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これがエロゲーで良かった。生まれて初めてそう思えたゲーム『天制覇』を紹介する【R18】

R18ゲーム、いわゆるエロゲーのエロは性欲を満たすためにしか存在しないのだろうか。
あのゲームも、このゲームも、一般向けにも出せたエロゲーなら、エロは不要だったのだろうか。
かつて『Fate / Stay night』が出たころの僕にとって、その答えは「YES」だった。一般向けにゲームが出せるなら、R18表現なんていらないものに違いないでしょ。そう思っていた。

しかし、今はそう思わない。エロシーンの描写がゲームに深みをもたらすことがあるし、そのおかげでプレイヤーが救われることもあると思う。
それを始めて感じたゲーム『天制覇』のことをちょっと語ってみたい。

子作りしまくって天を、銀河を統一せよ!

同人サークルMayが作り続けている宇宙統一・戦略シミュレーションゲーム『雷神』シリーズ。
銀河系で星を導く覇王の1人となり、艦隊を率いて統一を目指すR18戦略ゲームで、シリーズ唯一の全年齢向けの作品が今回紹介する『天制覇』だ。

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ゲーム内容は銀河版の『信長の野望』と言ったところだが、それで通じない方もいると思うので説明していこう。
まず、プレイヤーは銀河系マップの星を選び、さまざまな覇王のなかから1人、操作するキャラクターを選ぶ。

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強い覇王は最初から大量の領土を保有しているし、部下には優秀な武将が揃っていたりする。1人用ゲームだから平等性なんてない方が楽しめるので、これはこれでOK。
ちなみに、僕が選ぶ覇王はいつもバンである。美形過ぎず、そこそこ現実的な見た目が良い。

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で、領土を選んだらターン制の戦略シミュレーションが始まる。
ゲームとしては軍事関係のシミュレーションに重きを置いており、内政は治安を維持する武将を決めて領土内の星に建物を建築するだけの簡易なもの。
人や金の輸送にタイムラグがある(高い金出すほど早くなる)ため、重要な星に重要な人を送り届ける兵站の要素がやや面倒だが、まあ難しくはない。

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一方、軍事はなかなか本格派だ。
艦隊を作るだけでなく、艦隊には惑星を制圧する陸軍も生産し、連れて行かなければならない。
陸軍力が高いのに艦隊戦で負けて手も足も出なかったり(惑星防衛施設などもあり、破壊工作しないと辛いときもある)、逆に制空権があるのに勝てなかったりとバランスが難しい。また、技術開発をして新しい兵器を仕入れ続けなければ戦争で負けることもままある。

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戦争を補助する破壊工作や離間工作系の外交政策もそろっており、ゲームに華を添える。
多くの戦略ゲームでは工作をしてすぐに結果がわかるものだが、『天制覇』ではすべての行動に星々を移動する時間が必要となる。そのため、命令してから何ターンもしなければ結果が出ない。
しかも、敵の星にたどり着いても治安維持部隊に見つかって結果を出せないこともある。

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艦隊の発進から敵星到着までもかなり時間が必要で、戦争準備と同時に工作活動も進めて、艦隊が敵星近くまできて工作が全部失敗しているとだいぶ辛くなったりもする。
命令から結果までのタイムラグにハラハラするのがこのゲームの面白みの1つともいえるだろう。

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さらに、覇王の固有イベントとか、戦争の背後で兵器を売りつける商人たちとのやり取りなどのイベントもあり、ちょっとしたストーリーも楽しめる。
2007年ごろのゲームなので操作的な不自由とか面倒(敵星に進撃するのに時間がかかるくせに、弾薬なしで艦隊が出撃しても警告が出ず、何もできず帰ることがある)とかあるが、今でもSLG好きなら価格分は楽しめるゲームだと思う。

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なんせ、このゲームには覇王になって結婚し放題、子供を好きに砲台に作ってゲームを進行できるのだ。
異性のキャラクターなら誰でも妃や妾できる。銀河規模の支配者に子供が生まれなかったら困るし、まー、納得のシステムだ。

