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『LEFT ALIVE(レフトアライブ)』を自腹で友達におくって、一緒に楽しそうに遊んだら、周囲が買い始めて200本ぐらい売れた

2020年のいまになって、私の周囲で3回目の『LEFT ALIVE』ブームが巻き起こっている。
それは私が管理するゲーム用のDiscord(チャットサーバー)でのローカルなブームだが、『LEFT ALIVE』という1つのゲームを数百本単位で売った珍しい・楽しい体験なのでここにその流れを記録しておく。

『LEFT ALIVE』とは?

『LEFT ALIVE』は、スクウェアのいぶし銀メカSLG『フロントミッション』シリーズの世界観を共有し、『アーマードコア』を擁するメカ物の大御所フロムソフトウェアから移籍した鍋島俊文さんがディレクターを務め、キャラクターデザインに『メタルギアソリッド』の新川洋二さんを採用した戦場サバイバルゲームだ。

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ここにおける戦場サバイバルとは、戦闘力が低めのキャラクターを操作し、その場にあるものを使って何とか生き延びるというツライゲームと言えるだろう。それ自体は新鮮味がある。

しかし、『メタルギアソリッド』と同じアーティストによるキャラクターデザインを行っていることから期待されるようなゲーム内容ではなく、元フロムソフトウェアの名前から期待されるようなロボゲーでもない期待外れ感、ゲームに近代的なチュートリアルを搭載していないこと、そこに加えて難易度が高いことなど、さまざまな要因があってゲームの世間的な評価は芳しくない。

価格が暴落する『LEFT ALIVE』

期待感による出荷数と、内容の乖離によって発売されるやいなや批判が巻き起こり、記録的な速度で市場価格が落ちていった。
私自身はもともと初代『フロントミッション』が好きだったので買う予定だったが……注文したとき定価の半額以下まで安くなっていて驚いた。

その値崩れ速度は恐ろしい早さだった。なんせ、『LEFT ALIVE』を注文して、決済して、家に届くまでの数日で1,000円ぐらいさらに値段が下がったのだ(下画像はその近辺の時期のツイート)

こんな経験は初めてだった。さすがに、戦々恐々としたのを覚えている。

ところが、ゲームは楽しめた。

価格はともかく、ゲームは自分が価格以上に楽しめればいい。そして、実際に遊んでみると『LEFT ALIVE』は十分に楽しめた。

最初こそ「ステルスゲームみたいなのに、ステルスできねぇ!」とか「他のゲームの常識が通じない」とか驚いていたが、慣れてくると「理不尽な難易度を、無理やりな方法やゲームの穴をつく裏ワザでねじ伏せる」ファミコンゲームのような面白さを感じていた。
気づくと、ゲームをクリアしていた。

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しかも、『LEFT ALIVE』にはクリアの先の楽しみがあった。
『LEFT ALIVE』は、クリアすることで配信を見ることがより楽しくなるゲームだったのだ。
元より、超高難度の『LEFT ALIVE』に苦戦する様子を見る配信は一定の面白さがある。しかし、ゲームを実際にプレイしてから見る『LEFT ALIVE』配信は、それとは比べものにならない面白さだった。

普通のゲームは、初心者をきっちりもてなす。ゲームの遊び方がわからなくても、「こんなときはこうしよう!」と正解を示し、それを実行するチュートリアルが入る。
しかし、『LEFT ALIVE』は普通ではなかった。近代的なゲームとしてはまれに見る不親切さで、おもてなしの心を感じないものだった。
遊び方次第でチュートリアルを飛ばしてしまうことがあったし、チュートリアルで「●●をクラフトして対策しよう!」と出ても、そもそもクラフトの素材がなくてその時点では作れない。プレイヤーに正解例を示さないゲームだったのである。

すると、プレイヤーは障害排除に有効な手段がわからないまま高難度の障害に取り組むことになり、誰が遊んでもプレイ初期は試行錯誤の連続となる。
ゲームから正解が示されないから、障害の突破のアプローチがぜんぜん違った。

ステルスゲームを遊んできたプレイヤーならステルスしようとするし、FPSゲーマーなら皆殺しにしようとする。プレイヤーのゲーム経験が透けて見えた。
さらに、基本的には最初の成功体験にすがってゲームを勧めるようになるので、その後のプレイも「最初にどの作戦が成功したか」でかなり変化した。

