてしまったのかもしれないようなことをやってしまっている点はあれですが。

加えて次回作が出るまでに何年もの開発期間を要し、最近は10年を超える勢いであることからもその間に相当な人員が入れ替わっているだろうという事を考えれば「シリーズ毎にもはや別ゲーになっている」という印象になってもおかしくはないかなとも思います。それも、どのシリーズからベセスダゲーを好きになったかでファンにも分断が起きるレベルで。
モロウィンドウこそが至高という古いファンからすれば私が大好きなオブリビオンは選択肢の分岐もそこからの発展もファンクションの関連性もほとんどなく単純化されて物足りないという評価は聞きますし、そんなオブリから入った私からするとその次回作であるスカイリムはグラフィックやアニメーションはよくなったもののクエストやキャラクターはとんでもなくつまらなくなりRPG要素も弱体化した、という印象を抱きます。ほぼ同時期に発売したFallout3に対するFallout4の印象も同じ。ではSkyrimから入ったファンなら?Fallout4からなら?と考えれば…

細かいことはどうあれ、Skyrimからすでに10年以上、オブリからならとうとう20年の時が過ぎようとしている今、"過去に遊んだベセスダゲー"として考えずせず、"今のベセスダ"の基準にリセットした上で遊ぶかどうかを選んだ方がいいんじゃないか、なんて思います。

つまり、今のベセスダが作れそうなゲームの基準に一度リセットして、買うかどうかを判断する必要があると。

なんなら同じ開発スタジオだと思わないほうがいい。いっそベセスダかどうかなんて全部忘れて、「なんか話題のゲーム(?)」と思って遊ぶのがいいんじゃないでしょうか。ただそれでも9000円を超える値段は高すぎなので、ゲームパスで遊ぶのが一番いいのかもしれません。

私個人としては今の感じだったらもういいかな…という感じです。質より量スタイルならほかのゲームをやりたい。悲しいですがこれも仕方がない。思えば「もう一度オブリが遊びたかったなぁ」と思いながらずっとかなわず随分時間が経ってしまったものです。


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