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で、かわいい子供が生まれたら武将として使えて、成長に合わせて能力値が上昇し、キャラクターグラフィックも変化する。

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イベントなどでも「父上!」とか呼んでくれるし、能力も結構上がって頼りになる。というより、子供作っていかないと武将不足になる。

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この盛大な子作りシステムが実にいい感じになっていて、プレイしていると子供ができて、かわいい子が上手く成長しなかったり、逆にどうでもいいと思っていた子が強くなって冷遇してたら父を殺しに来たりして、プレイヤーのなかで銀河帝国の歴史みたいなストーリーができてくる。
クリアしてみると「ああ、〇〇家は色々あったけど銀河平定でできたな」なんて家族の歴史に感動できたりもする。

という感じのゲームなのだが……この子作りシステムが僕の前に大問題として立ちはだかってしまった。

お前との子供は作りたくないんだよ!

さて、先ほど説明した通り僕はバンという覇王を選ぶわけだが、実はここに問題があった。
僕は初代『ドラゴンクエスト』で勇者の名前を本名プレイして以来、登場人物の誰かに強く感情移入してゲーム世界に没頭する癖がある。これはもはや、遺伝子レベルの癖だ(最初から名前が決まっているキャラだと、自分ではなく自分の親友とか子供みたいな目線で見る)。

どれぐらい重症かというと、女性以外の存在が許されない『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS』なんか、感情移入できなくて遊べなかったほど(影の薄いマネージャーとしてでも男を存在させてほしかった)。

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そんなわけで、程よく身近にいそうなバンを自分の友達扱いしてゲームをするわけだが、このバンには最初からニナという年上の妃がいる。
いや、ニナさん、ちょっとおばさん過ぎませんかね……。

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だめだ。バンは好きだけど、ニナが妃であるのは許せない。
この女と君は釣り合わないぞッ!
ニナはすごくいい人なのかもしれない。けど、バンがおばさんと結婚しているのは何かの間違いだと思いたかった。よって。

「バンとニナは政略結婚で、お互い納得していない。冷えた夫婦だ」

そう考えることにした。
そんなストーリーで僕の銀河制覇は進んでいった。確率で子供ができてしまうため、子供ができてそれはかわいがったりしたけど、それでもニナとは仮面夫婦という設定は崩れなかった。

今考えると、なんでこんなことにこだわっているんだと思うが、当時はこだわっていた。

運命の出会いは不倫だった

しかし、そんな冷えた生活にも太陽の光が差す。
荒れながら敵を攻め滅ぼしていく間に、バンは運命の相手と出会うのである。
アムさん、最高(僕の好みというだけだが)。決めた。バンとこの子を結婚させよう。

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このゲームでは、いくらでも重婚できてしまう。戦って捉えて、仲間にして、結婚して大奥に向かえて……。
子供は最強の武将になるように必死に育て、能力値も高くする。
遠征するときは絶対にバンとアムはセットで移動させて、常にラブラブ。

子供を作って、子供と一緒に銀河征服して、ゲームクリア。覇王と妃は常に一緒にいましたとさ。
めでたしめでたし。

いや、本当か!?

このアムさん、実はゲームスタート時から結婚していて、夫をたいそう愛していたみたいで……さらに、子供がいる。
シナリオが進むと強制イベントで他の覇王に奪われたり、子供が殺されて心を崩壊いさせてしまったりもする。

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そんなアムがバンと結婚して納得しているのだろうか!?
バンが政略結婚で嫌々ニナと接していたように、アムもまた仕方なく接しているのではなかろうか……。

僕は、わりとゲーム内で自分の設定ができてしまうと、そこから離れられない。自分の作った「アムとバンのラブラブ石破天驚・銀河制覇」シナリオに疑問を持ってしまうと、もうだめだった。

たしかに、子供ができたときに「あなた、生まれました」とは言うよ!?
でも、バンはニナとの子供だってかわいがったのだ。同じ心境かもしれない。

公式追加キットでエロゲー化して愛を確かめろ!