同じゲームを遊んでいる様子を見ているはずなのに、攻略方法が一定ではない。それが『LEFT ALIVE』の特徴で、それをネタにゲームに関するチャット盛り上がった。
そして、その盛り上がりは「面白そう」というイメージで広がり、いつの間にかチャットを見たゲーマーたちが『LEFT ALIVE』を買うようになっていった。

『LEFT ALIVE』永久機関が完成

その売れ行きは、想像を超えていた。

ゲームキャストの使うAmazonリンクは、商品が売れると収益が発生するアフィリエイトリンクを採用している。
みんなで『LEFT ALIVE』を遊んで配信していると、それを見て興味を持ったプレイヤーがAmazonから購入する。
『LEFT ALIVE』が売れるとアフィリエイトで利益が出る。まあ、そう言っても普通はたいした金額にならないのだが、『LEFT ALIVE』は売れまくって数千円の収入になった。
この金をどう使うべきだろうか……と、いろいろ考えた末、私は『LEFT ALIVE』から得たお金を、全額『LEFT ALIVE』の溜めに使うと決めた。
具体的には、『LEFT ALIVE』を面白く遊んで見せてくれそうなプレイヤーに『LEFT ALIVE』を無料プレゼントする目的で使った。
贈り物が届き、Discordで『LEFT ALIVE』が配信されると、それを見たプレイヤーが『LEFT ALIVE』を買っていった。

配信を見て内容を知ったうえで遊びたいプレイヤーがゲームを買って遊び、その金でさらにプレイヤーを増やすための広告(配信)が行われる。
ここに、幸せな『LEFT ALIVE』永久機関の完成した。

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『LEFT ALIVE』は、サーバーでDiscordサーバー人気の配信者に次々と送られていった。

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というか、よくこれだけ『LEFT ALIVE』を買ったなぁ……。

第1次『LEFT ALIVE』ブーム終焉

しかし、永久機関なんてものは存在しない(前項のタイトルとの矛盾)。永遠と思われたこのムーブメントは『LEFT ALIVE』の価格が下がりすぎてしまったことで終わりを迎える。
『LEFT ALIVE』の販売価格は驚くほどの速度で安くなり、まもなく500円まで行ってしまった。500円となると、送料が大体400円。
つまり、『LEFT ALIVE』本体の価格は100円。
アフィリエイトの多くは送料を無視するので、報酬が発生しても100円の品物を売った扱いとなる。

初期は2,000円以上だったので、数十本を売ればアフィリエイト報酬で『LEFT ALIVE』を1本買えた。そういった計算で続けようと思っていたが、予定よりはるかに収益が下がってしまった。
100円の品物を100本売っても送料にもならない。

『LEFT ALIVE』を売ったお金で『LEFT ALIVE』を贈ることは、すくなくともDiscordの規模では無理になり、第一次『LEFT ALIVE』ブームは終わりを迎える。

面白さが見直されて始まる第2次『LEFT ALIVE』ブーム

ところが、『LEFT ALIVE』ブームは意外な復活を見せる。
先だって無料で『LEFT ALIVE』を贈られたプレイヤーなどが、友人や他のプレイヤーたちに『LEFT ALIVE』を贈りはじめ、人気が再燃したのである。

無料で贈られた……という事情もあるが、遊んだプレイヤーの多くは『LEFT ALIVE』が世間で言われているほどクソゲーではないという感想に至った。
そして、「これだけ楽しんだし、ゲームに還元する意味で他のプレイヤーに私も『LEFT ALIVE』を送ってお礼にしよう」と、クリア後に友人などに『LEFT ALIVE』を贈り始めた。

これが世に言う「感謝のLEFT ALIVE運動」である。

同じゲームを遊んだプレイヤーが多くなり、共通の話題として盛り上がれるようになるとプレイは加速したし、ゲームの見方も多様化し、第1次ブーム時以上に『LEFT ALIVE』は楽しまれた。
どれぐらいかというと、ゲームの早解き競技であるRTAに「みんなで参加しよう」か、というほどに盛り上がった。

実際に「このルートを行けば早い」という普通のやりこみ、「セーブデータを増やすとロード時間が長くなるからセーブデータを作るのはやめよう」とかマニアックな検証までなされた。

が、我々がRTAに参加することはなかった。
当時参加しようとしていたRTAの規約では、メーカーが配信禁止としている部分に入ると競技終了となる。ところが、我々が遊んでいたPS4版はロード時間・ストーリーパートが配信禁止となっていた。
ロード時間ですら配信禁止になっているPS4版は、RTAのルールを守って競技することがまず無理だった。

Steam版には配信禁止区間がないので問題は解決するが、さすがにPS4版を持っているのにSteam版を定価で買うのはためらわれた。
「LEFT ALIVEは1,500円~3,500円程度(人によって幅がある)なら納得して楽しめるだろう」というのがDiscord住人たちの意見だったからだ。
競技チケットとして約9,000円を払うのか……となると、尻込みしてしまう。

こうして情熱の行き場を失った第2次『LEFT ALIVE』ブームは終焉する。

GHOST OF LA。第3次『LEFT ALIVE』ブーム

もう『LEFT ALIVE』は遊びたい人に行き届き、十分に楽しんだ。Discord内でのブームは終わった。そう思ったのだが……奴は死んでいなかった。
意外な形で第3次ブームがやってきた。

Steam版『LEFT ALIVE』が大幅に値下がりした結果、潜在的需要が掘り出されたのだ。
いや、正確に言うとSteam版はセールしても半額で、納得のいくほどの価格まで値下がりしなかった。
しかし、あるときHRKというSteam Keyを仕入れてゲームを売るショップで、1,000円未満の価格にて売り出されているのが発見される。

すると、今度はPS4を持っていないプレイヤーに向けて「感謝のLA運動」が始まった。
私が何かしら言い始めるまでもなく、プレイヤーが『LEFT ALIVE』のセールをキャッチし、『LEFT ALIVE』の贈り合いが始まり、Discordの配信チャンネルは連続24時間・最大同時3チャンネルで『LEFT ALIVE』のリアルタイム配信が始まるほど盛り上がった。
(これには一切誇張がない)

そして、Steam版を遊んだプレイヤーたちの様子を見て『LEFT ALIVE』に興味を持ったプレイヤーが、Steam版が2,500円程度に下がったタイミングで風通に購入を始めた。
購入動機はかなりポジティブだった。
PS4版が面白そうにプレイされていたのを見て、「あのLAを遊びたかった」と言うノリで受け入れられた。中には配信者もいたし、趣味で記事を書く人とかもいた(サーバー内だけで3人が趣味で書いて公開した)。
第二次ブームが、ゲームをポジティブに遊ぶ期待感を育てていたのだと思う。

最終的にAmazonの記録に残るだけで軽く100本を超え、私は合計200本ぐらい『LEFT ALIVE』を売って(たぶん)楽しんでもらうことに成功した。
いや、そんな売ろうと思っていなかったので成功と言うより「たまたま売れた」の方が正確か。

なんにせよ『LEFT ALIVE』は完全にゲームキャストDiscordサーバーの定番ゲームとして定着した。いつまで続くかわからないが、セールが終わった今でもゲームキャストのDiscordサーバーでは『LEFT ALIVE』の配信を見ることがある。

「LEFT ALIVEってどんなゲームだろう?」
「LEFT ALIVEを楽しんでいる人たちの話を聞きたい(※)」

※定価で買って「さすがに高かった!」と思いつつ遊んだ人やら、普通に楽しんだ人やら、いろいろ愛憎こもった楽しみ方もされているので、褒めたたえるみたいな空気はない。クソなところもあるが、面白いところもある感じで話を聞けるだろう。

と思ったら、ゲームキャストのDiscordサーバーへどうぞ。
え、そんなことより『LEFT ALIVE』を遊びたいって!?じゃあ、Amazonで買おう。
リンクを通じて購入された『LEFT ALIVE』のお金は、新品ゲームを買う余裕のないゲーム好きに『LEFT ALIVE』を贈る原資として大切に使わせていただきます。

以下、おまけ。
私が『LEFT ALIVE』をプッシュした理由を書いておく。そこには純粋な理由も、そうでない理由もある。

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