さて、『天制覇』は全年齢向けと書いたが、実は公式が販売するパワーアップキットを購入することで大幅にパワーアップしたR18ゲームに進化する。
システム面でユニットや武将が増えて全面的にパワーアップし、子供ができる可能性が跳ね上がるオルドコマンドと性描写も追加されるのだ。
ちなみに、18歳未満の武将とは結婚できてもオルドできないので安心だ!(でも自分の子供でも18歳以上なら結婚してオルドできた気もする)

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このゲームにはたくさんの女性キャラクターが存在していて、パワーアップキットを導入するとそれなりの数のR18イベントがある(すごく短くはあるが、わりとエロ描写ではある)。
だが、僕はパワーアップキットを導入すると、すべての女性キャラクターとのエロイベントを無視して、一直線にアムを妃にむかさえせた。

そしてわりと長い時間かけて、合意の元でアムとバンのエッチイベントに至った。
逆説的だが、このゲームには妃が相手を拒否する描写がある(忠誠度が低い相手に断られたり、乱暴な描写になる)。そうでないということは、受け入れられていたのだという設定がそこで成立した。

同時に、バンは僕のなかで誘惑に屈しない最高の主人公になった。R18ゲーム特有の誘惑が多くあり、自由に選べる(覇王だし!)なかでそれをはねのけ、アムだけとのイベントを選び取った男って最高に一途だし、説得力がある。

アムはバンを受け入れていた。同時に、バンもアムを選んだ。
完全なる自己満足ではあるが、架空戦記物の物語(どの武将を優遇しようとか、好きなキャラを戦に連れて行こうとか)はそんな遊び方でいいと思っているし、これでようやく銀河征服は終わることができた。

ふう、楽しかった。満足だ。ありがとう『天制覇 with パワーアップキット』。

エッチイベントの描写は必要だったのか?

さて、このケースでは本当にエッチイベントの描写は必要だったのだろうか。人によっては長い愛のささやきとか、キスだとか、そういったイベントでも納得できるのかもしれない。
でも、答えとしては、少なくとも僕には必要だったといえる。

僕にとっては「冷え切った仮面夫婦で義務的に子供を作っていたバンが、義務的ではない行為をしている」ことはとても重要で、そこに納得感と救いを見いだせた。
(ついでにパワーアップキットでアムのやべー凌辱イベントがあったので、ちょっと辛かったけど)

このゲームにおける人間関係のストーリーは(宇宙を巻き込む物語は別にゲーム内でちゃんと存在する)プレイヤーの妄想だけども、ある程度の年齢を過ぎたとき、R18なイベントを完全に無視して愛が語られるのは変だし、状況によってはそれがあることでより納得感が生まれるときもあるのではないか。

そういったことを初めて、うっすらと意識したゲームが『天制覇 with パワーアップキット』だった。

今思えばこれは完全に逆転のときで、それまで「エロなしでゲームが発売できるなら、そのゲームにとってエロはもとよりいらないものだったのだ」とか言っていた、ところが、『天制覇』では全年齢向けの内容で出ているのに、自らパワーアップキットを買ってエロ要素を解放して遊んでしまったわけで、もはやエロがどうこうとか言い訳できる状況ではないだろう、と思う。
僕にとって、この瞬間からエロゲーのエロは、ゲーム内の不純物として見るものではなくなったのだ。

なお、この文章は「好きげなゲーム紹介文・感想を書くコンテスト」の主催をやっていて、1つぐらいなにか書くかと思って書いたもの。
約80もの感想文、紹介文があるし、すごく面白い分が多いので合わせて読んでみて欲しい。


げーむきゃすと は あなた を みて、「さいごまで よんでくれて うれしい」と かたった。